文学部Faculty of Letters
PHL400BB(哲学 / Philosophy 400)哲学演習(4)Seminar on Philosophy (4)
酒井 健Takeshi SAKAI
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | 文学部Faculty of Letters |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2023 |
授業コードClass code | A2233 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 年間授業/Yearly |
曜日・時限Day/Period | 金3/Fri.3 |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 市ヶ谷 |
教室名称Classroom name | 市外濠‐S301 |
配当年次Grade | 3~4 |
単位数Credit(s) | 4 |
備考(履修条件等)Notes | |
他学部公開科目Open Program | |
他学部公開(履修条件等)Open Program (Notes) | |
グローバル・オープン科目Global Open Program | |
成績優秀者の他学部科目履修制度対象Interdepartmental class taking system for Academic Achievers | |
成績優秀者の他学部科目履修(履修条件等)Interdepartmental class taking system for Academic Achievers (Notes) | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
SDGsCPSDGs CP | |
アーバンデザインCPUrban Design CP | |
ダイバーシティCPDiversity CP | |
未来教室CPLearning for the Future CP | |
カーボンニュートラルCPCarbon Neutral CP | |
千代田コンソ単位互換提供(他大学向け)Chiyoda Campus Consortium | |
カテゴリーCategory | 哲学科 |
他学科公開科目 | |
クラスGroup | |
昼夜表記Day or Night |
すべて開くShow all
すべて閉じるHide All
Outline (in English)
【Course outline】
The purpose of this course is to learn the fundamental of French contemporary thought.
【Learning Objectives】
Especially at the end of this course, students are expected to a good comprehension of Georges Bataille's thought on war and art. That is mainly by learning of his text.
【Learning activities outside of classroom】
Before each class meeting, students will be expected to have read the relevant chapter from the text. Your study time will be more than four hours for a class.
【Grading Criteria】
Your overall grade in the class will be based on the following.
Presentation in the class meeting:50 % and term-examination :50%.
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
1)哲学と芸術の交わりを大きな課題に掲げる。
2)フランス現代思想の広さと深さを学ぶ。
3)戦争、芸術、共同体、宗教、政治、性愛などアクチュアルな問題とのつながりを学んでいく。とくに今年度は戦争と芸術の関係を学びの対象にする。
到達目標Goal
▶今年度はジョルジュ・バタイユ(1897-1962)の短めのテクストを中心にして、戦争と芸術の関係について哲学的視点から考察を進める。
▶ロシア軍の侵攻によって廃墟と化したウクライナの町にバンクシーが壁画を残したことはよく知られている。住民の反応は、何の役にも立たないという批判から、心の支えになったという賛辞まで様々であったが、この賛否両論にすでにバタイユの考察との接点がうかがえる。たとえば芸術の無益性とアルテラシオン(廃墟の石壁をも絵画のキャンバスに変える芸術表現の特性)、戦争の物質的暴力性と近代的な無の思想などである。
▶バタイユ自身、二つの世界大戦を生きたが、彼がテクストで言及した戦争は西欧史の全幅に及ぶ。古代ローマに始まり中世キリスト教社会、中南米への近世西欧諸国の侵略戦争、近代初期のスペインへのナポレオン軍の侵攻、第一次世界大戦、1930年代のファシズムの台頭、スペイン内戦、そして第二次世界大戦、ヒロシマの悲劇、その後の東西冷戦と核使用の問題等々。
▶バタイユは思索の最初期から最晩年までこれらの戦争を背景に芸術について考察を深めた。この授業では彼のこの考察の跡を追いかける。
▶大きな到達目標として以下の三点をあげておく。
1.人間における理性と非理性の相克の実態を学ぶ=人間の無益な欲望の発露と、これを抑止したり狡猾に活用する理性との矛盾、葛藤、戯れをフランス現代思想の視点から相対化して(どちらかに偏ることなく)捉える。
2.理性の可能性と限界に関して哲学的に考察を進める=「論理的に表現しうるもの」と「しえないもの」の識別を踏まえて、理性の働きの可能性と限界について新たな見方を手に入れる。
3.戦争を通して近代社会における芸術の意義を確認する=近代社会においては単なる娯楽や趣味とみなされがちな芸術作品の制作と享受について、その本来的な意義を戦争の問題系からしっかり認識する。
この授業を履修することで学部等のディプロマポリシーに示されたどの能力を習得することができるか(該当授業科目と学位授与方針に明示された学習成果との関連)Which item of the diploma policy will be obtained by taking this class?
