国際文化研究科Graduate School of Intercultural Communications
ART500G1-112(芸術学 / Art studies 500)多文化芸術論ⅠMulticultural Perspectives on Art and Media Ⅰ
映画を読む
佐藤 千登勢Chitose SATO
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | 国際文化研究科Graduate School of Intercultural Communications |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2021 |
授業コードClass code | X2011 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 春学期授業/Spring |
曜日・時限Day/Period | 金3/Fri.3 |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 市ヶ谷 |
教室名称Classroom name | |
配当年次Grade | |
単位数Credit(s) | 2 |
備考(履修条件等)Notes | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience |
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Outline (in English)
We consider artistic texts not only as a place for experiencing aesthetic pleasures but also as a device of social criticism, and discuss the polysemy and multiplicity of their expressions and representations.
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
この授業では、芸術テクストを審美的快楽の体験の場としてのみならず、社会批判の装置として捉え直し、その表現、表象の語る多義性と重層性について考え、議論します。ロシア(ソ連)、チェコ(チェコスロバキア)、ポーランドの文学作品や映画を用いながら、それぞれの国々の社会、経済、文化、歴史、国家間の勢力均衡を解読する作業を通して、多義的記号体系を分析・洞察する力を養います。
到達目標Goal
映画作品を中心に、芸術言語が担う審美的機能と社会批判の機能という一見相反する多義的な表現の読解を重ねることで、これを自身の見解や思考の組み立て方に役立てて、論理的に議論やプレゼンテーションを展開する力を獲得することが目標となります。
この授業を履修することで学部等のディプロマポリシーに示されたどの能力を習得することができるか(該当授業科目と学位授与方針に明示された学習成果との関連)Which item of the diploma policy will be obtained by taking this class?
ディプロマポリシーのうち,「DP2」と「DP4」の達成のために特に重要であり,「DP1」の達成のために重要である。また,「DP3」の達成のために望ましい。
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
旧社会主義国家で創造された芸術テクストは、その国の文化や社会構造、イデオロギー、歴史的背景、国家間の関係を濃厚に映し出す、いわば、体制と人間社会の縮図モデルです。しかし、多義的で重層的な言語(映画言語、音楽言語を含む)により、それは、多様な解釈を許容するとともに、作者の真の意図やメッセージを解読すべき錯綜した迷宮のような作品となっていることも少なくありません。私たちは、手法や表象、形式といった審美的観点に着目すると同時に、《抑圧》《イデオロギーによる民族統合》《民族差別》《冷戦》《ソ連邦崩壊と離散》《ナショナリズム》といった社会学的・歴史的キーワードを基に、二重構造の芸術テクストを分析・批評していきます。授業でなされた議論や自身の見解をA4一枚程度にまとめたリアクションペーパーを毎回、提出してもらいます。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
春学期
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
第1回:芸術の機能について−−シクロフスキーの《異化》の発見から日常批判へ
ロシア・フォルマリズム宣言としても名高いシクロフスキーの『手法としての芸術』を基に、「異化−自動化」「日常−非日常」「手法ー素材」等の二項対立の芸術上の、また日常における意義を考える。
第2回:芸術の機能について−−シクロフスキーの《異化》の発見から日常批判へ(2)
