通信教育部（スクーリング）School of Correspondence Education (Schooling)
LIT100TC（文学 / Literature 100）日本文芸研究特講・近代(春期スクーリング)Special Study of Japanese Literary Arts(Modern)
高口 智史Satoshi KOUGUCHI
授業コードなどClass code etc
| 学部・研究科Faculty/Graduate school | 通信教育部（スクーリング）School of Correspondence Education (Schooling) |
| 添付ファイル名Attached documents | |
| 年度Year | 2022 |
| 授業コードClass code | 14007 |
| 旧授業コードPrevious Class code | |
| 旧科目名Previous Class title | |
| 担当教員（自由記述）Instructor name | |
| 科目種別Class Type | |
| 教室名称Classroom name | 各学部・研究科等の時間割等で確認 |
| 配当年次Grade | |
| 単位数Credit(s) | 2 |
| 備考（履修条件等）Notes | |
| 実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
| カテゴリーCategory | 春期 |
| 期間Period | 春期 |
| 定員Capacity | |
| 予備登録の有無Presence or Absence of Preliminary Registration | |
| 受講可能な学科・学年Eligible Courses / Grade | 『法政通信』受講手続き等関連頁を参照 |
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Outline (in English)
Course Outline: Consideration of Human Rights in Modern Literature When we read modern literature, we find that the human problems depicted in the works are very similar to those in Japan today. The similarity is that those who deviate from the goal of a competitive society to achieve social success, or those who cannot keep up with society, do not know what to do to support themselves or how to live if they are abandoned by society. It can be said that it was modern literature that challenged the cruel modern view of human beings that such socially useless people have no value, and constantly questioned the issue of human rights, which is a universal value of human beings. In this class, we consider representative writers of modern literature, such as Higuchi Ichiyō, Natsume Sōseki, Mori Õgai, Shiga Naoya, and Akutagawa Ryūnosuke, from this point of view.
Learning Objectives: The goals of this course are to understand the critical nature of literature, to learn about the historical significance of modern literature, and to learn about the basics of textual analysis.
Learning Activities Outside of the Classroom: Students will be expected to read the works to be covered in the class well in advance. (Read them at least twice.)
Grading Criteria/Policy: Grading will be based on what you write in reaction papers for each lecture (50%), and an end-of-semester examination, in which you will be asked about what you learned in class (50%).
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的（何を学ぶか）Outline and objectives
近代文学に於ける人権の考察
近代文学を読んでいると、現在の日本と非常によく似ている点があると思う。現代も明治大正時代も激しい競争社会だ。学校教育はもちろんだし、テレビやインターネットをはじめとしたメディアには、競争に勝ち抜いて社会的成功を収めた人、その結果人々の注目を集め賞賛を勝ち獲った人々であふれている。しかしそういう人々からだけこの社会が成立しているのではないことはみんなわかっている。しかしそういう競争社会から脱落した人、ついていけない人、もともと競争の外側にいる人など、所謂「勝ち組」の人生から見放された場合、何によって自分を支え、どう生きていったらいいのか、その答えは用意されていない。自分を語る言葉を失ったまま生きるしかない。
そういう意味で私たちが生きる日本社会はあまりにも〈個〉であることを軽んじてきたように思う。もちろん戦後憲法の基礎は一人ひとりの個人だ。しかし戦後民主主義が風化してしまった後、一人ひとりに内面化されず、法（個人の法的権利）よりも〈同調圧力〉といった実体のないグロテスクな権力が日本社会を支配していることは、このコロナ下で私たちが痛切に経験していることだ。みなが同じでなければならないし、この社会に役立たなければいけないし、「同じ」であることを拒むと居場所を失ってしまう。
