文学部Faculty of Letters
PHL400BB(哲学 / Philosophy 400)哲学演習(4)Seminar on Philosophy (4)
酒井 健Takeshi SAKAI
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | 文学部Faculty of Letters |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2024 |
授業コードClass code | A2233 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 年間授業/Yearly |
曜日・時限Day/Period | 金3/Fri.3 |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 市ヶ谷 |
教室名称Classroom name | 市外濠‐S301 |
配当年次Grade | 3~4 |
単位数Credit(s) | 4 |
備考(履修条件等)Notes | |
他学部公開科目Open Program | |
他学部公開(履修条件等)Open Program (Notes) | |
グローバル・オープン科目Global Open Program | |
成績優秀者の他学部科目履修制度対象Interdepartmental class taking system for Academic Achievers | |
成績優秀者の他学部科目履修(履修条件等)Interdepartmental class taking system for Academic Achievers (Notes) | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
SDGsCPSDGs CP | |
アーバンデザインCPUrban Design CP | |
ダイバーシティCPDiversity CP | |
未来教室CPLearning for the Future CP | |
カーボンニュートラルCPCarbon Neutral CP | |
千代田コンソ単位互換提供(他大学向け)Chiyoda Campus Consortium | |
カテゴリーCategory | 哲学科 |
他学科公開科目 | |
クラスGroup | |
昼夜表記Day or Night |
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Outline (in English)
【Course outline】
The purpose of this course is to learn the fundamental of French contemporary thought.
【Learning Objectives】
Especially at the end of this course, students are expected to a good comprehension of Jean-Luc Nancy's thought on concept of Georges Bataille's community,and Maurice Blanchot's thought on "écriture" of Franz Kafka. That is mainly by learning of his text.
【Learning activities outside of classroom】
Before each class meeting, students will be expected to have read the relevant chapter from the text. Your study time will be more than four hours for a class.
【Grading Criteria】
Your overall grade in the class will be based on the following.
Response paper:30%,presentation in the class meeting:30 % and term-examination :40%.
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
1)哲学と芸術の交わりを大きな課題に掲げる。
2)フランス現代思想の広さと深さを学ぶ。
3)共同体、実存、芸術、宗教、政治、歴史、友愛などがキーワード。これらアクチュアルな問題相互のつながりを学んでいく。とくに今年度は共同体と実存と芸術の関係を学びの対象にする。
4)書く実力、プレゼンテーションの実力をつける。
5)勉強したいと心より思っている人に最適なゼミ。
到達目標Goal
▶今年度は春学期にジャン=リュック・ナンシー(1940-2021)のバタイユ論『無為の共同体』(1986)を中心にして、共同体と実存と芸術の関係について哲学的視点から考察を進める(テクストは邦訳を使用)。
▶秋学期にはナンシーの「無為」の概念に重要な影響を与えたモーリス・ブランショ(1907-2003)のカフカ論「カフカと作品の要請」(『文学空間』(1955)所収、のちに『カフカからカフカへ』(1981)にも所収)を取り上げる(テクストは邦訳を使用)。
