経営学研究科Graduate School of Business Administration
MAN500F1-0071(経営学 / Management 500)労働市場論Industry,Society and Labor Markets
藤本 真Makoto FUJIMOTO
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | 経営学研究科Graduate School of Business Administration |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2021 |
授業コードClass code | X7166 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 春学期授業/Spring |
曜日・時限Day/Period | 水6/Wed.6,水7/Wed.7 |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 市ヶ谷 |
教室名称Classroom name | |
配当年次Grade | |
単位数Credit(s) | 4 |
備考(履修条件等)Notes | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
カテゴリーCategory |
修士課程(夜間)授業科目 人材・組織マネジメントコース |
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Outline (in English)
The actual labor market is never structured by a simple market mechanism. It has received numerous constraints from the "institution" that was reflected in the society, culture, politics and economy of the country/region. It is a social system that has been formed over a long process.
In the lesson, we try to understand the structure and current situation of Japanese labor market from an institutional approach. Specifically, with the theme of employment introduction, worker dispatch, matching business, and so on, we will consider the structure and scale of the market, the regulation, and the impact of globalization and aging.
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
授業では、日本の労働市場の構造と現状について、制度的なアプローチから解明していきます。ここでいう「制度」とは、政府が法律などを通じて管理しつつ、求人者と求職者そして仲介者ら市場関係者の日々の参加によって作り上げられていく労働力需給調整システムを意味します。
現実の労働市場は、単純なマーケットメカニズムによって構造化されるものでは決してなく、その国・地域の社会・文化や政治・経済が色濃く反映され組み上げられた「制度」から数々の制約を受けつつ、長い経緯を経て形成されてきた社会システムであるからです。具体的には、職業紹介、労働者派遣、求人広告などの「制度(事業システム)」を舞台に、それらの事業マーケット担当者(公的機関の職業相談担当者や人材紹介コンサルタントなど)の目線を加えながら、その市場の構造と規模、法の規制と経緯、需給(求人者と求職者)双方の動向、情報化・国際化・高齢化の影響などについて検討していきます。
到達目標Goal
現在、日本も含め、多くの先進諸国において労働市場は、政府の法制度によって管理されています。日本の政府はこれまで、日本の労働市場に対してどう関与してきたのか、そしてその関与によって現在のマーケットがどう動き、経済社会の変化とともに今後どこへ向かおうとしているのか。授業の到達目標は、こうした労働市場に関する洞察力を向上させることにあります。
この授業を履修することで学部等のディプロマポリシーに示されたどの能力を習得することができるか(該当授業科目と学位授与方針に明示された学習成果との関連)Which item of the diploma policy will be obtained by taking this class?
ディプロマポリシーのうち、「DP1」「DP2」「DP3」に関連、特に「DP1」は強く関連している。
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
1.本授業は、オンライン授業(リアルタイム配信型)として、実施します。
2.第1回から第3回までは、この授業の進め方などに関するイントロダクション、ガイダンスと、労働市場および日本の労働市場についての基本的な枠組みに関する講義を実施します。
3.第4回目以降は、日本の労働市場に関わる個別のテーマを取り上げ、そのテーマについての「講義」(6時限目)と「演習」(7時限目)を行ないます。
4.「講義」では、各回のテーマに関連して、これまでの傾向や近年の変化の動向、生じている課題や新たに進められている取り組みについてトピックを整理し、そのテーマに関する基本的な理解の促進を目指します。
5.「演習」では、各回のテーマに関連して、現状と課題及び個人的な問題意識をまとめた参加者作成のレポートの報告に基づき、ディスカッションを行います。
6.授業で取り上げる予定の個別テーマとしては、「授業計画」に挙げたものや、以下のようなものを考えています(「授業計画」には、2020年度の授業で取り上げたテーマとそのテーマに関わるトピックを、取り上げた順に記しています)。今年度の授業で実際に取り上げるテーマと順番については、第2回のガイダンスの際に参加者の皆さんと協議の上、決定します。
<取り上げる個別テーマの例:「授業計画」に挙げたもの以外>
○ホワイトカラー労働市場の流動化
○公共職業訓練とキャリア形成支援の諸政策
○職業能力評価のための社会的枠組みと課題
○就職・キャリア形成困難者に対する支援の取り組み
〇副業、雇用類似の働き方と労働市場
○新型コロナの感染拡大と労働市場