ディプロマポリシーのうち、「DP1」「DP2」「DP3」「DP4」「DP5」に関連
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
1)学生の発表が中心になる。毎回、授業の最後に論述式のリアクションペーパーを書いて提出する。
2)今年度の開校日は4月7日金曜日(3時限)とする。初回はオン・ラインでのズーム授業になる予定。
3)その後の授業は教室での対面授業を予定しているが、社会状況に応じてオン・ラインでのズーム授業に転じる場合もある。
4)今年度から新たな試みとして何回かの授業において、4年生が卒論計画と作成中の原稿を発表して質疑応答の場を設ける。卒論作成の進捗とテーマの共有化をはかるためである。
5)課題等の提出・フィードバックは教室において、あるいは「学習支援システム」を通じて行う予定。また優れた課題回答に対しては授業内で紹介し、さらなる議論に活かす。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
あり / Yes
授業計画Schedule
授業形態/methods of teaching:対面/face to face
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
第1回[オンライン/online]:授業の紹介
この演習の特色について。
戦争と芸術に対するバタイユの考え方について。
過去の優秀卒業論文の紹介。
第2回[対面/face to face]:『ランスの大聖堂』(1918年出版)第1回
バタイユ最初期のテクスト。中世ゴシック大聖堂の建設と都市民の不安、および聖母信仰について。
第3回[対面/face to face]:『ランスの大聖堂』第2回
第1次世界大戦時におけるドイツ軍によるランス大聖堂の破壊とバタイユの廃墟観。
第4回[対面/face to face]:『ランスの大聖堂』第3回
廃墟と芸術の関係について。キリスト教精神と廃墟の問題について。
第5回[対面/face to face]:「消えたアメリカ」(1928)第1回
中南米のコロンブス以前の文明とスペイン人の侵略および現地人の弱さについて。
第6回[対面/face to face]:「消えたアメリカ」第2回
西欧の新大陸発見とモンテーニュの懐疑主義および文化相対主義について。
第7回[対面/face to face]:「アカデミックな馬」(1929)第1回
古代ケルト文明と古代ギリシア・ローマ文明に見る美意識と軍事意識の相違について。
第8回[対面/face to face]:「アカデミックな馬」第2回
1920年代におけるこの論文の意義。現体制の転覆への野心と芸術の本来的な弱さについて。
第9回[対面/face to face]:「サン・スヴェールの黙示録」(1929)第1回
キリスト教の黙示録と中世スペインの終末論について。
第10回[対面/face to face]:「サン・スヴェールの黙示録」第2回
中世ロマネスク時代の写本挿絵と武勲詩に見る恐怖と笑いについて。
第11回[対面/face to face]:「プリミティブ・アート」(1930)第1回
エチオピアのキリスト教会堂の扉に記された子供たちの落書きとアルテラシオンについて。
第12回[対面/face to face]:「プリミティブ・アート」第2回
フロイトの無意識論と彼の晩年のテクスト「人はなぜ戦争をするのか」(1932)をめぐって。
第13回[対面/face to face]:「プロメテウスとしてのファン・ゴッホ」(1938)
巨大な太陽風景画と古代ギリシアのプロメテウス神話について。ナチスドイツによる退廃藝術展について。
第14回[対面/face to face]:前期のまとめと第1回卒論発表会
期末課題の提示と卒論の計画発表会。
第15回[対面/face to face]:第2回卒論発表会
卒論の第1章を開示して、検討しあう。
第16回[対面/face to face]:「ニーチェ時評(1937)第1回
古代ローマ軍によって攻囲されたイベリア・ケルトの町の悲劇を題材にしたセルバンテスの演劇「ヌマンシア」と1930年代後半のスペイン内戦について。
第17回[対面/face to face]:「ニーチェ時評(1937)第2回
実存の悲劇的本質と芸術表現の可能性を問うバタイユの思想。
第18回[対面/face to face]:「ゴヤ」(1948)
異端審問による拷問を素描するゴヤの情念について。
第19回[対面/face to face]:「ゴヤの作品と階級闘争」(1950)