この点では「立身出世」「良妻賢母」という生き方を国民に強制し、社会的に役に立たない人間や社会に順応できない人間には価値がない、と評価していたのは近代日本も同じだ。このような近代の残酷な人間観に対して、人間の普遍的な価値――人権の問題についてたえず問いかけてきたのが日本の近代文学だったと思う。
今回の授業では、「立身出世」「良妻賢母」といった規範を拒否した人間達が、〈個〉としての自己の存在理由について問いかけた作品を読んでいきたい。〈私〉の存在理由はどこにあるのか、なにが存在理由を生み出すのか、このような非常にラディカルな問題を、森鷗外、樋口一葉、志賀直哉、芥川龍之介らの作品の中に考えていきたい。とくに授業のまとめとして、最後に夏目漱石の「こころ」の「下」を通して夏目漱石が人権の問題をどのように考えたのか、その文学的達成について明らかにしていきたい。
もちろん文学の授業なので、一つひとつの作品を丁寧に読むことをしっかり行いたい。取り上げる作品は中学や高校で学んだものも多い。〈読み〉という読み手の主体的な働きかけによって作品像と同時に作家像も大きく転換する。読み手の意識に都合のいい部分を抜き出して作品を語るのではなく、〈読み〉を通して作品そのものに深い批評性があることを理解してもらいたい。
到達目標Goal
① 文学の批評性を理解する。
② 近代文学の歴史的意義について学ぶ。
③ 〈読み〉――テクスト分析の基本を学ぶ。
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)（学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. ）
主に講義形式で行う。
①授業で扱うテクストは一週間前に配布。
②感想・意見はリアクションペーパーに書いてもらい、授業冒頭で発表する。
④授業は、ａ）テクストの基本構造をおさえる、ｂ）テクストの批評性について考察する、c)作者の文学史的意義について考察する、という手順ですすめる。
アクティブラーニング（グループディスカッション、ディベート等）の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
なし / No
フィールドワーク（学外での実習等）の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
授業形態/methods of teaching：対面/face to face
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
第1回[対面/face to face]：ガイダンス―なぜ「近代文学に於ける人権論の考察」なのか―北村透谷「漫罵」を通して考える
・授業のテーマについての主旨説明
・授業の進め方、評価についての説明
第2回[対面/face to face]：志賀直哉「城の崎にて」第１回 作品構造について
・「城の崎にて」を読む―「范の犯罪」をプレテクストとして
第3回[対面/face to face]：志賀直哉「城の崎にて」第２回 批評と評価
・「城の崎にて」の存在論と日本近代（「城の崎にて」のポストモダニズム）
・志賀直哉の文学史的意義を再考する
第4回[対面/face to face]：芥川龍之介「奉教人の死」第１回
・「奉教人の死」を読む
―その方法の実験を中心に
第5回[対面/face to face]：芥川龍之介「奉教人の死」第２回
・「奉教人の死」の存在論と他の芥川作品との関連について
・芥川龍之介の文学史的意義を再考する
第6回[対面/face to face]：森鷗外「高瀬舟」第１回
・「高瀬舟」を読む―「高瀬舟縁起」の眼鏡を外す
第7回[対面/face to face]：森鷗外「高瀬舟」第２回
・「高瀬舟」の存在論と他者の問題
・森鴎外の文学史的意義を再考する
第8回[対面/face to face]：樋口一葉「十三夜」第１回
・「十三夜」を読む―ラディカルな近代小説としての一葉文学
第9回[対面/face to face]：樋口一葉「十三夜」第２回
・「十三夜」の存在論―日本近代のジェンダー問題再考
・樋口一葉の文学史的意義を再考する
第10回[対面/face to face]：夏目漱石「こころ」下 第１回
・なぜ夏目漱石「こころ」、そして「下」なのか
・「こころ」全体の枠組みを押さえる
第11回[対面/face to face]：夏目漱石「こころ」下第２回
・「Ｋ」の物語を読む
・複雑な語りの構造を押さえる
第12回[対面/face to face]：夏目漱石「こころ」第３回
・語り手「私」＝「先生」の物語を読む
・明治の精神に殉ずるという欺瞞について
第13回[対面/face to face]：夏目漱石「こころ」第４回
・まとめ―なぜ「こころ」なのか、漱石の他作品との関係から漱石の近代日本の思想上の達成を考える
・夏目漱石の文学意義意義を」再考する
第14回[対面/face to face]：テスト
・授業の理解度を確認する
・終了後問題についての解説を行う
授業時間外の学習（準備学習・復習・宿題等）Work to be done outside of class (preparation, etc.)
予習
・授業で扱う作品を事前にしっかり読みこんでほしい。（二回以上は読むこと）
復習
・授業のノートを参照しながらもう一度作品を読みなおしてみる。
テキスト（教科書）Textbooks
すべて授業で扱うテキストは学習支援システムを通して事前に配布する。（ただし「こころ」もテキストは同様に配信するが、各自本を購入し全文を読んでおいてほしい。
参考書References
・西郷信綱『古事記の世界』（岩波新書）文学作品をどう読めばよいのかということについて貴重なヒントを与えてくれる。難解だが専門領域を超えて文学研究者が読まれなければならない必読書。
・内田樹『映画の構造分析』（文春文庫）なぜテクスト論なのか、映画を対象にテクスト分析の実際をわかりやすく論じている。
成績評価の方法と基準Grading criteria
① 平常点（50 ％）（特にリアクションペーパーでの発言を重視する）
② 試験（50 ％）学期末に行う。授業で学んだ内容について問う。
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
読みの方法論を教えてほしいという要望をよく耳にしました。今年度は方法論を意識した授業を心がけたいと思っています。また講義形式とはいえ、リアクションペーパーなどを通し、できるだけ一方通行的な授業にならないよう心がけたい。