▶共同体とは何か。すでに今現在この文章を読んでいるあなたと書き手の私は共同体の関係にある。制度や組織となって形を有する共同体から、形の定まらない今このときの他者との語らいや共存まで、共同体の問題は広い。そして私たちの今ある存在、つまり実存の在り方に共同体の問題は関係している。さらに芸術表現は先史時代から他者との交わりを前提にしており、共生の問題と深く関わって今日に至っている。芸術は共同体抜きには考えられないのだ。
▶ナンシーはフランス現代思想の第三世代の代表格であり、そのデビュー作の『無為の共同体』はフランス現代思想を通じて評価の高い論文である。ブランショが『明かしえぬ共同体』ですぐさま応答したのが証左だと言っていい。そのナンシーによれば、フランス現代思想の第一世代の代表格たるジョルジュ・バタイユは、共同体の問題をその果てまで追いかけ20世紀の限界にまで達してさまよったとなる。国家、極左サークル、社会学研究会、宗教秘密結社、雑誌編纂、書物の出版、講演、新たなメディアへの登場など、積極的に他者との交わりの場を求めていき、ついには「不定形の共同体」さらには「共同体を持たない人々の共同体」とまで唱えだしたのがバタイユなのである。
▶ブランショもまたフランス現代思想の第一世代に属するが、とりわけ文学論に優れた業績を残した。1955年出版の『文学空間』はその頂点にあり、所収のカフカ論は、フランス現代思想系文学論の白眉と言われている。その内容を簡単に紹介しておく。
作品は理想や夢の目標のごとく魅力的であり作者を作品制作へ駆り立てる。カフカもこの作品からの要請につねに駆られていたが、しかしわずかにしか作品を残せなかった。なぜなのか。作品の奥に広がる語りえない世界に魅惑されていたからである。この語りえない世界は果てしなく広がり、しかも作品という仮面を被って作者を誘惑する。カフカはこの誘惑にのって、作品の奥へさまよい出ていき、その音信を日記や書簡に残していった。さながら雪原を橇(そり)でさまようかのような彼の最晩年の文章は、無為のまま、つまり何も作品として成果をあげられないまま、芸術の奥義を伝達している。エクリチュールに優れた鑑識眼を示すブランショは死期の迫る最後のカフカの伝言をしっかり聞き取り、現代の我々に共同体・実存・芸術の核心を届けようとした。カフカ、ブランショ、彼らの読者、共同体は不定形に広がる。カフカを引くブランショの文章は、かなり難解だが読みごたえがある。授業でゆっくり読み解いていきたい。
▶フランス現代思想の第二世代(フーコー、デリダ、ドゥルーズ)も第一世代の発言に深く関わっており、ナンシーも第二世代とくにデリダから影響を受けた。授業ではこの点にも留意していく。
▶授業の大きな到達目標として以下の三点をあげておく。
1.フランス現代思想の本質を理解する。その本質とは、人間中心主義、理性偏重、有用性重視のこの近代社会が忘却した人間の可能性を掘り起こして、実存の問題として、つまり、今を生きる自分の問題として引き受けるということである。
2.芸樹作品をとおして、無為(非生産的な在り方)、無益、無用性といった現代社会ではまったく評価されない様相に人間と世界の生の本質があることを理解していく。
3.参加者各人の実存を表現化できるように、発表とレポ―トで自らの可能性を研磨する。「無為」とは生の本質へ迫る姿勢であり、怠惰な対応のことではない。授業には真剣に出席してほしい。
この授業を履修することで学部等のディプロマポリシーに示されたどの能力を習得することができるか(該当授業科目と学位授与方針に明示された学習成果との関連)Which item of the diploma policy will be obtained by taking this class?
ディプロマポリシーのうち、「DP1」「DP2」「DP3」「DP4」「DP5」に関連
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
1)学生の発表が中心になる。適宜、教員が重要な点を口頭で、あるいは板書して指摘していく。毎回、授業の最後に論述式のリアクションペーパーを書いて提出する。返却は次回の授業はじめに行う。
2)今年度の開校日は4月12日金曜日(3時限)とする。初回はオン・ラインでのズーム授業になる予定。hoppiiの「お知らせ」からズームアドレスを通知します。
3)その後の授業は教室での対面授業を予定しているが、社会状況に応じてオン・ラインでのズーム授業に転じる場合もある。
4)昨年度からの新たな試みとして、4年生が卒論計画と作成中の原稿を発表して質疑応答の場を設ける。卒論作成の進捗とテーマの共有化をはかるためである。
5)さらに昨年度はゼミの卒業生にゲスト出演を依頼し、授業の指針となる発表をしてもらった。今年度も社会人あるいは院生となった先輩諸氏の招待発表を予定している。
6)期末レポートの課題の提出・フィードバックは「学習支援システム」を通じて行う予定。また優れた課題回答に対しては授業内で紹介し、さらなる議論に活かす。
7)また、春学期と秋学期に一度ずつ美術館見学を予定している。夏休みにはカフカの短編小説を読むサブゼミを開く予定。また合宿において哲学と芸術について学びを深めたいと思っている。
8)さらに今年度の新たなフィールドワークとして、学会発表の聴講を考えている。6月初めに明治大学のお茶の水校舎で開催される日本フランス語フランス文学会の春季大会に赴いて当ゼミ出身の院生によるバタイユ論の発表を聞く予定でいる。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
あり / Yes
授業計画Schedule
授業形態/methods of teaching:対面/face to face
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
第1回[オンライン/online]:授業の紹介。
この演習の特色について。
共同体・実存・芸術に対するフランス現代思想の考え方について。