戦争絵画の代表作とされる《1808年5月3日》と晩年の《黒い絵》シリーズについて。
第20回[対面/face to face]:「芸術、残虐の実践としての」(1950)第1回
あえて残虐な光景を描く絵画の実存的な意義について。
第21回[対面/face to face]:「芸術、残虐の実践としての」(1950)第2回
作品と鑑賞者の交わりについて。
第22回[対面/face to face]:「ヒロシマの人々の物語」(1947)第1回
原爆投下を伝える文字表現の違いについて。
第23回[対面/face to face]:「ヒロシマの人々の物語」(1947)第2回
悲劇的な光景を笑うニーチェの脱近代的な笑いとバタイユについて。
第24回[対面/face to face]:第3回卒論発表会
卒論の第2章を開示し、検討しあう。
第25回[対面/face to face]:『宗教の理論』(1948年頃の遺稿)
バタイユの「内奥性」と「自己意識」について。
第26回[対面/face to face]:『呪われた部分』第1巻『全般経済学試論・蕩尽』
世界大戦の回避策としての贈与
第27回[対面/face to face]:「人の住みえぬ地球に?」(1961)
核戦争へのバタイユの危惧。
第28回[対面/face to face]:まとめ
秋学期の復習をかねた課題の呈示。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
1.バタイユの入門書および授業で言及されるテクストを読んでおくこと。
2.課題の優秀回答を毎回公表するので、それを参考にして各自、書き方から思想内容までしっかり確認しておくこと。
3.本授業の準備学習・復習時間は各4時間を標準とする。
テキスト(教科書)Textbooks
上記の授業形態のテーマ欄に紹介した文献の拙訳を教科書とする。授業内においてコピーを配布する予定。
参考書References
1)バタイユ自身のテクストの邦訳
①『ランスの大聖堂』(拙訳、ちくま学芸文庫、2005年)
②『純然たる幸福』(拙訳、ちくま学芸文庫、2009年)
③『ヒロシマの人々の物語』(拙訳、景文館書店、2015年)
④『呪われた部分』第1巻『全般経済学試論・蕩尽』(拙訳、ちくま学芸文庫、2018年)
⑤『ドキュマン』(江澤健一郎訳、河出文庫、2014年)
⑥『無頭人』(兼子正勝・中沢信一・鈴木創士訳、現代思潮社、1999年)
⑦『沈黙の絵画・マネ論』(ゴヤ論所収)(宮川淳訳、二見書房、1972年)
⑧『宗教の理論』(湯浅博雄訳、ちくま学芸文庫、2002年)
2)関連書
①拙著『バタイユ入門』(ちくま新書、1996年)
②拙著『絵画と現代思想』(新書館、2003年)
③拙著『バタイユと芸術ーアルテラシオンの思想』(青土社、2019年)
④拙著『ゴシックとは何かー大聖堂の精神史』(ちくま学芸文庫、2006年)
⑤拙著『ロマネスクとは何かー石とぶどうの精神史』(ちくま学芸文庫、2020年)
⑥モンテーニュ著『エセー』(とくに原本第1巻第10章の「人食い人種について」)(宮下志郎訳、第2巻、白水社、2007年)
⑦アインシュタイン/フロイト著『人はなぜ戦争をするのか』(浅見昇吾訳、講談社学術文庫、2016年)
⑧前田良三著『ナチス絵画の謎ー逆襲するアカデミズムと「大ドイツ美術展」』(みすず書房、2021年)
成績評価の方法と基準Grading criteria
1)上記「到達目標」に記した3つの目標をどれだけ達成しているかに基準をおく。
2)授業での発表(40%)、毎回のレスポンス・ペーパ-(30%)、期末のレポート(30%)によって判定する。
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
卒論制作をゼミに組み込んでほしいとの要望があったので今年度から対応した。
学生が準備すべき機器他Equipment student needs to prepare
とくにない。
その他の重要事項Others
1)特講7-1(木曜日5時限)との関連があるので受講を勧める。
2)ゼミの先達たちのレポートや卒論について紹介されているので、次の拙著を紹介しておく。
『私にとって文学部とは何か』(景文館書店、2021年)
3)バタイユと芸術に関しては近刊の次の拙著も参考にしていただきたい。
『モーツァルトの至高性ー音楽に架かるバタイユの思想』(青土社、2022年)
4)授業には熱心に参加してほしい。やむなく欠席する場合はメールで連絡すること。
5)アクティブラーニングとして春学期と秋学期にそれぞれ1回、休日を利用して美術館見学を予定している。