教職・資格（多摩）Teacher-Training Courses and Qualification Courses (Tama)

博物館は奥の深い世界です。学芸員のスタンスとして博物館活動の花形である企画展実施過程の手法を学んでいきます。日本の博物館ではコレクションの関係や館規模、組織等の問題から、集客性に重点を置いた企画展を重視する傾向があります。これは世界的にみても特異な現象ですが、企画展は学芸員を志す者にとって最も興味深い分野ですので、学生各人の企画力やグループ討議を通じて企画展実施のノウハウを学びながら、博物館の裏方を支える学芸員の世界をのぞいてみましょう。

日本の博物館活動では企画展あるいは特別展と呼ばれる集客性を重視した企画が必要とされます。そのため学芸員も企画展を前提に活動をすることが求められています。企画展を実施するには、多様な価値観や専門性に加え基本となる企画展実施の工程・過程を学ぶ必要があり、この授業では1年間を通じて企画展実施までの様々な手法やその時々の流行を捉え、博物館現場の実際をシミュレーションして学んでいきます。博物館学という基礎能力の構築と同時に豊かな企画展創造への個々人のスタイルと発想力を引き出していきます。個⼈の企画⼒に加え、グループワークとしての企画展を構想・発表し企画展実施計画への到達点を確認します。

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授業内容は、前期と後期とを通じて①博物館展示の意義、②企画展実施の工程と手順、③学生個々人の企画展案発表、④グループ企画展発表とし、適宜配布資料により授業を進めていきます。前期は主として講義形式ですが博物館の展示状況をスライドで紹介し、後期は各人の企画展発表やグループ発表準備にあてます。企画力を高め、大規模展で主流となりつつあるプロジェクト体制をグループワークを通じて模擬体験します。発表はパワーポイントとなります。レポート課題を随時課していきます。

あり / Yes

なし / No

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：ガイダンス　博物館展示と学芸員の世界観

授業の狙いや課題提示について説明します。学芸員の心得や実情を紹介します。

第2回：博物館展示の時代的、地域的変遷推移と日本と海外の企画展の違いについてについて

博物館の始まりと展示の種類・手法について、特に常設展と企画展との違いを比較検証しつつ、海外と日本の学芸員のスタイルについて紹介します。

第3回：企画展プロセス①－企画展を考える種の探し方とは？

企画展実施までの工程手順―その1－展示のための素材探し、種‐ヒントの探し方を考える。

第4回：企画展プロセス②－話題となった企画展を分析してみること

企画展実施までの工程手順―その２－成功した企画展例を基に、自分なりにシュミレーションしてみる。

第5回：スライド（海外博物館の展示状況）

欧米博物館・美術館の展示状況をスライドで解説します。

第6回：展示構想と企画書　企画展を構想する①

展示構想の内容と要点について説明し、企画書に盛り込む内容を整理する。課題として企画書を作成準備する。

第7回：展示設営（展示レイアウト－展示導線と照明計画

展示レイアウト－展示導線と照明計画について説明する。パワポ資料提示。

第8回：レポート課題

前回までの展示の進め方を参考に自分が取り組んでみたい企画展を構想し提出してください。

第9回：展示解説パネル、キャプション作成や効果的な演出力について

学芸員が存在する理由の一つは解説者、説明者であり、また作文者であること。ライターとしての学芸員像を提示する。

第10回：展示小道具とサイン計画

常備すべき展示小道具や新たに発注する小道具について考える。またサイン作成も重要。

第11回：展示図録・パンフレット等の作成手順及び情報端末導入について

展示図録・パンフレット等の作成手順。大規模展示では音声ガイド等の様々な情報媒体が導入されている。その取り組み方を考える。

第12回：借用交渉と調書

学芸員の力量は資料を見る目と同時に、借用交渉の態度にも表れる。資料をみて調書を作成する。

第13回：企画展発表Ⅰ①

各回10名程度に分け、パワポ5枚程度を作成し発表する。

第14回：企画展発表Ⅰ②

パワポ5枚程度を作成し発表する。発表終了後、後期の発表課題について事前説明を行う。

第15回：資料目録の作成手順と資料保存修復の仕方について

展示の第一歩は出展目録の作成にある。展示資料の1次候補から2次候補への絞り込みを、エクセルデータ等の目録作成から始め、また、展示を実施する際の資料の修復等について説明する。

第16回：企画展を構想する②

前期発表を肉付けした企画展の構想について説明する。

第17回：企画展発表前事前相談

各人の取り組みについて相談し、課題を克服する。

第18回：企画展発表Ⅱ－①

各回7名程度に分け、パワポ15枚程度を作成し発表する。

第19回：企画展発表Ⅱ－②

パワポ15枚程度を作成し発表する。

第20回：企画展発表Ⅱ－③

パワポ15枚程度を作成し発表する。

第21回：グループ企画展実施① グループ紹介と自己の主張について

5人前後でグループ編成し討議を行う。発表内容の絞り込みを行う。

第22回：グループ企画展実施②　グループ企画展から発表題を絞り込む

相互に企画展を紹介することで、グループ発表案を決定し、内容構成を整理する。

第23回：グループ企画展実施③　展示企画の具体像の作文化

発表企画展の内容、特に出品目録や目玉展示を考える。

第24回：グループ企画展実施④　教育普及と観覧者の希望する展示とは何かを考える

企画展における教育普及のあり方を考え、更に集客方法や展示の仕方と広がりを考える。

第25回：グループ企画展実施⑤　ミュージアムグッズについて

博物館の魅力の一つとしてグッズがある。独自のグッズを考えてみよう。

第26回：グループ企画展実施⑥　最終発表に向けた調整を行う

最終発表案の詰めや発表時間を調整する。パワポ内容やレジュメ原稿を整理する。

第27回：発表　グループ数が多い場合は、発表順を決め2回に分けて実施する場合がある

各グループが15分程度で発表する。パワーポイントやペーパーを用いて発表する。1年間の成果を問う。

第28回：発表評価と企画展の将来的展望について（まとめ）

発表案について評価すると共に、日本の企画展の将来像や展示評価について説明する。

本授業の準備学習・復習時間は、合わせて1時間を標準とします。企画展発表のためにはいろいろな展示会への見学参加を希望します。レポート課題を最低3回程度課します。最新の展⽰状況を俯瞰し⾃分の企画展発表のシーズ（種）を探してください。

特に指定はしませんが、展示論に関する本には目を通してください。テキストは随時授業時に配布します。

特別展図録や展示論関係本を参考図書として推薦します。

出席7割以上確認の上、成績を課題発表等から評価する。学生自身のオリジナリテイを評価したいと考えています。積極的な発言者を評価する共に、⾃由⾃在な発想⼒を評価します。後期に⾏われるグループ発表に⽋席した場合には成績を評価しないこともあります。前期の出席や評価については適宜課題等を通じて確認していきます。

机上討議なので、企画展本来の面白さをどれだけ伝えられるか心配ですが、このスタイルの授業はそれなりに学生からも評価されていると考えています。後期のグループワークは総じて楽しいとの評価がある一方で、仲間を形成できない学生の姿を時々散見しますので、授業に問題があった場合は遠慮なく声をかけて欲しいです。

グループ討議では㍶を用意していただきます。個⼈⽤に加え、必要があれば貸し出し⽤も⽤意します。情報共有として㍶を活⽤してほしいですが、最近ではスマートフォンでやり取りするケースも多く、実際その使用を認めています。

特にありません。