文学部Faculty of Letters
HIS300BE(史学 / History 300)西洋近代史演習Seminar on Western Modern History
皆川 卓Taku MINAGAWA
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | 文学部Faculty of Letters |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2024 |
授業コードClass code | A3151 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 年間授業/Yearly |
曜日・時限Day/Period | 木4/Thu.4 |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 市ヶ谷 |
教室名称Classroom name | 市富士‐F406 |
配当年次Grade | 2~4 |
単位数Credit(s) | 4 |
備考(履修条件等)Notes | |
他学部公開科目Open Program | |
他学部公開(履修条件等)Open Program (Notes) | |
グローバル・オープン科目Global Open Program | |
成績優秀者の他学部科目履修制度対象Interdepartmental class taking system for Academic Achievers | |
成績優秀者の他学部科目履修(履修条件等)Interdepartmental class taking system for Academic Achievers (Notes) | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
SDGsCPSDGs CP | |
アーバンデザインCPUrban Design CP | |
ダイバーシティCPDiversity CP | |
未来教室CPLearning for the Future CP | |
カーボンニュートラルCPCarbon Neutral CP | |
千代田コンソ単位互換提供(他大学向け)Chiyoda Campus Consortium | |
カテゴリーCategory | 史学科 |
他学科公開科目 | |
クラスGroup | |
昼夜表記Day or Night |
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すべて閉じるHide All
Outline (in English)
(Course outline) By reading Thomas Hobbes' Leviathan (1651) to understand the historical background and the intent of the text accurately, we will learn how "state" (political communities, in the word of the time "Commonwealth") were perceived in early modern Europe, and consider what kind of political and intellectual conditions it was based on.
(Learning Objectives) By analytically interpreting the cutting-edge views on nature, humanity, and nation in the mid-17th century, which was the intersection of continuity from the Middle Ages and connection to modernity, we explore the possibilities of social metacognition reached by European society at the time. Understand its limitations and build a foothold for analyzing early modern and modern European history.
(Learning outside of classroom) First half: you can read the subscription section in advance. In introduction, it is often difficult to understand the author's intentions, so read while referring to the notes you took in the previous class (taking ca. 2 hours).
Latter half: since we will be assigning flipped learning, we will compile the contents into a resume according to the assignment and share it with the students. If you are in charge, you will need 3 to 4 hours of preparation. It is also recommended that you review for about an hour each time.
(Grading Criteria/Policy)
・Reading aloud, presenting interpretations, and participating in discussions (check each time): 50%
・Resume creation and explanation in flipped classroom: 30%
・Final report: 20%
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
トマス・ホッブズの『リヴァイアサン』(1651)を精読し、歴史的背景を把握しつつテキストの意図を正確に理解することで、近世ヨーロッパにおいて、「国家」(政治的共同体、当時の言葉で「コモンウェルス」)がどのように認識され、それはどのような政治的・知的環境に基づいていたのか、同時代人の目から学びます。
到達目標Goal
中世からの連続と近代への接続の交差点である17世紀半ばの先端的な自然観・人間観・国家観を分析的に読み解くことで、当時のヨーロッパ社会が到達した社会的メタ認知の可能性と限界を理解し、近世・近代ヨーロッパ史を分析するための足掛かりを構築します。
この授業を履修することで学部等のディプロマポリシーに示されたどの能力を習得することができるか(該当授業科目と学位授与方針に明示された学習成果との関連)Which item of the diploma policy will be obtained by taking this class?
