政治学研究科Graduate School of Politics

　第二次大戦後を扱った日本政治史において、一見して意外に思われるのが、沖縄・昭和天皇・安保を含む日米関係の連関である。そして、その生成および展開過程についての検証や考察が充分になされてきたとは言い難い。本授業では、当該期の日本を取り巻く国際環境や日本が置かれた地理的条件などとも関連づけながら、戦後日本政治史においてあまり取りあげられてこなかった未解明の領域について知見を深め拡げていきたい。そのような作業は「昭和」の終焉から30年が経ち、平成も終わろうとする今日、不可欠と考える。当該機にかかわる新発見史料、研究論文、文献の精読を踏まえたうえで、受講生と議論を行いたい。

　これまで、第二次大戦後を扱った日本政治史研究において最も欠落していたのは、沖縄および昭和天皇という、じつは密接な連関をもつ二つのファクターを充分に分析し、定位するという作業であった。本授業では、近年公開された沖縄をめぐる日米両政府の公文書や『昭和天皇実録』なども読み込みながら、戦後日本政治史についての知見をより深め、拡げることを目標とする。

ディプロマポリシーのうち、「DP1」「DP2」「DP3」に関連、特に「DP1」は特に強く関連、「DP2」「DP3」は強く関連している。

日本語 / Japanese

　テキストとしては、当該問題をほぼ独力で掘り深めてきた豊下楢彦氏の『安保条約の成立』『昭和天皇・マッカーサー会見』『昭和天皇の戦後日本』や吉次公介氏の「知られざる日米安保体制の“守護者”」などを読み、議論する。
　なお、２回目以降となるが、授業のはじめに課題（試験やレポート等）に対して講評し、受講生に対してフィードバックを行う。

あり / Yes

なし / No

秋学期

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：講和・安保交渉の準備過程

『安保条約の成立』第１章の精読と同章をめぐっての議論

第2回：「池田ミッション」と吉田外交の展開

同上第２章および第４章の精読と同章をめぐっての議論

第3回：日米交渉の帰結

同上第３章の精読と同章をめぐっての議論

第4回：天皇・マッカーサー会見(1)

同上第５章の精読と同章をめぐっての議論

第5回：天皇・マッカーサー会見(2)

『昭和天皇・マッカーサー会見』第１章の精読と同章をめぐっての議論

第6回 ：昭和天皇にとっての危機(1)

『昭和天皇の戦後日本』第１部の精読と議論

第7回 ：昭和天皇にとっての危機(2)

『昭和天皇の戦後日本』第２部の精読と議論

第8回：「松井文書」を読み解く

『昭和天皇・マッカーサー会見』第３章の精読と同章をめぐっての議論

第9回：いわゆる天皇メッセージと日米交渉

『安保条約の成立』第６章の精読と同章をめぐっての議論

第10回：「二重外交」

同上第７章の精読と同章をめぐっての議論

第11回：「安保国体」の成立

『昭和天皇の戦後日本』第２部の精読と議論

第12回：「知られざる日米安保体制の“守護者”」(1)

吉次論文の精読と同論文をめぐっての議論

第13回：「知られざる日米安保体制の“守護者”」(2)

同上

第14回：「憲法・安保体制」のゆくえ

『昭和天皇の戦後日本』第３部の精読と議論

　この授業を履修する大学院生は、自ら関連する文献や資料を読んだり、レポート課題に取り組んだりすることにより、各々が適当と判断する時間の、授業時間外学修が必要となる。参考までに、大学設置基準によれば、この授業の準備学習・復習時間は各2時間が標準となる。

　豊下楢彦『安保条約の成立―吉田外交と天皇外交―』岩波書店、1996年。
　　同上　『昭和天皇・マッカーサー会見』岩波書店、2008年。
　　同上　『昭和天皇の戦後日本―〈憲法・安保体制〉にいたる道―』岩波書店、2015年。
　吉次公介「知られざる日米安保体制の“守護者”―昭和天皇と冷戦―」『世界』第755号所収。

　古川隆久『昭和天皇―「理性の君主」の孤独―』中央公論新社、2011年。
　宮内庁『昭和天皇実録　第九』東京書籍、2016年。

　平常点のみ（100％）。やや詳しくは、授業への積極的な貢献度（出席等）、報告（レジュメ）の内容やプレゼンテーションぶり、議論のようすなどをみて総合的に判断する。

　特になし。

　学習支援システムやオンラインによる授業に参加できるような機器およびネット環境

　重要なお知らせ（2021年2月20日）
　新型コロナ禍により、授業の開始日や方法等につき重要な連絡がなされる可能性がありますので、受講生は本Webシラバスおよび学習支援システムを小マメにチェックするようにしてください。

＜専門領域＞　日米関係史、日本政治外交史
＜研究テーマ＞　日米地位協定の成立過程
　　　　　　　　沖縄と日米安保体制の歴史
　　　　　　　　日本と核兵器との関係史
＜主要研究業績および刊行物＞
・『日米行政協定の政治史―日米地位協定研究序説―』法政大学出版局、1999年。
・『沖縄基地問題の歴史―非武の島、戦の島―』みすず書房、2008年（第30回沖縄協会・沖縄研究奨励賞[社会科学部門]受賞）。
・『日米地位協定―その歴史と現在―』みすず書房、2017年。
・波多野澄雄・河野康子監修（明田川補）『沖縄返還関係資料』（第1回配本分、全7巻）現代史料出版、2017年。
・「核兵器と『国民の特殊な感情』」1～6（雑誌『みすず』に2013年6月号より2015年8月まで不定期連載）。
・ジョン・ハーシー『ヒロシマ　増補版』法政大学出版局、2003年（共訳）。
・ジョン・Ｗ．ダワー著『昭和　戦争と平和の日本』みすず書房、2010年（監訳）。
・ジョン・Ｗ．ダワー／ガバン・マコーマック著『転換期の日本へ　「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か』ＮＨＫ出版、2014年（共訳）。
・『占領期年表 1945-1952年　沖縄・憲法・日米安保』創元社、2015年（監修）。
　近年、広島・長崎・ビキニを経験した日本の核兵器に対する〝国民感情〟と政府の安全保障政策との連関について研究をまとまるべく、資料収集や分析視覚の検討を行っている。
　また、1950年代半ばの沖縄で米軍により強行された土地強制収用にさいして、住民代表である立法院（県議会のような組織）がなしえたことと、なしえなかったことの実証にも取り組んできた。
　現在は、波多野澄雄・筑波大学名誉教授ならびに河野康子・法政大学名誉教授による監修で刊行が進められている沖縄施政権返還交渉関係資料集成の編集補佐がおもな仕事となっている。