生命科学部Faculty of Bioscience and Applied Chemistry
APC300YA(複合化学 / Applied chemistry 300)生物有機化学Bioorganic Chemistry
芝 清隆Kiyotaka SHIBA
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | 生命科学部Faculty of Bioscience and Applied Chemistry |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2024 |
授業コードClass code | H7041 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 春学期授業/Spring |
曜日・時限Day/Period | 水4/Wed.4 |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 小金井 |
教室名称Classroom name | 各学部・研究科等の時間割等で確認 |
配当年次Grade | |
単位数Credit(s) | |
備考(履修条件等)Notes |
成績優秀者の他学部科目履修制度で履修する学 生:教員の受講許可が必要(オンライン授業の場合は、学習支援システムで許可を得るようにする) |
他学部公開科目Open Program | |
他学部公開(履修条件等)Open Program (Notes) | |
グローバル・オープン科目Global Open Program | |
成績優秀者の他学部科目履修制度対象Interdepartmental class taking system for Academic Achievers | ○ |
成績優秀者の他学部科目履修(履修条件等)Interdepartmental class taking system for Academic Achievers (Notes) | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
SDGsCPSDGs CP | |
アーバンデザインCPUrban Design CP | |
ダイバーシティCPDiversity CP | |
未来教室CPLearning for the Future CP | |
カーボンニュートラルCPCarbon Neutral CP | |
千代田コンソ単位互換提供(他大学向け)Chiyoda Campus Consortium | |
カテゴリー<生命科学部>Category | 学部共通科目 |
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Outline (in English)
The goal of this class is to acquire the ability to understand "life" from the perspectives of "organic compounds," its constitutive elements, and the "system" formed by their interactions. Initially, ensure a solid understanding of organic compounds such as proteins, lipids, and sugars, which compose cells, followed by learning the replication, transcription, and translation of genetic information, as well as the roles of energy acquisition systems and biological membranes, as per the textbook. Then, grasp the essence of life systems from a broader perspective, focusing on their "resilience," "hierarchy," and "emergence." This understanding will lead to the ability to comprehend the evolution and diseases of organisms from these viewpoints. Classes always include explanations that are conscious of the time axis, intertwining different scales such as 17 billion years since the universe's birth, 4 billion years since life began, several thousand years since the birth of human culture, and a few hundred years since the advent of modern natural science. Additionally, to experience the cutting-edge of life sciences, exercises involving various public databases will be used during lessons. Basic topics like the substances that make cells, mechanisms of genetic information transfer, biological membranes, metabolism, and enzymatic reactions will be taught according to the textbook, but recent findings not included in the textbook will also be introduced. Feedback from participants will be incorporated, utilizing the learning support system.
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
「生命」を、その構成要素である「有機化合物」と、それらが相互作用して形成される「システム」の観点から理解する能力の獲得を目指す。最初に、タンパク質、脂質、糖などの細胞を作る物質、「有機化合物」の理解を確実にし、ついで、遺伝情報の複製・転写・翻訳、エネルギー獲得システムと生体膜の役割を教科書に沿って学ぶ。次に、より大きな視点での生命システムを、特にシステムのもつ、「強靱性」「階層性」「創発性」を生命の本質として理解していく。その結果、生物の進化や疾患をこれらの観点で理解できる能力が身につく。授業においては常に、時間軸を意識した説明をおこなう。時間軸としては、宇宙誕生からの170億年、生物誕生からの40億年、人類文化の誕生からの数千年、近代自然科学誕生からの数百年といった異なるスケールを織り交ぜていく。さらに、生命科学の最先端の研究を体感するために、各種公共データベースを授業中に実際に利用する演習も何回か予定している。タンパク質、脂質、糖などの細胞を作る物質、遺伝情報伝達の仕組み、生体膜、代謝や酵素反応なども基本的な項目は教科書に沿って講義を進めるが、教科書に書かれていない最近知見も紹介する。また、学習支援システムを活用しながら、受講者からのフィードバックも取り入れていく。
到達目標Goal
これまでの教育過程で学んだ生物学の知識を基礎に、「新しい枠組みで生命をとらえる」視点を獲得することを目標とする。最終的に受講者が「今まで学んだことの復習となりました」と感じて終わる場合は、この授業が目標とするゴールには達していないことになる。「生命に対する新たな見方が身につきました」と終わるのが、本講義が狙う到達目標である。
この授業を履修することで学部等のディプロマポリシーに示されたどの能力を習得することができるか(該当授業科目と学位授与方針に明示された学習成果との関連)Which item of the diploma policy will be obtained by taking this class?
