人文科学研究科Graduate School of Humanities
HUG500B5(人文地理学 / Human geography 500)空間構成論研究ⅠSpatial Formation Ⅰ
山本 健兒
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | 人文科学研究科Graduate School of Humanities |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2021 |
授業コードClass code | X0430 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 春学期授業/Spring |
曜日・時限Day/Period | 月3/Mon.3 |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 市ヶ谷 |
教室名称Classroom name | |
配当年次Grade | |
単位数Credit(s) | 2 |
備考(履修条件等)Notes | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
カテゴリーCategory | 地理学専攻(修士課程)-専門科目 |
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Outline (in English)
This lecture deals with economic development of regions, which consist of a nation state such as Japan, Germany and Austria. Attending students should report his or her own research theme at least once within a semester.
授業で使用する言語Default language used in class
その他言語 / Other
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
「空間構成論研究」で扱う空間とは、大は地球規模の空間から、小は例えば都市の一街区に至るまで様々なスケールがあります。どのスケールの空間を扱うにせよ、空間構成諸要素は何か、それら諸要素がどのような関係にあるかを研究することによって、取り扱う空間の全体像を理解することができます。今年度のこの授業では、ドイツに的を絞り、その経済地理的な全体像を提示したうえで、特徴ある地域の経済発展を考察します。あわせて、院生にも独自に取り組んでいる研究テーマでの報告を求めます。なお、時間的余裕があれば、オーストリアとスイスそれぞれにおいて、一時期衰退の危機にあったものの復活し、21世紀において経済活力を発揮している地域を取り上げる可能性があります。
到達目標Goal
国よりも小さなスケールの地域の経済発展に関する理論を理解する能力を身につけ、これを踏まえて具体的な地域に関する現実に関する分析能力を身につけることが、この授業の到達目標です。今年度は特にドイツの経済地理的全体像と、各国における特徴ある地域の経済発展の諸要因の理解も到達目標とします。
授業で使用する言語Default language used in class
日本語、英語、ドイツ語
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
教室での対面でこの授業を行ないます。ただし、COVID-19感染状況に対する国及び東京大都市圏内都県の政策、そして本学の方針を鑑みて、オンライン授業に変更する可能性があります。その場合には、Zoomを用いて同期双方向通信での授業とします。オンライン授業の場合にはHoppiiを用いてこの科目の履修登録者に連絡します。
最初の3回分の授業で、地域経済の発展に関する諸理論の検討を行ないます。その後、ドイツに関する具体的な講義を行ないます。各回での山本からの講義は50分以内にとどめ、その後に質疑応答、ディスカッションをしたいと思います。このディスカッションが学生の疑問に対するフィードバックとなります。講義当日までに読んでおいてほしい論文については、その取得が論文掲載雑誌の発行機関のリポジトリなどからダウンロードできる場合、事前に読んでおくことが必要となります。論文草稿やリポジトリなどからのダウンロード不可能な論文については、そのpdfをHoppiiにアップロードすることもありえます。
参加院生には、自身の研究テーマに関する報告を少なくとも1回行なってもらいます。その際には、これを踏まえてディスカッションも行ないます。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
春学期
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
第1回:D.C. Northの移出ベース理論
地域経済発展の原動力を移出産業に求める考え方を講義する。
第2回:Jane Jacobs の多様性重視論
都市経済の発展は、都市内部の多様性に依存するのであり、多様性はimprovisationとこれに基づく移入置換とを契機とする、と主張するJacobs考え方を再検討する。
第3回:David B. Audretschの「場所の戦略的経営論」
産業経済研究の第一人者Audretschが説く「地域経済の4つの支柱」とそこにおける「場所の戦略的経営」について検討する。
第4回:欧州の中でのドイツの地域構造
ドイツが多極分散型の地域構造を呈することは広く知られている。その形成の歴史的背景と具体的姿を、欧州全体を視野に置きつつ、概説する。
第5回:ドイツにおける経済的地域間格差の変動
ドイツ経済を主導する産業の歴史的変遷とこれに伴う地域間格差の変動を明らかにする。
第6回:バイエルン州とミュンヘンの繁栄
20世紀前半までドイツの中で農業地帯だったバイエルン州が第2次世界大戦後、ドイツ諸州の中で経済的に最も豊かな州の一つになった理由について、州都ミュンヘンに焦点を当てて考察する。