7.授業期間中、マッチングや採用、労働市場の諸制度に関わる実務者の経験をうかがうことで、日本の労働市場についての理解をより深める機会を設ける予定です。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
春学期
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
第1回:イントロダクション
授業の目的、取り上げるテーマ、進め方についての説明。
第2回:ガイダンス(6時限目)・労働市場論の基礎①「労働市場とは」(7時限目)
ガイダンス-参加者の問題関心の共有、取り上げるテーマの検討
労働市場論の基礎①-「労働市場」を捉える3つの観点、労働市場の参加者、労働市場の機能
第3回:労働市場論の基礎②「日本の労働市場の基本的枠組み」
日本における雇用・就業機会と賃金、雇用・就業契約とその終了、労働市場の「セーフティネット」
第4回:日本の労働市場の現状と課題①「高卒・大卒の労働市場」
「売り手市場」・「買い手市場」、就職氷河期、リクナビ、エントリーシート、インターン、新卒一括採用、通年採用、第2新卒、一人一社制、就職協定、採用活動に関する指針、採用活動の早期化・長期化、「オワハラ」、就活サークル、就活塾、グローバル採用
第5回:日本の労働市場の現状と課題②「国際労働力移動に関わる諸制度と課題」
日本国内で働く外国人雇用者の急増、外国人の採用と外国人労働者、日系人出稼ぎ労働者、労働許可制、入国管理制度、在留資格、技能実習生、特定技能制度
第6回:日本の労働市場の現状と課題③「非正規化の進展と格差対策」
フリーター、七五三問題、日雇い派遣の禁止、正規登用制度、労働契約法の改正、同一労働・同一賃金
第7回:日本の労働市場の現状と課題④「日本の「雇用改革」について考える」
労働ビッグバン、「働き方改革」、規制改革会議、解雇の金銭解決
第8回:日本の労働市場の現状と課題⑤「労働者派遣・請負・アウトソーシングの現状と課題」
登録型、常用型、自由化業務、事前面接、紹介予定派遣、派遣法の度重なる改正、構内請負労働、事務処理請負業、BPO、偽装請負
第9回:日本の労働市場の現状と課題⑥「女性就業者をめぐる労働市場」
M字カーブ、マミートラック、パートタイム労働、103 万円の壁・130 万円の壁、男女間賃金格差、女性の大学進学率、性別職域分離、統計的差別、男女雇用機会均等法、コース別採用、女性活躍推進法、アファーマティブ・アクション、ファミリー・フレンドリー、ワークライフバランス
第10回:日本の労働市場の現状と課題⑦「高齢化する労働市場」
高年齢者雇用安定法、年金制度改革、雇用と年金の接続、雇用確保措置、長澤運輸事件、65 歳定年制、出向・転籍、早期退職、アウトプレースメント、産業雇用安定センター、シルバー人材センター、NPO/ボランティア、高齢者の能力開発・意識改革
第11回:日本の労働市場の現状と課題⑧「労働市場における「差別」の問題」
「差別」の現状、問題への対応、残された課題:性差別(直接差別・間接差別)、LGBT の問題、定年制と年齢差別、人種差別、同和問題、ダイバーシティ、思想・信仰による差別
第12回:日本の労働市場の現状と課題⑨「労働市場における都市と地方」
年齢別・業種別などの観点から見た都市・地方の労働市場の特徴、マッチング・プロセスの相違、人材サービスの活動状況、地方-都市間の労働移動
第13回:日本の労働市場の現状と課題⑩「中小企業の人手不足とマッチング支援」
二重構造、中小企業における働きがい/働きやすさ、中小企業の採用支援、ブラック企業、中小企業の後継者難、中小企業就業者の高齢化
第14回:日本の労働市場の現状と課題⑪「技術の変化・進化・革新と労働市場」
技術革新に伴う仕事の変化、AIと労働市場、マッチング方法の変化、HR テクノロジー
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
本授業の準備学習・復習時間は、各2~3時間を標準とします。
テキスト(教科書)Textbooks
講義全般を通じての基本テキストは特には指定しません。
参考書References
毎回、次の回のテーマの参考となる文献・資料等を、提示します。
成績評価の方法と基準Grading criteria
1.各回の出席を「授業における学習姿勢」として評価します。
(第2回以降。2点×出席回数)
2.第4回目以降の各回におけるレポートの提出を評価します。
(3点×提出回数)
3.出席、レポート提出に加えて、演習での「レポート報告」を評価します。
(15点×担当教員の指名により授業内で報告した回数)
以上の3つの評価項目において
●「授業における学習姿勢」(上限26点)
●「演習時のレポート全提出」(上限33点)
●3回の「レポート報告」(45点)
を達成すれば、100点(A+)に到達するというイメージです。
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
1.「講義」では、日本の労働市場に関わる多種多様なテーマについて、①現状を左右する制度的な枠組み、②各テーマに関わる現象の経済・社会全体における位置付け、③それぞれのテーマに関わる当事者(企業、労働者、政策当局など)の活動・意向を、データに基づきながら、わかりやすく、具体的に説明し、労働市場の問題を立体的・複眼的にとらえるきっかけを提供していきます。
2.「演習」では、「講義」の内容と、参加者のこれまでの経験や関心を踏まえて、日本の労働市場の活性化やよりよいあり方につながる今後の取組みについて、活発に議論していきたいと考えています。
担当教員の専門分野等
<専門領域>
産業社会学、人的資源管理論
<研究テーマ>
①中小企業セクターで働く人々の意識とキャリア形成に向けての活動。
②能力開発、労働市場に関する社会的インフラ(公共職業訓練制度、資格・検定制度など)の機能。
③環境変化のもとでの日本企業の能力開発活動、キャリア管理。
<主要研究業績>
(書籍[共著])
○労働政策研究・研修機構編[2012]『中小企業における人材育成・能力開発』,労働政策研究・研修機構.
○労働政策研究・研修機構編[2014] 『求職者支援制度に関する調査研究―訓練実施機関についての調査・分析―』,労働政策研究・研修機構.
○労働政策研究・研修機構編[2017]『日本企業における人材育成・能力開発・キャリア管理』,労働政策研究・研修機構.
○梅崎修・池田心豪・藤本真編著[2019]『労働・職場調査ガイドブック』,中央経済社.
(論文)
○藤本真[2012]「民間教育訓練プロバイダーにおける教育訓練サービスの改善活動-サービス改善に向けた活動を規定する要因」, 日本労働研究雑誌619号.
○藤本真[2018]「「キャリア自律」はどんな企業で進められるのか」, 日本労働研究雑誌691号.
〇藤本真[2019]「中小企業セクターで働くシニア労働者」,日本政策金融公庫論集44号.