文学部Faculty of Letters

この授業は、人間の尊厳というテーマで行います。人間の尊厳は、人間の絶対的な価値を意味し、あらゆる人間を尊重する根拠になるものです。近年は日本でも、クローン技術を規制する法律などで、この概念が使用されています。しかし、人間の尊厳が何を意味するのかについては、さまざまな議論があるため合意に至っていません。そこで授業では、西洋の哲学や思想を手がかりに、応用倫理学の議論も考慮しながら、人間の尊厳の内容や意義について考察します。人間の尊厳は、たしかに西洋思想に由来する概念ですが、基本的人権の根拠として、第二次世界大戦後に注目されるようになりました。もっとも現在では厳しい批判もあり、人間の尊厳の内実が問い直されています。受講生には、選択的人口妊娠中絶や尊厳死など応用倫理学の諸問題を手がかりに、人間の尊厳について議論してもらいます。その議論によって、人間の「かけがえのなさ」や「絶対的な価値」について考えることになるはずです。

第一に、人間の尊厳とは何か、この概念の内容を説明できることです。
第二に、選択的人工妊娠中絶や尊厳死など、応用倫理学の諸問題を理解して、これらの問題における尊厳概念の意義を説明できることです。
第三に、選択的人工妊娠中絶や尊厳死について、自分の考えを言語化し表現できることです。

ディプロマポリシーのうち、「DP1」「DP2」「DP5」に関連

日本語 / Japanese

基本的に講義形式で行いますが、受講生との意見交換を重視します。また積極的に参加してもらうため、グループディスカッションを実施します。受講にあたっては、自分自身で考えること、また授業で発言できることが必要です。その他、授業の初めに、前回の授業で提出されたリアクションペーパーからいくつか取り上げ、全体に対してフィードバックを行います。

あり / Yes

なし / No

秋学期

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：授業の紹介、尊厳概念の必要性

授業の概要と方法、どうして尊厳概念が必要なのか説明する

第2回：尊厳概念の歴史(1)

古代から中世まで、尊厳概念の歴史を説明する

第3回：尊厳概念の歴史(2)

ルネサンスから現代まで、尊厳概念の歴史を説明する

第4回：尊厳概念へのアプローチと拷問

尊厳概念を解明する方法と、「拷問」という尊厳侵害の実例を考察する

第5回：グループディスカッション(1)

胎児の障がいを理由とした人工妊娠中絶について、受講生と議論する

第6回：グループディスカッション(1)のまとめ

胎児の障がいを理由とした人工妊娠中絶について、その問題点を説明する

第7回：カントの尊厳概念

「道徳的行為」の可能性を重視した、カントの尊厳概念を説明する

第8回：マルセルの尊厳概念

人間の弱さと「兄弟愛」を重視した、マルセルの尊厳概念を説明する

第9回：マルガリートの尊厳概念

屈辱なき「良識ある社会」を構想した、マルガリートの尊厳概念を説明する

第10回：グループディスカッション(2)

障がいを理由とした尊厳死について、受講生と議論する

第11回：グループディスカッション(2)のまとめ

障がいを理由とした尊厳死について、その問題点を説明する

第12回：医療技術の進展と人間の尊厳

エンハンスメント（能力の改善を目的として心身に医学的に介入すること）の問題点、および人間の「卓越性」を重視するカスの尊厳概念を説明する

第13回：今日の尊厳概念

人間の尊厳とは何か、結論を提起する

第14回：試験・まとめと解説

学期末試験を実施する

ディスカッションの前には、レポートを提出する必要があります。なおレポートが提出できない場合、ディスカッションには参加できません。また授業は発展的な内容を含むため、予習や復習は不可欠です。本授業の準備学習・復習時間は、各2時間を標準とします。

テキストは使用しません。適宜資料を配付します。

松田純『遺伝子技術の進展と人間の未来』、知泉書館、2005年
金子晴勇『ヨーロッパの人間像』、知泉書館、2002年
その他、必要に応じて参考書を授業中に紹介します。

授業参加度と授業後のレポートによって、自分の考えを表現できるかどうか評価します(40%)。また学期末試験によって、人間の尊厳の内容を説明できるかどうか、応用倫理学の問題を理解できているかどうか評価します(60%)。

受講生が議論や質問しやすい雰囲気づくりを心がけたい。またわかりやすい授業を行うために努力したい。