DP2
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
教科書に沿った授業をおこなうが、該当する教科書の章を予習していることを前提に授業を進める。その際、教科書とは違った視点での説明、すなわち、関連したトピックの紹介などを通じて、理解を深めるための工夫をおこなう。授業の初めに、前回の授業での課題の解説や、提出された質問に対する答えの時間をおき、受講者へのフィードバックを行う。授業中には、学習支援ネットワークを用いた小テストと、後半には各種生物系データベースを実際に使った実習をおこなうので、各自通信機器を持参すること(スマートフォンでも対応できるであろうが、公共データベースなどは、PCを利用した方が使いやすいので注意)。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
なし / No
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
授業形態/methods of teaching:対面/face to face
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
1[対面/face to face]:細胞と小部屋
最初にイントロダクションとして14回の授業全体の概要を説明する。特に、この授業の目的、達成目標を明確にし、授業の進め方、その特徴、配点の方法、合否の判定方法を説明する。授業で用いる教科書、参考図書の紹介もおこなう。続いて、第1回の講義『生命階層の基本単位:細胞』を教科書の第1章に準じておこなう。ここでは、生物の構成単位としての細胞について、これまでに学んできたことを再確認する。その際、細胞がどのように発見され、認識されてきたかの科学史とかることで、新たな視点で細胞を識ることを目標とする。なお、2回目以降の授業でおこなうネットワークを用いた小テストを1回目の授業でもおこなうが、システム操作の確認を主目的とするので、配点はおこなわない。また、教科書もまだ持参しなくてもよい。
2[対面/face to face]:「分ける」ことと「まとめる」こと
地球上には極めて多様な「形」と「機能」を備えた様々な細胞が無数に存在する。しかし、視点を変えれば、地球上の全細胞は、驚くほど似通った単純な構造(細胞)を有しているとも言える。この「多様性」と「同一性」を、「時間」を軸にとって学んでいく。同時に、科学における、さまざまなものを「分ける」ことと、様々なものの中から「同一性を見いだす(まとめる)」ことの重要性を学んでいく。教科書の第1章相当部分。
3[対面/face to face]:シンプルに複雑なものを作る
細胞は多種多様な有機化合物が集まって構成される複雑かつ精密な構造体です。そして、これら細胞を構成する有機化合物も、さまざまな「形」と「機能」を持っています。同時に、細胞の時と同じように、これらの多様な有機化合物も「恐ろしく単純な原理で形成」されている。すなわち、水素、炭素、窒素、酸素、リン、イオウのたった6種類の元素が集合したものにすぎない。この有機化合物の「多様性」と「単純さ」を宇宙の誕生から現在までの長い「時間軸」をなぞって考え、世の中=全宇宙システムがもつ「階層性」と「創発性」を学ぶ。教科書の第2章相当部分。
4[対面/face to face]:水と油
第3回の授業では、多様な有機化合物も、つきつめれば小数の元素の集まりにすぎないことを学んだが、限られた数のブロック単位が組み合わさることで、驚くべき多様な構造と機能を生み出すことができることも認識する必要がある。その名前を覚えるのがうんざりする生体有機化合物であるが、第4回の授業では「水」と「油」を視点に、有機化合物の発見の科学史とからめながら、わかりやすく多様な分子をまとめていきたい。教科書の第2章相当部分。
5[対面/face to face]:ホムンクルス
