人間環境学部Faculty of Sustainabillity Studies

安住の地を求めて移動する難民、混迷を極める内戦、頻発するテロ事件、そして感染症の世界的流行などのニュースに私たちは日常的に触れています。越境的に生じるこれらの諸問題を解決するには、事象の正確な把握とその分析が不可欠です。本講義においては、平和学がこれまでに積み重ねてきた知に触れ、これらの問題に対するアプローチを探ります。これによって国際社会に生じる問題に主体的に取り組む姿勢を身につけます。

第1に、平和学の誕生から現在までの変遷、その特徴、他学問領域との関連、そして平和学における諸論点を横断的に理解します。また平和を希求する試みは、国際関係論とも強い親和性があるため、国際社会を構成する各主体（アクター）の特徴と関係性について理解します。第2に、それらの知識を活用して、紛争、平和構築、難民、多文化共生社会、といった具体的な課題に取り組む主体と手法の多様性を主体的に考察できるようにします。最終的に各受講者が世界の諸問題について自身で学びを深めていける能力を養成します。

ディプロマポリシーのうち、「DP2」に関連

日本語 / Japanese

授業は、講義形式を採ります。オンデマンド配信形式による講義となりますが、教材は毎回アップロードされます。
また毎回、簡単なリアクションペーパーを課します。リアクションペーパに書いて頂いた内容は次回の講義においてコメントします。課題提出後の授業、または学習支援システムにおいて、提出された課題からいくつかポイントを取り上げ、全体に対してフィードバックを行います。大学の行動方針レベルの変更に応じた授業形態の詳細は学習支援システムでお知らせします。

あり / Yes

なし / No

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：イントロダクション：　平和学とは何か

平和学誕生の背景、その特徴、現代社会における役割と課題を概説する。特に「平和」とはどのような状態を指すのか、平和学が対象とする課題はなにかを理解する。

第2回：紛争と平和研究(1)

主権国家体制の成立から現代にいたるまでの暴力発生様態の変容を理解する。従来、暴力の主な発生要因といえば国家間の戦争であったが、現代はより要因が多様化している点を理解する。

第3回：紛争と平和研究(2)

崩壊国家と内戦の様相を植民地主義の歴史と各地域の事例を踏まえて概説する。

第4回：人道支援・人道的介入・平和構築(1)

国家の崩壊や諸々の内戦に対して国際社会が用いてきたアプローチを理解し、具体的な事例からその問題点と展望を理解する。第4回は人道支援・人道的介入を考える。

第5回：人道支援・人道的介入・平和構築(2)

内戦の終結した国にとって次なる課題は平和状態をいかに構築し、維持するかということである。第5回は国家建設をはじめとする平和構築のアプローチを考える。

第6回：国連と平和

国際平和を希求する目的をもって誕生した国連の平和に関する取り組みと現代的課題を理解する。

第7回：市民・NGOと平和

従来より平和研究における主要なアクターとして市民やNGO活動の重要性が指摘されてきた。国境を越えた彼らの連帯と国際平和への関りについて理解する。

第8回：地域共同体と平和

国際社会を形成するアクターとして地域共同体の役割と性質を理解する。特にアフリカ連合(AU)や欧州連合(EU)、ASEANを取り上げ近隣の紛争や難民危機についていかに対処してきたかを理解する。

第9回：差別・排除の克服と平和

世界では社会の分断をあおるような差別や排除が日々行われ、時に深刻な暴力的状況を生み出されている。ここでは差別・排除の生じる要因を理解し、解決への取り組みを考える。

第10回：グローバルな経済格差と開発援助

戦争の不在だけでは平和とは言えない。ここでは発展途上国と先進国の間にある経済格差に注目し、「積極的平和」などの概念も踏まえ、現在の課題と国際社会のアプローチを理解する。

第11回：人の移動と平和研究(1)

現代社会において、人の移動は重要なトピックとなっている。ここでは特に世界各地で生じる難民問題について、難民発生のメカニズムを理解し、日本そして国際社会がいかに難民問題に対応してきたかを理解する。

第12回：人の移動と平和研究(2)

難民に限らず、世界には多様な理由で越境を行う人々がいる。日本でいえば技能実習生の問題など、脆弱性を持つ移動する人々の権利保障に焦点をあてる。

第13回：平和研究の日本的文脈(1)

核軍縮や日米安全保障条約の変容を理解し、日本を取り巻く国際社会の様相について考察する。

第14回：平和研究の日本的文脈(2)

日本国憲法の平和主義や戦後賠償問題を巡る学術界の議論を踏まえ、主体的に日本に関わる問題の理解を深める。

毎回の講義で紹介される資料等を使用して予習・復習を適宜すること。また本講義で取り上げる国際社会における諸課題には、普段のニュースや他講義でも触れることがあると思います。主体的な取り組みのためにも、アンテナを張って積極的に知識を吸収してください。本授業の準備学習・復習時間は、各2時間を標準とします。

特に指定しません。講義の際に、毎回資料を配布します。
事前に読んで欲しい資料は授業支援システムに掲載します。

日本平和学会編(2018)『平和をめぐる14の論点　－平和研究が問い続けること－』法律文化社
児玉克哉・佐藤安信・中西久枝(2004)『初めて出会う平和学　－未来はここからはじまる－』有斐閣アルマ
長有紀枝(2012)『入門　人間の安全保障　－恐怖と欠乏からの自由を求めて－』中公新書

期末試験(50%)と小レポート(30%)および出席・リアクションペーパー(20%)による。

昨年度の受講者から、講義の最後にリアクションペーパーを書くことによって理解が深まったとの意見を頂きました。自分で学習した知識をアウトプットするのは重要な学習方法ですので、積極的に記述を行ってください。また講義中に近年の研究動向を理解するために論文講読を行います。積極的に読み解いてください。

講義ではスライドを利用します。関連資料は、授業支援システムに掲載します。

履修の手引き「D.6 専門科目一覧・コース関連科目表」を参照してください。

本科目は、「実務経験のある教員による授業」に該当しません。