文学部Faculty of Letters

アメリカの作家の長篇をくわしく読解することを通じて、小説のおもしろさ、解釈をおこなうことのおもしろさを知るとともに、米文学・文化への理解および文学研究の方法論への理解を深めることを目的とする。今学期は、20世紀半ばの南部女性作家Carson McCullersが23歳にして発表した繊細かつ大胆な長編デビュー作The Heart Is a Lonely Hunter（1940）を一学期かけて読破する。

・作品の細部に目を配り、正確に意味をとって読解しようとする習慣をつける。
・他者の考えに耳を傾けて理解し、建設的なやり方で応答することができる。
・自分の考えを分かりやすく効果的に伝えることができる。
・自分の解釈を論理的に記述することができる。
・多様な批評の方法についての知識を得て、関心を持つ。
・『心は孤独な狩人』について、テクストの具体的なキャラクターや細部に触れながら自分なりに語れるようになる。
・カーソン・マッカラーズの生涯と作品、その時代背景を学ぶことを通じ、米国の文化と社会についての知識を深める。

ディプロマポリシーのうち、「DP1」「DP2」「DP5」に関連

日本語 / Japanese

受講者は毎週予習として作品を読み、感想・疑問や気になったことをまとめて授業に臨む。予習の段階では適宜翻訳を参照して構わないが、授業内での発表やディスカッションにおいては基本的に英語原書を用いる。授業は演習形式で進め、毎回発表担当者がハンドアウトを作成のうえでプレゼンテーションをおこない、担当コメンテーターによるコメント・質問、そして受講者全員参加によるディスカッションをする。適宜教員による補足説明がおこなわれる。発表担当者は、担当箇所の物語内容を要約したうえで、本文から気になった箇所をいくつか引用して分析し、ディスカッションのためのトピックを提示する。

発表に対しては授業内で口頭によるレスポンスがなされ、レポートに対してはフィードバックのコメントをつけたファイルが返却される。

あり / Yes

なし / No

春学期

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：ガイダンス

顔合わせ・自己紹介のあと、授業の進め方と発表の仕方を説明し、発表分担者を決定する。カーソン・マッカラーズとその作品についての導入講義

第2回：カーソン・マッカラーズとその時代：1930年代アメリカ南部、人種問題と貧困問題

作品読解に先立ち、作品の舞台となるアメリカ南部という土地と、1930年代という時代についての理解を得る

第3回：The Heart Is a Lonely Hunter読解①――書き出しを分析する

分担者によるプレゼンテーション、全員参加のディスカッション、教員による補足

第4回：The Heart Is a Lonely Hunter読解②――大不況下の南部の町

分担者によるプレゼンテーション、全員参加のディスカッション、教員による補足

第5回：The Heart Is a Lonely Hunter読解③――ジェイクと貧乏白人

分担者によるプレゼンテーション、全員参加のディスカッション、教員による補足

第6回：The Heart Is a Lonely Hunter読解④――コープランド医師と人種問題

分担者によるプレゼンテーション、全員参加のディスカッション、教員による補足

第7回：The Heart Is a Lonely Hunter読解⑤――少女ミックの悩み

分担者によるプレゼンテーション、全員参加のディスカッション、教員による補足

第8回：The Heart Is a Lonely Hunter読解⑥――コミュニケーションの形

分担者によるプレゼンテーション、全員参加のディスカッション、教員による補足

第9回：The Heart Is a Lonely Hunter読解⑦――シンガーの役割

分担者によるプレゼンテーション、全員参加のディスカッション、教員による補足

第10回：The Heart Is a Lonely Hunter読解⑧――人々の変化

分担者によるプレゼンテーション、全員参加のディスカッション、教員による補足

第11回：The Heart Is a Lonely Hunter読解⑨――結末を考える

分担者によるプレゼンテーション、全員参加のディスカッション、教員による補足

第12回：映画と小説の比較

映画『愛すれど心さびしく』（1968年）を視聴してディスカッション

第13回：批評論文の読解

The Heart Is a Lonely Hunterについて書かれた論文を読み、小説を論じる方法について考える

第14回：まとめのワークショップ

受講者が各自のレポートの計画について発表し、それについて討議することを通じて、今学期のまとめをおこなう

発表担当者になっているときはもちろん、そうでないときも、毎回事前に作品を読んで、ディスカッションに積極的に参加できるように準備しておくことが最も重要。読みながら面白かった点、気になった点、質問したい点などについてメモをとっておく（予習4時間以上）。

授業でのディスカッションを通じて自分の興味・関心のありかを見定め、それに関する研究書、論文、関連資料などを自ら調査・収集して読むことも重要。

Carson McCullers, The Heart Is a Lonely Hunter. Penguin Classics, 2000.
ISBN: 9780141185224

ヴァージニア・スペンサー・カー『孤独な狩人――カーソン・マッカラーズ伝』（国書刊行会、1998年）
吉岡葉子『南部女性作家論―ウェルティとマッカラーズ』（旺史社、1999年）
諏訪部浩一（編）『アメリカ文学入門』（三修社、2013年）
杉野健太郎（編）『アメリカ文化入門』（三修社、2010年）

ほか適宜授業で紹介する。

・授業への貢献度（ちゃんと予習ができているか、討議に積極的に参加しているか）：30％
・プレゼンテーション（担当箇所の内容が正確に把握できているか、引用箇所の分析がよくできているか、討議のための主題を提示できているか）：30％
・4000字程度の期末レポート（自分の解釈を提示し、リサーチにもとづいて、適切な箇所を引用しながらその解釈の妥当性を論証する）：40％

学生の皆さんが発言しやすい環境がつくれるようつとめます。また、クラス全体のディスカッションと教員による補足解説との配分をバランスよくしたいと思います。

秋学期に英米文学演習(5) Bを履修することが望ましい。