第7回:バーデン・ヴュルテンベルク州の特徴ある産業地区(1)Tuttlingen
外科医治療器具の開発生産に特化する大中小様々な企業が集積するTuttlingenについて考察する。
第8回:バーデン・ヴュルテンベルク州の特徴ある産業地区(2)Schwäbisch Gmündとその隣接地区
包装機械の開発生産に特化する大中小様々な企業が集積するSchwäbisch Gmündとその隣接地区について考察する。
第9回:ライン・マイン・ネッカー大都市圏の印刷機械工業
マイケル・ポーターが産業クラスターの典型例として称揚したドイツの印刷機械工業企業が集積しているとされているライン・マイン・ネッカー大都市圏におけるその実態を検討する。
第10回:ルール工業地帯の変容
ドイツ経済の心臓部と言われ、石炭鉄鋼業によって繫栄したルール工業地帯の実態と変容を考察する。
第11回:Emslandの経済発展
ドイツの貧民窟と言われたほどに貧しい農村地域だったエムスラントがドイツの平均を上回る経済水準を達成し、かつ平均を上回る経済成長率を21世紀において実現しているのは何故かを考察する。
第12回:院生Aの報告
院生Aの研究報告とこれをもとにしたディスカッションを行う。
第13回:院生Bの報告
院生Bの研究報告とこれをもとにしたディスカッションを行う。
第14回:総合ディスカッション
13回の授業を振り返って、総括的な討論を参加者全員で行う。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
本授業の準備学習・復習時間は、各2時間を標準とします。
授業に臨む前に、テキストを読み、理解困難な部分があるか否かを明確にすること。復習として、授業中に提示する文献を読むことが求められます。
テキスト(教科書)Textbooks
各回の授業のために事前に院生に読んでもらう文献についてはその都度指示しますが、この授業に関わる文献を参考文献欄に記すので、必要に応じて参照してください。
参考書References
・山本健兒(2005)『経済地理学入門 新版』原書房。
・山本健兒(2005)『産業集積の経済地理学』法政大学出版局。
・山本健兒『現代ドイツの地域経済-企業の立地行動との関連-』法政大学出版局、1993年。
・山本健兒・平川一臣(編)『朝倉世界地理講座 第9巻 中央・北ヨーロッパ』朝倉書店、2014年。
・経済地理学会編(2018)『キーワードで読む経済地理学』原書房。
・Aoyama,Y., J.T. Murphy and S. Hanson (2011) Key Concept in Economic Geography. London: Sage Publications Ltd.
・Bathelt, H. und J. Glúckler (2012) Wirtschaftsgeographie. 3., vollständig überarbeitete und erweiterte Auflage, Stuttgart: Verlag Eugen Ulmer.
・Barnes, T. J. and B. Christophers (2018) Economic Geography. A Critical Introduction. Oxford: John Wiley & Sons Ltd.
成績評価の方法と基準Grading criteria
授業に臨む姿勢、即ちディスカッションへの参加程度(50%)とレポートの内容(50%)で評価します。
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
特になし。
学生が準備すべき機器他Equipment student needs to prepare
特になし。
その他の重要事項Others
質問の発出や院生自身の研究に関する報告など、積極的な参加が求められます。
担当教員の専門分野等
<専門領域>社会経済地理学
<研究テーマ>周辺的地域における経済発展、移民と都市
<主要研究業績>
・山本健兒『現代ドイツの地域経済-企業の立地行動との関連-』法政大学出版局、1993年。
・山本健兒『国際労働力移動の空間―ドイツに定住する外国人労働者―』古今書院、1995年。
・山本健兒『産業集積の経済地理学』法政大学出版局、2005年。
・山本健兒・平川一臣(編)『朝倉世界地理講座 第9巻 中央・北ヨーロッパ』朝倉書店、2014年。
・山本健兒(2018a)「ドイツ経済復活の鍵としてのミッテルシュタントと地域経済」、『経済学研究』(九州大学経済学会)第84巻、第5・6合併号、pp.51-86。
・山本健兒(2018b)「地域経済の4つの支柱とシュタントオルトポリティークの意義」、『経済学研究』(九州大学経済学会)第85巻、第1号、pp.1-26。
・山本健兒(2018c)「地域経済の構造転換と「場所に関する戦略的経営」―オーストリア・フォラールベルク州の事例―」、『経済学研究』(九州大学経済学会)第85巻第4号、pp.59-106。
・山本健兒(2019)「地域経済とイノベーティブな企業群」―オーストリア・フォラールベルク州における製造企業最大4社の事例―」、『経済学研究』(九州大学経済学会)第86巻第1号、pp.61-111。
・山本健兒(2020a)「オーストリア・フォラールベルク州における優良企業」、『経済学研究』(九州大学経済学会)第86巻第5/6号、pp.49-84。
・山本健兒(2020b)「伝統的工業部門で進化したオーストリア・フォラールベルク企業」、『経済学研究』(九州大学経済学会)第87巻第1・2・3号、pp.31-66。
・Yamamoto, Kenji (2020c) Evolution of a Small and Medium-sized Enterprise in a Peripheral Area of Japan into a Hidden Champion. 『経済学研究』(九州大学経済学会)第87巻第4号、pp.23-45。
・山本健兒(2021)「地域経済の発展に関するDouglass C. Northの理論的考察の意義と問題点」、『経済志林』第88巻第4号、印刷中。