人文科学研究科Graduate School of Humanities
HIS500B7(史学 / History 500)国際日本学特殊講義FⅠLecture: International Japanese Studies F I
明田川 融
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | 人文科学研究科Graduate School of Humanities |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2021 |
授業コードClass code | X1177 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 春学期授業/Spring |
曜日・時限Day/Period | 火6/Tue.6 |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 市ヶ谷 |
教室名称Classroom name | |
配当年次Grade | |
単位数Credit(s) | 2 |
備考(履修条件等)Notes | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
カテゴリーCategory | 国際日本学インスティテュート(博士後期課程) |
すべて開くShow all
すべて閉じるHide All
Outline (in English)
Seventy years have passed from the battle in Okinawa, and nearly fifty years from the reversion of Okinawa. Okinawa still seems to be under U.S. military colonialism. It suffers structural discrimination by the people of Japan proper as well. In post-war Okinawa and foreign relations 1, we consider and discuss the dynamism that formed post-war Okinawa. In this class, post-war means the period from the battle in Okinawa to the end of the cold war.
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
沖縄戦(1945年)から四分の三世紀が、そして沖縄の「本土復帰」(1972年)から半世紀ちかくがたつ。沖縄に対する米国の軍事植民地意識、そして日本本土の構造的的差別」は消え去っていない―むしろ、2015年後半からの、日本政府による名護市辺野古への米海兵隊普天間飛行場移設強行のようすをみていると、そうした差別は、より執拗になってさえいるように思われる。
本授業では、沖縄・日本本土・米国の、ときに引き合い、ときに反撥し合う力学が、戦後沖縄の形成にどのような影響を及ぼしたかを解き明かす糸口を学生とともに探りたい。「戦後」とはさしあたり、プロローグとしての沖縄戦から冷戦期までを扱う。
到達目標Goal
学生は、戦後沖縄の対外関係について、近年の外交文書をはじめとする史料公開によって実証的に目覚ましい進展を示している研究業績を系統だてて検討することができ、さらに、その検討を踏まえたうえで、戦後沖縄の対外関係について新たなイメージを紡ぎだすことができるようになる。
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
以下に列挙するトピックを道標に、基本文献と史資料の精読、および学生中心の討論によって進めていく。
第2回目以降、授業のはじめに、前回授業で教員が課したレポート等の課題に対する個々の受講生の解答からいくつか取りあげ、受講生全体に対するフィードバックを行う。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
春学期
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
1:なぜ沖縄戦は闘かわれたか
日米両国の戦略における沖縄の位置づけを探る。
2:恩賜の民権/恢復民権
沖縄と本土における初期占領政策を比較研究する。
3:沖縄とマッカーサーの「平和」憲法
制憲過程のウラにある「沖縄要塞化」構想について考察する。
4:昭和天皇「沖縄メッセージ」の深淵
昭和天皇にとって「沖縄」とは何であり、何でなかったのかを考える。
5:講和問題のなかの沖縄
対日講和をめぐって噴出する帰属論の位相を整理する。
6:「潜在主権」論
対日講和条約第3条の前提をなす「潜在主権」とは誰が何のために発案したのか検討する。
7:海兵隊と核の島の形成
冷戦期を象徴する「海兵隊と核の島」=沖縄は、どのように形成されたのか跡づける。
8:軍用地問題の生起と展開
「土地を守る四原則」(立法院請願決議)を軸に軍用地問題とは何であったのか考えてみる。
9:沖縄の「赤狩り」
極東の軍事拠点沖縄で起こった人民党非合法化の動きは、沖縄戦後史ばかりでなく冷戦史の文脈でいかなる意味をもつのか検討する。
10:南と北の領土問題
