公共政策研究科Graduate School of Public Policy and Social Governance
HIS500P2－030（史学 / History 500）サステイナビリティ学事例研究DⅠSustainability Studies (Case study) D Ⅰ
辻 英史Hidetaka TSUJI
授業コードなどClass code etc
| 学部・研究科Faculty/Graduate school | 公共政策研究科Graduate School of Public Policy and Social Governance |
| 添付ファイル名Attached documents | |
| 年度Year | 2023 |
| 授業コードClass code | X9823 |
| 旧授業コードPrevious Class code | |
| 旧科目名Previous Class title | |
| 開講時期Term | 春学期後半/Spring(2nd half) |
| 曜日・時限Day/Period | 月6/Mon.6,月7/Mon.7 |
| 科目種別Class Type | |
| キャンパスCampus | 市ヶ谷 |
| 教室名称Classroom name | 各学部・研究科等の時間割等で確認 |
| 配当年次Grade | |
| 単位数Credit(s) | 2 |
| 備考（履修条件等）Notes | |
| 実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
| カテゴリーCategory |
サステイナビリティ学専攻 （博士後期課程）選択必修科目（専門科目） |
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Outline (in English)
The course deals with the historical development of the German welfare state (Sozialstaat), from its beginning in the late 19th to the 21th century. Main focus will be laid on its character as "welfare mixture", which means dynamic cooperative interactions between governmental authorities, welfare organizations, and actors of the civil society (Volunteers) in building and reforming the social security system.
The class consists of seven modules arranged in chronological order.
Each module will consist of a combination of lectures, readings, and literature readings, as well as discussions with participants to supplement the information and deepen understanding.
Participants are expected to raise questions and provide knowledge about comparisons with the situation in other countries and regions, especially Japan.
The standard preparation and review time for this class is 2 hours each.
Grading will be decided based on participation in discussions (40%) and term-end report (60%).
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的（何を学ぶか）Outline and objectives
ドイツ社会国家の発展の歴史を、ボランティアの観点から学ぶ。
社会福祉史においては、国家による上からの社会政策だけでなく、民間の中間団体や個人的なエージェントの下からの活動を重視し、現代の社会保障体制を両者が一体となった「福祉の複合体」として理解する見方が注目されている。
この授業では、ドイツの社会福祉の歴史を、その「福祉の複合体」の担い手としてのボランティアに注目しながら再構成していく。国家が独占的に社会保障の担い手となった時期はかなり遅く、ドイツにおいてはようやく20世紀初頭のことにすぎない。それまで社会福祉のかなり部分は都市自治の枠内で行われ、またそれは市民の自発的なボランタリーな活動に大部分依存していたのである。また20世紀の末以降、社会福祉のみならず民主主義の発展や社会的課題の解決におけるボランティアの役割への再評価が進み、市民参加を拡大しようとする政策が大々的に展開されている。
このようにボランティアを軸としてドイツ社会国家を検証することから、現在社会保障制度の改革が急務となっている日本社会の現状と課題の分析にとって有意義な情報が得られるだろう。
到達目標Goal
ドイツの社会福祉の歴史と現状を理解し、自分の研究への示唆を得る。
1．ドイツ社会国家の歴史的形成過程について理解する。
関連する法律や制度だけでなく、政治、行政、サービス提供者（企業、第三セクター）、福祉専門職やボランティア、そしてクライアントなどの相互作用をふくむダイナミックな関係として浮かび上がらせる。
2．ドイツ社会国家の現在の姿について理解する。
1990年代末以降の改革で大きく変化しつつある全体像を理解したうえで、いくつかの分野について詳細に検討する。
3．日本および他国・他地域との比較をおこなう（ディスカッション）。
ドイツ社会国家の歴史的発展のそれぞれのステージをその問題点を含めて検討した上で、さらに参加者の関心のある地域や国との比較をおこなう。
この授業を履修することで学部等のディプロマポリシーに示されたどの能力を習得することができるか（該当授業科目と学位授与方針に明示された学習成果との関連）Which item of the diploma policy will be obtained by taking this class?
