文学部Faculty of Letters

アメリカの作家の長篇をくわしく読解することを通じて、小説のおもしろさ、解釈をおこなうことのおもしろさを知るとともに、米文学・文化への理解および文学研究の方法論への理解を深めることを目的とする。春学期は、1960年代以降のSF・ファンタジーの新時代を切りひらいたUrsula K. Le Guinの代表作のひとつThe Left Hand of Darkness（1969）を一学期かけて読破する。そのうえで関連するテーマを扱ったSF映画を視聴し、比較して分析する。

・作品の細部に目を配り、正確に意味をとって読解しようとする習慣をつける。
・他者の考えに耳を傾けて理解し、建設的なやり方で応答することができる。
・自分の考えを分かりやすく効果的に伝えることができる。
・自分の解釈を論理的に記述することができる。
・多様な批評の方法についての知識を得て、関心を持つ。
・『闇の左手』について、テクストの具体的なキャラクターや細部に触れながら自分なりに語れるようになる。
・アーシュラ・K・ルグィンの生涯と作品、時代背景、米国SF小説史の概略を学ぶことを通じ、米国の文化と社会についての知識を深める。

ディプロマポリシーのうち、「DP1」「DP2」「DP5」に関連

日本語 / Japanese

受講者は毎週予習として作品を読み、感想・疑問や気になったことをまとめて授業に臨む。予習の段階では適宜翻訳を参照して構わないが、授業内での発表やディスカッションにおいては基本的に英語原書を用いる。授業は演習形式で進め、毎回発表担当者がハンドアウトを作成のうえでプレゼンテーションをおこない、担当コメンテーターによるコメント・質問、そして受講者全員参加によるディスカッションをする。適宜教員による補足説明がおこなわれる。発表担当者は、担当箇所の物語内容を要約したうえで、本文から気になった箇所をいくつか引用して分析し、ディスカッションのためのトピックを提示する。

発表に対しては授業内で口頭によるレスポンスがなされ、レポートに対してはフィードバックのコメントをつけたファイルが返却される。

あり / Yes

なし / No

授業形態/methods of teaching：対面/face to face

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回[対面/face to face]：ガイダンス

顔合わせ・自己紹介のあと、授業の進め方と発表の仕方を説明し、発表の分担を決定する

第2回[対面/face to face]：米国SF小説史概説講義

第二次大戦後の米国社会とSF小説の関わり、およびSF小説史・米文学史におけるルグィン作品の新しさについての概説講義

第3回[対面/face to face]：思考実験としてのSF──可能性を発明し、世界を書き換える

短篇"The Ones Who Walk Away from Omelas"を読んでディスカッション

第4回[対面/face to face]：The Left Hand of Darkness読解①――書き出しの分析、語りの特質

受講者による発表とコメント、全員参加のディスカッション、教員による補足解説

第5回[対面/face to face]：The Left Hand of Darkness読解②――〈ハイニッシュ・ユニバース〉の世界観

受講者による発表とコメント、全員参加のディスカッション、教員による補足解説

第6回[対面/face to face]：The Left Hand of Darkness読解③――語り手の異文化観察、文化人類学的視点

受講者による発表とコメント、全員参加のディスカッション、教員による補足解説

第7回[対面/face to face]：The Left Hand of Darkness読解④――両性具有の社会を描くこと

受講者による発表とコメント、全員参加のディスカッション、教員による補足解説

第8回[対面/face to face]：The Left Hand of Darkness読解⑤――「冬の星」とフロンティア

受講者による発表とコメント、全員参加のディスカッション、教員による補足解説

第9回[対面/face to face]：The Left Hand of Darkness読解⑥――愛の物語

受講者による発表とコメント、全員参加のディスカッション、教員による補足解説

第10回[対面/face to face]：The Left Hand of Darkness読解⑦――結末の分析

受講者による発表とコメント、全員参加のディスカッション、教員による補足解説

第11回[対面/face to face]：関連映像作品の視聴

The Left Hand of Darknessの内容に関連するSF映画作品を視聴する

第12回[対面/face to face]：日本語論文の読解

The Left Hand of Darknessについて書かれた論文を読み、小説を論じる方法について考える

第13回[対面/face to face]：英語論文の読解

The Left Hand of Darknessについて書かれた論文を読み、小説を論じる方法について考える

第14回[対面/face to face]：まとめのワークショップ

受講者が各自のレポートの計画について発表し、それについて討議することを通じて、今学期のまとめをおこなう

発表担当者になっているときはもちろん、そうでないときも、毎回事前に作品を読んで、ディスカッションに積極的に参加できるように準備しておくことが最も重要。読みながら面白かった点、気になった点、質問したい点などについてメモをとっておく（予習4時間以上）。

授業でのディスカッションを通じて自分の興味・関心のありかを見定め、それに関する研究書、論文、関連資料などを自ら調査・収集して読むことも重要。

Ursula K. Le Guin, The Left Hand of Darkness. Penguin Books, 2016. ISBN: 978-0143111597.

【作者と作品の紹介】
諏訪部浩一『薄れゆく境界線　現代アメリカ小説探訪』（講談社、2022年）
「アーシュラ・K・ル＝グウィンの世界──1929-2018」『ユリイカ』2018年5月号（青土社、2018年）

【SF小説史、ジャンル論】
ジャック・サドゥール『現代SFの歴史』鹿島茂・鈴木秀治訳（早川書房、1984年）
パトリック・パリンダー『SF　稼働する白昼夢』大橋洋一訳（勁草書房、1985年）
フレドリック・ジェイムソン『未来の考古学　ユートピアという名の欲望』秦邦生訳（作品社、2011年）
森下一仁『思考する物語　SFの原理・歴史・主題』（東京創元社、2000年）
Hartwell, David G. Age of Wonders: Exploring the World of Science Fiction. Walker & Co., 1985.
Rieder, John. Science Fiction and the Mass Cultural Genre System. Wesleyan UP, 2017.
Vandermeer, Ann, and Jeff Vandermeer, editors. The Big Book of Science Fiction: The Ultimate Collection. Vitage Books, 2016.

【アメリカ文学・文化研究の手引き】
諏訪部浩一（編）『アメリカ文学入門』（三修社、2013年）
杉野健太郎（編）『アメリカ文化入門』（三修社、2010年）
竹内里矢・山本洋平（編）『深まりゆくアメリカ文学――源流と展開』（ミネルヴァ書房、2021年）
巽孝之・宇沢美子（編）『よくわかるアメリカ文化史』（ミネルヴァ書房、2020年）

ほか適宜授業で紹介する。

・授業への貢献度（ちゃんと予習ができているか、討議に積極的に参加しているか）：30％
・プレゼンテーション（担当箇所の内容が正確に把握できているか、引用箇所の分析がよくできているか、討議のための主題を提示できているか）：30％
・4000字程度の期末レポート（自分の解釈を提示し、リサーチにもとづいて、適切な箇所を引用しながらその解釈の妥当性を論証する）：40％

学生の皆さんが発言しやすい環境がつくれるようつとめます。また、クラス全体のディスカッションと教員による補足解説との配分をバランスよくしたいと思います。

秋学期に英米文学演習(5) Bを履修することが望ましい。