日ソ国交回復交渉に対して米国は、「日本が二島返還でソ連に譲歩するなら米国は沖縄をもらう」と干渉した。この北と南の領土問題の形成過程を調べてみる。
11:沖縄と安保改定
沖縄という視点から60年安保改定を捉えなおす。
12:沖縄返還交渉の公約・違約・密約
外務省による「いわゆる密約」調査の結果も踏まえながら、沖縄返還交渉を検証してみる。
13:沖縄が怒った日
1970年12月におこったコザ騒動とは戦後沖縄にとって何であったのか考える。
14:「安保」から「同盟」への変容と沖縄
「安保」が「同盟」へと変容するなか、日本の役割も基地提供に「行動」や「思いやり予算」を伴うものへと変わっていくが、沖縄については何が変わり、何が変わらなかったのか。この問題を検討してみたい。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
大学設置基準によれば、この授業の準備学習・復習時間は、各2時間が標準となる。そのうえで、百聞は一見に如かず。米空軍嘉手納基地、同海兵隊普天間飛行場、キャンプ・ハンセン、日米両政府が普天間飛行場の代替施設建設を〝粛々と〟強行している名護市辺野古崎など、沖縄基地問題の現場を各自が実際に訪れ、感じることが望ましい。
「国際日本学特殊講義FⅡ」をも履修することが望ましい。
テキスト(教科書)Textbooks
古典のなかの古典といえますが、さしあたり手ごろな通史として中野好夫・新崎盛暉『沖縄戦後史』(岩波書店、1976年)、および新崎『沖縄現代史』(岩波書店、2005年)、ならびに宮里政玄ほか編著『戦後沖縄の政治と法―1945-72年』(東京大学出版会、1975年)を、また、沖縄をめぐる日米関係史について書かれた研究として、河野康子『沖縄返還をめぐる政治と外交―日米関係史の文脈』(東京大学出版会、1994年)、宮里『日米関係と沖縄―1945-1972』(岩波書店、2000年)、沖縄国際大学公開講座委員会編集・発行『基地をめぐる法と政治』(2006年)、我部政明『戦後日米関係と安全保障』(吉川弘文館、2007年)、平良好利『戦後沖縄と米軍基地 「受容」と「拒絶」のはざまで 1945-1972年』(法政大学出版局、2012年)、および中島琢磨『沖縄返還と日米安保体制』(有斐閣、2012年)を挙げておきます。近年の示唆にとむ研究成果として、鳥山淳『沖縄 基地社会の起源と相克 1945-1956』(勁草書房、2013年)および大野光明『沖縄闘争の時代 1960/70』(人文書院、2014年)ならびに櫻澤 誠『沖縄現代史―米国統治、本土復帰から「オール沖縄」まで』(中央公論新社、2015年)、さらに野添文彬『沖縄返還後の日米安保―米軍基地をめぐる相克』吉川弘文館、2016年もぜひ一読されたい。
参考書References
拙著『沖縄基地問題の歴史―非武の島、戦の島』(みすず書房、2008年)。
成績評価の方法と基準Grading criteria
出席状況や授業中のコメントなどによる平常点(100%)。
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
アンケート対象外につき該当なし。
学生が準備すべき機器他Equipment student needs to prepare
学習支援システムやオンラインによる授業に参加できるような機器およびネット環境
その他の重要事項Others
重要なお知らせ(2021年2月9日)
新型コロナ禍により、授業の開始日や方法等につき重要な連絡がなされる可能性がありますので、受講生は本Webシラバスおよび学習支援システムを小マメにチェックするようにしてください。
担当教員の専門分野等
<専門領域> 日米関係史、日本政治外交史
<研究テーマ> 日米地位協定の成立過程
沖縄と日米安保体制の歴史
日本と核兵器との関係史
<主要研究業績および刊行物>
・『日米行政協定の政治史―日米地位協定研究序説―』法政大学出版局、1999年。
・『沖縄基地問題の歴史―非武の島、戦の島―』みすず書房、2008年(第30回沖縄協会・沖縄研究奨励賞[社会科学部門]受賞)。
・『日米地位協定―その歴史と現在―』みすず書房、2017年。
・波多野澄雄・河野康子監修(明田川補)『沖縄返還関係資料』(第1回配本分、全7巻)現代史料出版、2017年。
・「核兵器と『国民の特殊な感情』」1~6(雑誌『みすず』に2013年6月号より2015年8月まで不定期連載)。
・ジョン・ハーシー『ヒロシマ 増補版』法政大学出版局、2003年(共訳)。
・ジョン・W.ダワー著『昭和 戦争と平和の日本』みすず書房、2010年(監訳)。
・ジョン・W.ダワー/ガバン・マコーマック著『転換期の日本へ 「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か』NHK出版、2014年(共訳)。
・『占領期年表 1945-1952年 沖縄・憲法・日米安保』創元社、2015年(監修)。
近年、広島・長崎・ビキニを経験した日本の核兵器に対する〝国民感情〟と政府の安全保障政策との連関について研究をまとまるべく、資料収集や分析視覚の検討を行っている。
また、1950年代半ばの沖縄で米軍により強行された土地強制収用にさいして、住民代表である立法院(県議会のような組織)がなしえたことと、なしえなかったことの実証にも取り組んできた。
現在は、波多野澄雄・筑波大学名誉教授ならびに河野康子・法政大学名誉教授による監修で刊行が進められている沖縄施政権返還交渉関係資料集成の編集補佐がおもな仕事となっている。