水素、炭素、窒素、酸素、リン、イオウのたった6種類の元素の集合から多様な有機化合物が形成され、それらがさらに高い階層が集合して細胞となり、生命となるということならば、試験管の中で、あれこれモノを混合することから新た(デ・ノボ)に生命を作り出すことができるかもしれない、というのが中世の錬金術師が考えた「ホムンクルス」実験である。いままでのところ、デ・ノボに生命を創り出すことには成功していないが、生命が人智を超えた存在なのか、あるいは、物質の延長上に存在するものであるかについては、有史以降現在までわれわれの知的好奇心を強く惹きつけるエニグマである。第5回の授業では、古代哲学、近代科学の進展と共に成熟してきた、「生命の誕生と連続性」についての基本知識を身につけ、第6回以降での「生命情報」を考える知識基盤を身につけておく。教科書の第3章相当部分。
6[対面/face to face]:1953
物理学における「万有引力の法則」や「相対性理論」に匹敵する生物学上の大発見は何か?の問いに対する答えの1つに「1953年のDNAの二重らせん構造の発見」があるかもしれない。この場合、美しい数式で法則を記述するのではなく、「DNAの分子構造」の中から、いろいろなことが読み解けるといったことが物理の法則とは異なる点である。1953年のDNA構造の解明の感動を追体験できれば、現代生物学の半分から三分の一は理解できてしまうのではと思えるほどの重要な発見といえる。授業では、20世紀前半の物理、化学、生物学の動きが、どう分子生物学へと結晶していくかを時間軸と共に紹介し、1953年当時の「二重らせん構造の発見」の驚きの追体験をめざす。教科書の第3章相当部分。
7[対面/face to face]:物質と情報
1953年のDNAの二重らせん構造の発見を起点とし、20世紀後半の分子生物学は急速に進展する。ここでは、受講者が既に過去の勉強で学んだであろう、「遺伝情報」の「複製」「転写」「翻訳」についての完璧な復習を、練習問題を交えながら進める。物質である有機分子が、どのように情報を蓄えて、それを伝え、また、変化させていくかを学ぶ。教科書の第3章相当部分。
8[対面/face to face]:全ての細胞は細胞から生じる
1953年のDNAの二重らせん構造の発見の衝撃が凄まじかったために、DNA至上主義的な流れも生まれたが、DNA(核酸分子)が主導権を握りながら生物が誕生したかどうかについては意見の分かれる点である。第2回目の授業で習ったように、現存する生物は全て、「驚くほど似通った単純な構造」をもつ細胞から構成されている。このことは、過去の生物の痕跡を辿っても変わらない。第8回の授業では、核酸分子を「包む」脂質膜の基本構造を復習しながら、生命における「区切る」ことの重要性を考えて行く。教科書の第4章相当部分。
9[対面/face to face]:137億年の連続性
全ての細胞は細胞から生じるとはいうものの、40億年ぐらい前には、最初の細胞、あるいは、核酸分子が何かのきっかけで誕生したと考えるのが一般的である。生命の誕生が人智の及ばない出来事としておこったのか、あるいは、137億年の宇宙の歴史の中で、自然な流れとしておこったのかは、証明する術はないが、137億年の宇宙の歴史を駆け足で辿ってみることで、受講者がこの問題を考える際の土台を固めていくことを目標とする。また、正確な理解が意外と難しい、「ダーヴィンの進化論」についても、正しい知識をつけていく。教科書第1章から第4章までのまとめ。
10[対面/face to face]:負のエントロピーを食べる生物
「生命は負のエントロピーを食べている」とは20世紀の前半に物理学者シュレティンガーが言い放った謎の言葉である。生物はエントロピー増大の法則に逆らうかのように、秩序構造を作っていく事実を指摘した言葉と考えてよい。実際、生物は膨大なエネルギーを作り出すシステムをもち、ある意味では、生命の本質は太陽光エネルギーを分子の秩序構造に変換するシステムと考えてよいだろう。ここには、核酸分子を至上とする生命観とはまたちがった、エネルギーを中心として生物を考える立場がある。第10回の授業では、細胞がもつエネルギー代謝システムの復習を進めながら、同時に生物活動における電子の重要性も学んでいく。教科書の第5章、第6章相当部分。