ロシア・フォルマリズムの主導者シクロフスキーが提唱した「異化」の概念について具体例を確認しつつ、理解を深める。
第3回:煽動と挑発−−モンタージュ派(エイゼンシテイン、ヴェルトフ)の映画(1)
エイゼンシテイン『ストライキ』、『戦艦ポチョムキン』、『十月』の煽動的なモンタージュについて概説。
第4回:煽動と挑発−−モンタージュ派(エイゼンシテイン、ヴェルトフ)の映画(2)
ヴェルトフの都市化と複製技術の発達を背景とした手法としてのモンタージュの差異を検討する。
第5回:プロパガンダ−−プドフキンの映画言語『アジアの嵐』
プドフキン『アジアの嵐』における多様なモンタージュを分析して審美的側面を確認しながら、同時にこの作品が呈示する多民族併合や社会主義革命の正当化という多層的テーマを読み解く。
第6回:プロパガンダ−−トゥーリンの映画言語『トゥルクシブ』
プロパガンダ的煽動性の記号や表象を現前化させずに、宗教的煽動とも言える超越的力の存在と崇高さの創出、サブリミナル的手法によるプロパガンダの力を分析していく。
第7回:面従腹背の二重構造−−エイゼンシテイン『イワン雷帝』
エイゼンシテインの世界的影響力を配下におくためにスターリンが制作依頼した『イワン雷帝』。この作品にはスターリンを批判・揶揄する記号や表象、表現が構造化されている。作品をめぐってのスターリンとエイゼンシテインとの闘争という背景も交えつつ、概説。
第8回:面従腹背の二重構造−−アンジェイ・ワイダの映画言語(1)
旧ソ連の衛星国であった時代、当局の批判やソ連軍の糾弾は映画界でも不可能であった。そこで、ワイダがポーランド国民に向けたメッセージの二重構造とはいかなるものだったか、本人のインタヴュー映像も交えて確認すると同時に、映画テクストにおける表象や象徴の解釈の多様性、ならびに共通のコードについて考える。
第9回:面従腹背の二重構造−−アンジェイ・ワイダの映画言語(2)
旧ソ連の衛星国であった時代、当局の批判やソ連軍の糾弾は映画界でも不可能であった。そこで、ワイダがポーランド国民に向けたメッセージの二重構造とはいかなるものだったか、本人のインタヴュー映像も交えて確認すると同時に、映画テクストにおける表象や象徴の解釈の多様性、ならびに共通のコードについて考える。
第10回:審美的《イソップ言語》−−タルコフスキー『鏡』
幼年時代の回想的要素とドキュメンタリー映像が印象的な『鏡』。だが、幼年期の断片的回想にはスターリン時代の粛清のエピソードがさまざまな様式で重ねられている。象徴性や映画言語の二重性に着目しつつ、《父性の喪失》についても考えていく。
第11回:抵抗と挑発−−ヴェラ・ヒティロヴァの映画言語
旧チェコスロバキアの統制から自由になろうとする国民の意志を、二人の自由闊達な姉妹を通してユーモラスにお洒落に描出するセンスと、映画言語の二重性、台詞と映像の不一致や台詞の重みについて考察。
第12回:寓話的諷刺と不条理−−シャフナザーロフ『ゼロ・シティ』
旧ソ連という国家のしくみ自体をパロディ化した不条理作品の秀作『ゼロ・シティ』を基に、ソ連崩壊後の映画言語の変容に着目する。
第13回:寓話的諷刺不条理−−アブラーゼ『懺悔』
ソ連邦崩壊後、ロシアの映画言語は寓話性を獲得する。スターリンとヒトラーを融合させたような支配者、彼に両親を粛清された少女と、支配者の一族のその後の経緯は、史実とシュールな感覚やユーモアを交えて表現される。その寓話的表象に着目しつつ、史実、記憶、不条理について考察していく。
第14回:国家と個人−−パーヴェル・チュフライ『パパって何?』
ソ連崩壊後のロシア国民のメンタリティを、《父親》に裏切られた義理の息子のある一家族のストーリーに重ね合わせた寓話的手法とその重みについて検討しつつ、《父殺し》の伝統についても考察。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
レジュメの内容や視聴した映像資料に対する自身の見解等をA4一枚程度にまとめたリアクションペーパーを次週回に毎回提出する(学習支援システムを利用)。リアクションペーパー作成に要する時間は1時間程度。
テキスト(教科書)Textbooks
教科書は使用しません。教員の作成した資料を学習支援システムを通して配付します。
参考書References
折にふれて、学習支援システムに挙げます。
成績評価の方法と基準Grading criteria
平常点(50%)、リアクションペーパー(50%)として総合的に判断します。本授業の到達目標の60%以上を達成した学生を合格とします。
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
とくにありませんでした。
学生が準備すべき機器他Equipment student needs to prepare
学習支援システムを通して資料配付、課題提示を行うことがありますので、ネットの通信環境を整えておいてください。
担当教員の専門分野等
20世紀ロシア文学。ロシア・フォルマリズムを中心とした芸術理論。ソ連およびロシアの映画。
http://kenkyu-web.i.hosei.ac.jp/Profiles/23/0002283/profile.html