過去の優秀卒業論文の紹介。
第2回[対面/face to face]:受講生の自己紹介。テクストの概要。
選抜後の最初の授業となる。受講生の自己紹介とナンシーの『無為の共同体』の紹介。
第3回[対面/face to face]:ナンシー『無為の共同体』①
5-8頁。
第4回[対面/face to face]:『無為の共同体』②
8-14頁。
第5回[対面/face to face]:『無為の共同体』③
14-23頁。
第6回[対面/face to face]:『無為の共同体』④
23-30頁。
第7回[対面/face to face]:『無為の共同体』⑤
30-36頁。
第8回[対面/face to face]:『無為の共同体』⑥
36-42頁。
第9回[対面/face to face]:『無為の共同体』⑦
42-48頁。
第10回[対面/face to face]:『無為の共同体』⑧
49-57頁。
第11回[対面/face to face]:『無為の共同体』⑨
57-62頁。
第12回[対面/face to face]:『無為の共同体』⑩
62-68頁。
第13回[対面/face to face]:『無為の共同体』⑪
68-76頁。
第14回[対面/face to face]:前期のまとめ。
期末課題の提示とゲスト卒業生の発表。
第15回[対面/face to face]:卒論発表会
卒論の第1章を開示して、検討しあう。
第16回[対面/face to face]:ブランショ「カフカと作品の要請」①
103-104頁。
第17回[対面/face to face]:ブランショ「カフカと作品の要請」②
104-106頁。
第18回[対面/face to face]:ブランショ「カフカと作品の要請」③
106-111頁。
第19回[対面/face to face]:ブランショ「カフカと作品の要請」④
111-115頁。
第20回[対面/face to face]:ブランショ「カフカと作品の要請」⑤
115-117頁。
第21回[対面/face to face]:ブランショ「カフカと作品の要請」⑥
117-120頁。
第22回[対面/face to face]:ブランショ「カフカと作品の要請」⑦
120-124頁。
第23回[対面/face to face]:ブランショ「カフカと作品の要請」⑧
124-127頁。
第24回[対面/face to face]:ブランショ「カフカと作品の要請」⑨
127-130頁。
第25回[対面/face to face]:ブランショ「カフカと作品の要請」⑩
130-134頁。
第26回[対面/face to face]:ブランショ「カフカと作品の要請」⑪
134-137頁。
第27回[対面/face to face]:ブランショ「カフカと作品の要請」⑫
137-142頁。
第28回[対面/face to face]:まとめ
秋学期の復習をかねた課題の呈示。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
1.バタイユの入門書および授業で言及されるテクストを読んでおくこと。
2.レスポンス・ペーパーの優秀回答を毎回公表するので、それを参考にして各自、書き方から思想内容までしっかり確認しておくこと。
3.本授業の準備学習・復習時間は各4時間を標準とする。
テキスト(教科書)Textbooks
上記の授業形態のテーマ欄に紹介した文献の邦訳を教科書とする。授業内においてコピーを配布する予定。
参考書References
1)拙論「神々の到来と創造的ニヒリズム ‐ナンシーとともに」、拙著『夜の哲学ーバタイユから生の深淵へ』所収。2016年、青土社。
2)拙論「神話の二つの相 ‐ニーチェ、バタイユ、ナンシーとともに」『多様体』第2号所収、2020年10月。
3)拙著『バタイユ入門』ちくま新書、1996年。
4)ブランショ『明かしえぬ共同体』西谷修訳、ちくま学芸文庫、1997年。
5)沢田直『ジャン=リュック・ナンシ― - 分有のためのエチュード』白水社、2013年。
6)郷原佳以『文学のミニマル・イメージ - モーリス・ブランショ論』左右社、2021年。
7)カフカ『カフカ傑作短篇集』長谷川四郎訳、福武文庫、1888年。
8)カフカ『夢・アフォリズム・詩』吉田仙太郎編訳、平凡社ライブラリー、1996年。
9)カフカ『カフカ短篇集』池内紀編訳、岩波文庫、1987年。
成績評価の方法と基準Grading criteria
1)上記「到達目標」に記した3つの目標をどれだけ達成しているかに基準をおく。
2)授業での発表(30%)、毎回のレスポンス・ペーパ-(30%)、期末のレポート(40%)によって判定する。
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
卒論制作をゼミに組み込んでほしいとの要望があったので昨年度から対応した。
学生が準備すべき機器他Equipment student needs to prepare
とくにない。
その他の重要事項Others
1)ILACの授業「外国文学と文化」(月曜日2時限)はパリの歴史、ルーヴル美術館所蔵の絵画をボードレールの美術評論、ベンヤミンのボードレール論、パッサージュ論などを参考にして考察する授業であり、当ゼミと関係が深い。履修を勧める。
2)ゼミの先達たちのレポートや卒論について紹介されているので、次の拙著を紹介しておく。
『私にとって文学部とは何か』(景文館書店、2021年)
3)バタイユと芸術に関しては次の拙著も参考にしていただきたい。
『モーツァルトの至高性 - 音楽に架かるバタイユの思想』(青土社、2022年)
4)授業には熱心に参加してほしい。やむなく欠席する場合はメールで連絡すること。