ディプロマポリシーのうち、「DP2」「DP3」に関連
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
当該テキストは政治哲学の古典中の古典ですが、本授業は西洋史の授業として本テキストを分析します。すなわち現代的な価値判断のバイアスを避け、筆者の見ていた世界を忠実に再現するため、そこに登場するテクニカル・タームの意味や背景にある諸事情を受講生に調べてもらい、一言一句丁寧に読みます。調べる事柄については、毎回授業の際に順番に割り当てます。一定程度進むとホッブズの「モード」が掴めますので、半分を目処に「反転学習」(授業外での学習を前提として、授業ではそれを確認し、内容を検討する)に切り替えます。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
授業形態/methods of teaching:対面/face to face
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
第1回[対面/face to face]:ホッブズと『リヴァイアサン』成立の背景
ガイダンスを行います。本授業唯一の座学で、著者ホッブズの生涯と交友関係、このテキストの背景にある歴史的状況について、講師から概略を説明します。
第2回[対面/face to face]:第一部 人間について「第一章 感覚について」
講読に入ります。政治哲学書と考えると奇妙なテーマですが、これこそが近世ヨーロッパの社会観を表しているところです。最初は解説を加えることが多くなると思います。
第3回[対面/face to face]:「第二章 イマジネイションについて」
第2回と同様です。現代の政治哲学目当てで受講した人は退屈かもしれません。しかしその先には「政治」というものの歴史的な把握の可能性が広がっています。
第4回[対面/face to face]:「第三章 イマジネイションの継起あるいは連続について」
第2回・第3回の続きです。逆に哲学(特にギリシア哲学)に興味のある人は面白いかと思います。ヒントは17世紀の「機械論哲学」です。
第5回[対面/face to face]:「第四章 言語(スピーチ)について」(1)
従来の「スコラ学」と違い、彼の近代的なものの見方がよく現れているところです。テキストを精査すると、近代政治の前提にあるコミュニケーションとは何かを感じ取れます。
第6回[対面/face to face]:「第四章 言語(スピーチ)について」(2)
第6回の続きです。言語の正確な使用こそ、古代から現代にまで続く人間関係=「社会」の必要不可欠な要素であることが分かります。
第7回[対面/face to face]:「第五章 推論および学問について」
ホッブズの中世スコラ学批判が最も現れているところです。我々にとっては当たり前のことが、17世紀までの精神世界では驚異であったことが認識できます。
第8回[対面/face to face]:「第六章 一般に情念と呼ばれる、意思を持った連動の内的発端について、また、その表現としての話法(スピーチ)について」(1)
「政治は情念(感情)ではなく理性で行うべき」というのが当時の流行でしたが、理性的思考の同期は情念だというメタ認知的事実を突きつけています。
第9回[対面/face to face]:「第六章 一般に情念と呼ばれる、意思を持った連動の内的発端について、また、その表現としての話法(スピーチ)について」(2)
第8回の続きです。この頃になると、ホッブズが彼の生きた時代にどうチャレンジしようとしたのかが分かってくると思います。議論のし甲斐があるとところです。
第10回[対面/face to face]:「第七章 論究の結末、または結論について」
経験的・論理的矛盾を矛盾と考えるセンスについて論じられています。ホッブズの悩みを共有することで、近代の悩みは17世紀に起因することが分かります。
第11回[対面/face to face]:「第八章 一般に知的といわれるさまざまの徳、また、それらとは逆の欠点について」(1)
中世キリスト教世界の伝統を引きずる「知性」「徳」を論理的に分析する箇所です。ホッブズの論理のシャープさだけではなく、その時代的制約性にも注目して読みましょう。
第12回[対面/face to face]:「第八章 一般に知的といわれるさまざまの徳、また、それらとは逆の欠点について」(2)
第11回の続きです。内容に順応するのは簡単ですが、「時代」を見る目を持つことができるかどうかが、この「章」をどう読むかにかかっています。どんどん発問していきたいと思います。
第13回[対面/face to face]:「第九章 知識の種々の主題について」「第十章 力、価値、位階、名誉、ふさわしさについて」
16世紀半ばにフランスのラメーが開発した反中世的思考手続に基づいた、人々の能力・地位の分析です。「抽象」「体系化」という近世のものの考え方がよくわかります。
第14回[対面/face to face]:「第十一章 態度(マナーズ)の相違について」
人間の共同生活の中で現れる人間の性質について論じた個所で、人間と集団の関係にこだわるホッブズの真骨頂です。これまでの箇所が理解できていれば、難なく読めると思います。最後に半期のまとめをします。
第15回[対面/face to face]:「第十二章 宗教について」(1)
ホッブズにとって、実は隠された本当のテーマであったとも考えられている「宗教」についてです。この辺りから積極的に議論してもらいます。「お客さん」であると損をする採点方法を取ります。
