文学部Faculty of Letters

「宗教」批判の歴史的諸相の検討。春学期の授業に引き続き、「他者の信仰」や宗教寛容論等の現代的諸問題を異教問題として歴史的に考察する。秋学期では世俗権力と教会権力の政治力学も視野に入れながらルネサンスから啓蒙思想を経由して１９世紀の宗教学の成立までを概観し、現代の政教分離の原則や近代国家と宗教の関係がどのように確立されたのかを学ぶ。

宗教学の誕生は、19世紀のキリスト教神学から宗教学（科学）への転換によって特徴づけられる。これは、中世までのように「宗教」がいわば空気のごとく自明なものではなく、近代社会のなかで解決すべき一つの「問題」（クリティックの対象）として立ち現れたという認識の転換でもある。この授業ではおもに世俗の思想家たちの異教への視線や宗教観を通して、宗教学の成立と非宗教的な（ライックな）国民国家の形成を、キリスト教（教会権力）の相対化という長期的な視点から理解することを目指す。

ディプロマポリシーのうち、「DP1」「DP2」に関連

日本語 / Japanese

授業は講義形式で行います。春学期の授業では宗教の基本知識とキリスト教の成立から大航海時代までを扱い、聖書に基づく教父や神学者の異教批判を見てきました。しかし１７世紀以降、異教問題は世俗の思想家や哲学者の宗教（不）寛容論へとその文脈を移動し、「宗教」批判の諸相として西欧思想の中心テーマの一つになります。この授業では、「他者の信仰」の問題を主に近代思想史の文脈から読み直し、１９世紀に成立する宗教学や社会学がいかなる思想的背景から誕生したのかを思想家のテキストを通じて具体的に検討します（授業計画参照）。
学期の中盤に理解度を測るために中間小テストを行い、受講者全員に答案のフィードバックを行う予定です。
なお、この授業は春学期の「宗教学１（伝統宗教）１」と連動しているので、本授業の履修を考えている学生は春学期授業と合わせて履修することが望ましい。

なし / No

なし / No

秋学期

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：イントロダクション

秋学期授業への導入

第2回：ルネサンスとユマニスム（１）

モアのユートピア宗教

第3回：ルネサンスとユマニスム（２）

新プラトン主義と合理主義神学

第4回：理神論と自然宗教（１）

「異教徒の救い」とデカルト周辺

第5回：理神論と自然宗教（２）

スピノザの汎神論

第6回：理神論と自然宗教（３）

ロックの生得観念批判

第7回：啓蒙思想と宗教批判（１）

フランス啓蒙の自然宗教論

第8回：啓蒙思想と宗教批判（２）

ヒュームの理神論批判

第9回：啓蒙思想と宗教批判（３）

ド・ブロスのフェティシズム論

第10回：仏革命とロマン主義（１）

革命宗教と非キリスト教化運動

第11回：仏革命とロマン主義（２）

ドイツ・ロマン主義の宗教感情論

第12回：実証主義と人間の宗教（１）

フォイエルバッハの人間学とコントの社会学

第13回：実証主義と人間の宗教（２）

デュルケムと宗教学の制度化

第14回：まとめ

授業全体の総括

毎回授業の参考文献を載せたレジュメを配布するので、自分の問題関心に沿う文献があれば、次回までに目を通しておくのが望ましい。また、中間の小テストや期末試験の形式は授業で習ったキーワードを予めお題として出すので、その予習が求められる。本授業の準備学習・復習時間は、各2時間を標準とします。

なし。毎回プリント配布。

ハンス・キッペンベルク『宗教史の発見―宗教学と近代』岩波書店、2005年
伊達聖伸『ライシテ、道徳、宗教学』勁草書房、2010年
宇野重規ほか『共和国か宗教か、それとも』白水社、2015年
その他随時授業で指示

出席を毎回確認します（欠席が過半数を超える場合は、期末試験の資格を失うので注意）。授業の半ばに中間小テストの実施も考えている。中間・期末試験では到達目標の理解度を見るために、授業中の質問や授業内容に加え、そこから自分の考えを展開できているかといった点も考慮する。２つの試験（目安は中間30％、期末70％）の結果と出席等を考慮して総合的な評価をします。

板書の見易さや早口にならないよう気をつけたい。