ディプロマポリシーのうち、「DP2」「DP3」に関連している。
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)（学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. ）
授業は、時代順に並べた7つのモジュールにより構成される。
モジュールごとに講義と資料講読、文献講読を組み合わせるほか、参加者とディスカッションをおこない、その中で情報を補足し理解を深めていく。その際、他の国や地域とくに日本の状況との比較について、参加者からの問題提起・知識提供を期待する。
アクティブラーニング（グループディスカッション、ディベート等）の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク（学外での実習等）の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
授業形態/methods of teaching：対面/face to face
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
第1回[対面/face to face]：イントロダクション
ボランティアを中心に社会国家を考えることの意味について。
第2回[対面/face to face]：モジュール①ボランティアの誕生
中世から近世までの都市自治や市民のあいだの協会活動について。
第3回[対面/face to face]：モジュール②19世紀ドイツにおけるボランタリズムの展開 その1
19世紀初頭のドイツにおける都市自治の再編と市民社会の成立について。
第4回[対面/face to face]：モジュール②19世紀ドイツにおけるボランタリズムの展開 その2
市民衛兵や救貧行政など公的な領域や、協会や結社など民間の領域における19世紀市民層の活動について。
第5回[対面/face to face]：モジュール③20世紀国家とボランタリズム その1
第1次世界大戦をきっかけにした社会政策の局面転換と社会国家概念の登場について。
第6回[対面/face to face]：モジュール③20世紀国家とボランタリズム その2
ヴァイマール時代からナチ期にかけて、国家への権力集中が進行した時代のボランティアのあり方について。
第7回[対面/face to face]：モジュール④戦後ドイツ社会における社会国家の構築とボランティア その1
戦後西ドイツにおける国家主導下の社会福祉の整備について。
第8回[対面/face to face]：モジュール④戦後ドイツ社会における社会国家の構築とボランティア その2
戦後ドイツ社会国家のメカニズム内にボランティアがどのように組み込まれていったのかを扱う。
第9回[対面/face to face]：モジュール⑤戦後西ドイツ社会の価値変容と「新しい名誉職」
高度経済成長がもたらした物質的繁栄が人びとの生活や価値観の変化を通じてボランティアのあり方にいかに影響を与えたか。
第10回[対面/face to face]：モジュール⑥社会国家の危機 その1
1970年代の経済不況を背景にそれまでの西ドイツ社会国家体制への批判が強まった。その批判内容を分析する。
第11回[対面/face to face]：モジュール⑥社会国家の危機 その2
1980年代になると社会国家の危機脱出のシナリオとしてのボランティア活動が注目されるようになる。その経緯を分析する。
第12回[対面/face to face]：モジュール⑦統一ドイツにおける参加政策と「市民的参加」 その1
1990年代末から本格化した連邦政府によるボランティア活性化政策の展開について。
第13回[対面/face to face]：モジュール⑦統一ドイツにおける参加政策と「市民的参加」 その2
「市民的参加」およばれる統一ドイツにおける各種ボランティア活動の実情を明らかにする。
第14回[対面/face to face]：結論 現代ドイツ市民参加の課題と展望
2016年の難民危機、2020年以降のコロナ危機の対応に、ドイツのボランティア組織はいかに関与しているのか。
授業時間外の学習（準備学習・復習・宿題等）Work to be done outside of class (preparation, etc.)
参考文献を読み、ディスカッションに参加する準備をすること。
また、自分の研究や経験をふまえてディスカッションに参加し貢献することができるよう、準備をすること。本授業の準備学習・復習時間は各2時間を標準とします。
テキスト（教科書）Textbooks
適宜コピーを配布する。
参考書References
辻英史／川越修編著『歴史のなかの社会国家』山川出版社、2016年。
池田浩士『ボランティアとファシズム―自発性と社会貢献の近現代史』人文書院、2019年。
近藤正基『現代ドイツ福祉国家の政治経済学』ミネルヴァ書房、2009年。
坂井晃介『福祉国家の歴史社会学―19世紀ドイツにおける社会・連帯・補完性』勁草書房、2021年。
西田慎／近藤正基編著『現代ドイツ政治』ミネルヴァ書房、2014年。
福澤直樹『ドイツ社会保険史―社会国家の形成と展開』名古屋大学出版会、2012年。
福田直人『ドイツ社会国家における「新自由主義」の諸相——赤緑連立政権による財政・社会政策の再編』明石書店、2021年。
ほか、適宜授業中に指示する。
成績評価の方法と基準Grading criteria
ディスカッションへの参加（40％）、学期末レポート（60％）
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
特になし。
担当教員の専門分野等
＜専門領域＞ 歴史学（ドイツ近現代史）
＜研究テーマ＞ 市民社会の歴史、ドイツ社会国家の歴史
＜主要研究業績＞ 『歴史のなかの社会国家』（川越修と共編著）山川出版社、2016年；『社会国家を生きる』（川越修と共編著）法政大学出版局、2008年。