人間環境学部Faculty of Sustainabillity Studies

1994年に「人間の安全保障」という概念が提唱されてから、およそ25年が経過しました。この間同概念を基盤として、国際社会では多様な試みがなされてきました。安全保障の焦点を従来の国家安全保障から個人の人権や生命、そして生活に当てる試みが生まれたことで、何が達成され、また課題として残されているのか。本講義では、この「人間の安全保障」について関連学問分野に体系的に学習します。

安全保障概念の変遷、人間の安全保障に対する国際機関・国家・NGOの政策、人間の安全保障という概念を基軸として見つめ直される諸課題について理解します。特に諸課題の現状を冷静に把握し、これを解決する手段として国際社会がどのような方策を立ててきたのかを学習します。これによって、越境的に生じる政治経済社会問題を学生自身が主体的に考察し、当事者の視点を踏まえて議論できるようにします。

ディプロマポリシーのうち、「DP3」に関連

日本語 / Japanese

授業は、講義形式を採ります。オンデマンド配信形式による講義となりますが、教材は毎回アップロードされます。
また毎回、簡単なリアクションペーパーを課します。リアクションペーパに書いて頂いた内容は次回の講義においてコメントします。課題提出後の授業、または学習支援システムにおいて、提出された課題からいくつかポイントを取り上げ、全体に対してフィードバックを行います。大学の行動方針レベルの変更に応じた授業形態の詳細は学習支援システムでお知らせします。

あり / Yes

なし / No

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：イントロダクション：人間の安全保障とは何か

「人間の安全保障」の概念が成立した経緯、その意義、他の学問領域との関連を概説する。

第2回：安全保障の歴史と概念の変容

従来、安全保障は伝統的に国家同士の戦争から国家の主権をいかに守るかという国家安全保障を想定してきた。しかしその後、安全保障の対象は多様化する。その多様化の歴史的経緯を理解する。

第3回：現代世界における人間の安全保障

1990年代以降に確立された「人間の安全保障」概念が誕生してから25年が経過しようとする今、どのような成果を残し、課題を抱えているのかを理解する。

第4回：崩壊国家と内戦の様相

人間の安全保障の重要性が最も顕わになるのは、国家が国民の安全を保障できない、崩壊国家や内戦の場合である。ここでは、冷戦終結後に生じた内戦や脆弱な国家の出現とその原因を理解する。

第5回：人間の安全保障と国際法

人間の安全保障の概念は国際法の発展にも寄与してきた。特に国家主権や人道的介入、平和に対する権利など、従来の概念に対する影響を看過することはできない。ここでは人間の安全保障と既存の国際法の関係を理解する。

第6回：国際機関と人間の安全保障

人間の安全保障を推進する主体として、国際連合をはじめとする国際機関の活動は重要な論点である。特に国際連合が果たしてきた成果とその限界について理解する。

第7回：国際社会・NGOと人間の安全保障

国際社会を構成する日本以外の諸外国とNGOが人間の安全保障という概念に基づきいかに活動してきたか、理解する。

第8回：日本と人間の安全保障

1990年代後半以降、人間の安全保障は日本外交の柱の一つとなってきた。この回では、人間の安全保障に対する国際社会への日本政府の取り組みを概説する。

第9回：貧困と開発援助の諸相

人間らしく生きるためには、暮らしの安定性と持続性が必要である。しかしながら、主に途上国で深刻な貧困状態が継続し、人間の安全保障に対する脅威の一つになっている。今回は、貧困の実態と開発援助の諸相を考える。

第10回：テロリズムと人間の安全保障

現代国際社会で人間の安全保障に対する著しい脅威として、世界各地で生ずるテロリズムがある。この回では、越境的に生じるテロの問題を理解し、国際社会の取り組みを考える。

第11回：難民・国内避難民問題part1

世界各地には紛争や内戦によって移動を余儀なくされた避難民が多く存在する。この回では難民の発生要因、難民キャンプでの生活、解決策について考える。

第12回：難民・国内避難民問題part2

2015年に発生した欧州難民危機では地中海やバルカン半島を経由して多くの避難民が欧州地域に押し寄せた。大量の避難民を前にEUはいかに対処したか。各構成国の反応も踏まえつつ概説する。

第13回：人間の安全保障の日本的文脈

日本で発生する自然災害や避難所で生じる問題も重要な人間の安全保障である。この回では日本で生じる脅威について検討する。

第14回：講義の振り返りとまとめ

第13回までの講義内容と議論をまとめながら、人間の安全保障に関する今後の展望を考える。

毎回の講義で紹介される資料等を使用して必ず予習・復習をすること。
「人間の安全保障」という概念は聞きなれないかもしれませんが、関連する諸課題は講義で説明するように我々の身近にあります。積極的に新聞やニュースに触れ、主体的な授業参加を奨励します。また適宜英語資料を用います。本授業の準備学習・復習時間は、各2時間を標準とします。

特に指定しません。講義の際に、毎回資料を配布します。
講義前に読んで頂く資料がある場合には授業支援システムを活用します。

東大作編著(2017)『人間の安全保障と平和構築』2017年　日本評論社
高橋哲哉・山影進編(2008)『人間の安全保障』2008年　東京大学出版会　
長有紀枝(2012)『入門　人間の安全保障 -恐怖と欠乏からの自由を求めて-』中公新書

期末試験(40%)、小レポート(40%)、出席およびリアクションペーパー(20%)。

昨年度の受講者から、講義の最後にリアクションペーパーを書くことによって理解が深まったとの意見を頂きました。自分で学習した知識をアウトプットするのは重要な学習方法ですので、積極的に記述を行ってください。また講義中に近年の研究動向を理解するために論文講読を行います。積極的に読み解いてください。

講義ではスライドを利用します。講義までに読んでくる関連資料は、授業支援システムに掲載します。

特になし。

履修の手引き「D.6 専門科目一覧・コース関連科目表」を参照してください。

本科目は、「実務経験のある教員による授業」に該当しません。