文学部Faculty of Letters

21世紀にはいり、西欧世界とイスラム世界に象徴されるように宗教間の摩擦や政治的な世俗化の問題に注目が集まっている。近年も世界各地で宗教的価値をめぐる暴力が現実のものとなり、私たちにも無関係な問題ではなくなりつつある。この授業では西欧における「他者の信仰」の歴史を学び、国際社会の宗教問題を広い視野から主体的に考察する知識を身につける。

世界にはキリスト教、イスラム教、仏教といった世界三大宗教はじめとして多様な宗教があります。しかしこれらをすべて「宗教」Religionという同じカテゴリーに含むような意識が西欧世界で認知されたのは、せいぜいここ２世紀のことにすぎません。この授業ではキリスト教の成立から新大陸の「発見」までを歴史的に概観し、「宗教」概念が決して普遍的なものではなく、歴史性や論争的な性格を抱えつつ成立してきた流れを具体的に理解することを目指します。

ディプロマポリシーのうち、「DP1」「DP2」に関連

日本語 / Japanese

授業は講義形式で行います。中世までもっぱらユダヤ・キリスト教だけが本当の「宗教」で、それ以外の信仰は「異教」扱いでした。「異教」概念は、それを規定する側がなにがしかの「真の宗教」を前提としている点で排除の論理が働きます。しかし近世以降この前提は「異教」との接触によりいくつかの点から揺らぎ始めます。１．古代異教の復活（ルネサンス）。２．カトリック＝異教論の登場（宗教改革）。３．新大陸の異教との遭遇（大航海時代）。おもに西洋が経験したこの３つのテーマを中心に排除の論理と「他者の信仰」との関係について、毎回資料を配りながら進めていく予定です（授業計画参照）。
学期の中盤に理解度を測るために中間小テストを行い、受講者全員に答案のフィードバックを行う予定です。
なお、この授業は秋学期の「宗教学１（伝統宗教）２」と連動しているので、秋学期授業の履修を考えている学生は本講義と合わせて履修することが望ましい。

なし / No

なし / No

春学期

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：イントロダクション

授業のテーマの説明

第2回：「他者の信仰」と現代（１）

宗教間摩擦の現在

第3回：「他者の信仰」と現代（２）

世俗化論と「宗教」概念の再考

第4回：ユダヤ＝キリスト教史（１）

ユダヤ教と旧約聖書

第5回：ユダヤ＝キリスト教史（２）

民族宗教から世界宗教へ

第6回：古代・中世キリスト教（１）

異教概念の成立

第7回：古代・中世キリスト教（２）

教父の偶像崇拝批判

第8回：宗教改革と異教批判（１）

宗教改革の歴史

第9回：宗教改革と異教批判（２）

異教＝教皇制批判

第10回：宗教改革と異教批判（３）

ウェーバーの脱魔術化論

第11回：宗教改革と異教批判（４）

悪魔学の盛衰

第12回：新大陸と魂の征服（１）

大航海時代と野生宗教の遭遇

第13回：新大陸と魂の征服（２）

キリスト教普遍史の揺らぎ

第14回：まとめ

授業全体の総括

毎回授業の参考文献・新聞記事を載せたレジュメを配布するので、自分の問題関心に沿う文献があれば、次回までに目を通しておくのが望ましい。また、中間の小テストや期末試験の形式は授業で習ったキーワードを予めお題として出すので、その予習が求められる。本授業の準備学習・復習時間は、各2時間を標準とします。

なし。毎回プリント配布。

ジル・ケペル『宗教の復讐』晶文社、1992年
ハルバータル、マルガリート共著『偶像崇拝―その禁止のメカニズム』法政大学出版局、2007年
木崎喜代治『信仰の運命―フランス・プロテスタントの歴史』岩波書店、1997年
その他随時授業で指示

出席票を配るので必ず出席すること。授業の半ばに中間小テストの実施も考えている。中間・期末試験では到達目標の理解度を見るために、授業中の質問や授業内容に加え、そこから自分の考えを展開できているかといった点も考慮する。２つの試験（目安は中間30％、期末70％）の結果と出席等を考慮して総合的な評価をします。

板書の見易さや早口にならないよう気をつけたい。