第16回[対面/face to face]:「第十二章 宗教について」(2)
第15回の続きです。近代的発想がキリスト教と対立するものではなく、むしろそれを極めようとした結果の「想定外」であることを読み取れると思います。
第17回[対面/face to face]:「第十三章 人間の自然状態、その至福と悲惨について」
有名なホッブズの「万人の万人に対する闘争」について扱った章です。「善人しか生きる資格のない」中世から「悪人でも生きる資格のある」近代が生まれた瞬間でもあります。
第18回[対面/face to face]:「第十四章 第一、第二の自然法と契約について」
17世紀の「契約」とは何かを捉えることが課題です。この辺りから反転授業(在宅学習の成果を教場で確認するスタイルの授業)を導入する予定です。
第19回[対面/face to face]:「第十五章 他の自然法について」(1)
契約以外の自然法=自然の人間関係から生まれてくる法則の可能性を検討しています。報恩、従順、寛容、報復や社会関係に必要な「掟」が検討されています。
第20回[対面/face to face]:「第十五章 他の自然法について」(2)
第20回の続きです。この「自然法」の議論を17世紀の歴史的諸事実と突き合せ、当時の人々がいかに「共通の法」を求めていたことを裏付けてみましょう。
第21回[対面/face to face]:「第十六章 人格、本人及び人格化されたもの」
意志及び権利の単位である「人格」を検討しています。「国家」の単位として考えられていた「個人」「法人」(当時は社団)を捉えるセンスが、同時代の人々よりもだいぶ我々に近いことが分かります。
第22回[対面/face to face]:「第十七章 コモンウェルスの目的、生成、定義について」
リヴァイアサンのテーマである「コモンウェルス」(人々共通のモノ=国家)の設立目的を論じています。ここまでの道のりを踏まえれば、17世紀に「近代国家」の発想が生まれた理由が分かるでしょう。
第23回[対面/face to face]:「第十八章 設立された主権者の権利について」
ホッブズが「絶対主義的」と言われる主権者観が論じられています。本当にそうなのか、「絶対主義」とは何かを考えながら読んでみましょう。もしそうなら、現在は当時よりも「絶対主義」です。
第24回[対面/face to face]:「第十九章 設立によるコモンウェルスの種類と主権の継承」
17世紀まで人々に共有されていたアリストテレスの「三(六)政体論」に対する「主権」の立場からの批判を論じています。ここには政府を創り、運営する近代人の課題が隠されています。
第25回[対面/face to face]:「第二十章 父権的および専制的支配について」
暴力から権利が生まれるという中世的な発想を否定するために、ホッブズが一番苦労した章です。そこには中世以来の根拠に頼らざるを得なかった17世紀という時代の過渡的状況が現れています。
第26回[対面/face to face]:「第二十一章 国民の自由について」
現代の「自由」の観念から考えると、全くかけ離れているので、それだけ取り出すと混乱しますが、これまでのコンテクストに沿って行くと全然矛盾しない章です。これまでのテキスト理解が問われます。
第27回[対面/face to face]:「第二十二章 公的および私的、従属団体について」
リヴァイアサン(主権者)と臣民(個人)の間の様々な団体(社団)についての説明です。17世紀の各国の政治制度に関する参考文献と照らし合わつつ学習すると、その意図がよくわかります。
第28回[対面/face to face]:「第二十三章 主権の公的代行者について」「第二十四章 助言について」
リヴァイアサンの「政府機構」に関する議論です。ここまで読めば、もう受講者なりの近世国家のイメージはつかめるでしょう。最後にまとめのレポートを課します。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
(前半)
・事前に購読箇所を読んできます。最初は著者の意図がつかめないことも多いので、前回の授業で取ったメモを参照しながら読みます(2時間)。
(後半)
・反転学習を課しますので、割り当てに応じて内容をレジュメにまとめ、それを受講者で共有します。担当する場合は3~4時間の予習を要します。また毎回の振り返りに1時間ほどの復習が望まれます。
テキスト(教科書)Textbooks
Th.ホッブズ(永井道雄・上田邦義訳)『ホッブズ リヴァイアサンI』中央公論新社 2020(第3版)
参考書References
高澤紀恵『主権国家体制の成立』山川出版社 1997
近藤和彦『近世ヨーロッパ』山川出版社 2018
二宮宏之『全体を見る眼と歴史家たち』平凡社 1995
J.ヘンリー『一七世紀科学革命』岩波書店 2005
ヒロ・ヒライ/小澤実編『知のミクロコスモス』中央公論新社 2014
その他教場で指示します。
成績評価の方法と基準Grading criteria
成績評価基準は以下のようにします。
・音読と解釈の提示、ディスカッションへの参加(毎回チェックします):50%
・反転授業でのレジュメ作成と解説:30%
・最終レポート:20%
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
本年度授業担当者変更によりフィードバックできません。
学生が準備すべき機器他Equipment student needs to prepare
特にありません(パソコン・スマホ持ち込み可。ChatGPT等AI使用可。もちろんなくても問題ありません)。
その他の重要事項Others
特にありません。