11[対面/face to face]:エピジェネティクス
「ジェネティクス」は「遺伝学」、「エピ」は「上位」を意味する。あわさると、「遺伝子を越えた何ものか」ということになるが、現在進行形の生物学は、この遺伝子を越えた生命情報をなんとか理解していこうといったとてつもない大きな問題に挑戦しつつある。第11回の授業では、20世紀中頃のオペロン仮説からはじまり、現在のエピゲノム研究に続く研究でめざされている、有機分子からなるシステムの動きか、どのように高次の生命情報を生み出しているのかについて学ぶ。同時に、生命システムの擾乱としてのがんなどの各種疾患との関係について考えて行く。各種疾患ゲノムデータベースを実際に使いながら、現在進行形のゲノム医療を体験する。
12[対面/face to face]:たった2万数千遺伝子
大腸菌がもつ遺伝子は4千強と考えられている。では、偉大なる(?)ヒトのゲノム上には、いくつの遺伝子があるのかというと、わずかその数倍の2万数千遺伝子にすぎない。大腸菌とヒトとは、それほど変わらない存在なのか、あるいは、ヒトなどの多細胞の生物真核生物には、遺伝子の数とは関係のない、独自のシステム構造があるのか?第12回の授業では、「ゲノム」に焦点をあてながら、生物の進化・多様性を考えていく。授業では、各種ゲノム公共データベースを実際に使いながら、現在進行形のゲノム生物学を体験する。
13[対面/face to face]:サイバネティクス
生命をシステムとして理解しようとする動きは、20世紀中頃「マーシー会議」にその起点を求めることができる。「サイバネティクス」「複雑性科学」「システムバイオロジー」「ゲノム生物学」と現在にまで続くこのシステム的観点の学問は、今後も生物学の中心テーマとして、基礎と応用のどちらの分野でも重要な役割を果たしていくことは間違いない。第13回の授業では、システム的に生物を理解しようする学問の歴史を紹介し、今後の展望も紹介していく。また、現在進行形のシステム研究を、各種データベースを実際に使いながら、体験してみる。
14[対面/face to face]:まとめテスト
これまでの授業に関するまとめテストを学習支援システムを用いて実施する。予定では、このまとめテストを30点とし、第2回から第13回までの授業中の小テストの合計を70点として合否を判定する。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
【本授業の準備・復習等の授業時間外学習は、4時間を標準とする】受講者はあらかじめ、教科書の相当する章を、十分に予習していることを前提に授業をおこなう。
テキスト(教科書)Textbooks
入門 生化学 (裳華房)著者 佐藤健
プリント版:2,640円
電子版:2,376円
(2024調べ)
参考書References
細胞の分子生物学 (ニュートンプレス)(翻訳版)
ただし、高価なものなので特に買わなくてもよい。図書室などで必要部分を読めばよい。また、各回の授業に関連した図書・サイトの情報をその都度紹介するので、視野を深めたい学生は参考にするとよい。
成績評価の方法と基準Grading criteria
第2回〜第13回の授業中に学習支援システムを利用しておこなう小テストの合計を70点、また、最終授業でおこなうまとめテストの成績を30点とし、これらの合計を最終的な成績とする。
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
毎回の授業中におこなう小テストの結果をふまえながら、学生の理解度を把握し、その後の授業内容に反映させる。また、学生からの「これが知りたい」といったリクエストに可能な限り対応して、興味のある事項を紹介していく予定である。
学生が準備すべき機器他Equipment student needs to prepare
学習支援システムを利用した授業中での小テストをおこなうので、必ず学習支援システムが利用できる環境で出席してください。