理工学部Faculty of Science and Engineering

機械から発生する騒音を抑制し、快適な音環境を創出するには、音響に関する基礎の習得が必要である。本講義では、波動現象としての騒音の取扱い、聴覚の特性、騒音の発生、伝搬メカニズム、消音法、測定・評価手法などを概説する。また、騒音防止に関する公的資格試験を見据えた演習を取り入れて実践的理解を深める。

基本的な騒音の諸量、発生メカニズム、低減法などを理解する。

ディプロマポリシーのうち、「DP1」と「DP2」と「DP4」に関連

日本語 / Japanese

本講義では、機械力学、流体力学など基礎力学の工学的応用の一つとして、騒音防止を位置付けている。また、環境問題を解決する実践的な技術を習得することを目的とする。実務的な内容を多く含むので、演習問題を解くことによって理解を深めていく。継続的かつ積極的に授業に参加されたい。
提出された課題に対して適宜フィードバックを行うとともに、その後の授業内容に対してそれを反映する。

あり / Yes

なし / No

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：音響、騒音とは

物理現象としての音波の基礎量、聴覚を前提とした騒音の基礎量について学ぶ。音波は空気の振動であり、時間的に変化しているが、工学上は平均値を用いるのが都合がよく、振動波形の平均化と実効値について学ぶ。

第2回：騒音の基礎的な計算　

騒音の大きさを示す基本的な量である、音のパワー、音の強さ、音圧およびそれらの表記法であるレベル（デシベルによる表記）について学び、簡単なデシベルの計算を演習する。

第3回：聴覚と騒音

騒音は物理現象である音波を聴覚の特性を含めた量で表現する。聴覚の特性（音の大きさや周波数の特性）を考慮した騒音レベル、マスキング効果などについて学ぶ。

第4回：騒音の諸量

環境騒音の大きさは時間的に一定ではないことが多いため、変動する騒音の時間平均の方法と評価量である時間率騒音レベル、透過騒音レベルなどについて学び、計算方法を理解する。

第5回：波動現象としての騒音(1)

騒音は工学上は平均値で表すことが多いが、騒音のシミュレーションを精密に行うためには、時間・空間上の音波の表記が必要である。音響伝搬の基礎式である波動方程式の導出を通じて、音圧、粒子速度、音速、インピーダンスといった音響伝搬における基礎量を理解する。

第6回：波動現象としての騒音(2)

1次元の波動方程式の導出を行った後、簡単な条件である1次元ダクト（平面音波）内を伝搬する波動方程式を理論的に解き、境界条件とともに波動の振る舞いを理解する。また、境界条件によって生じる定在波の様子、音波の反射率、透過率について理解する。

第7回：騒音の測定と分析(1)　

実用上必須となる騒音レベルの測定および測定器について学ぶ。騒音計の規格、構造と機能について学ぶ。また、騒音測定に使用されるマイクロホンの種類と原理についても学ぶ。

第8回：総合演習

第1回から第7回の内容を演習によって確認する。音圧レベル、騒音レベルの計算、時間率騒音レベル・透過騒音レベルの算出等について、演習により理解を深める。

第9回：騒音の測定と分析(2)　

騒音の原因特定や静音化対策において必須である周波数分析法について学ぶ。代表的な分析法であるFFT分析およびオクターブ分析について、原理と特徴について理解する。また、これらの周波数分析器の原理と特性について学ぶ。

第10回：具体的な騒音対策(1)　

最も一般的な騒音の伝搬系対策としての吸音、遮音による方法を学ぶ。防音塀による遮音、室内吸音による防音、壁における透過損失について、原理と計算方法を学ぶ。

第11回：具体的な騒音対策(2)　

産業機器やプラント機器におけるダクト内を伝搬する騒音の対策法として、消音器による騒音低減法について学ぶ。吸音型、共鳴型、膨張型、アクティブ型などの各種消音法について紹介し、簡単な消音器の設計を通じて理解を深める。

第12回：具体的な騒音対策(3)　

ファンやタービンといった流体機械や、自動車や新幹線、航空機といった交通機械から発生する空力騒音（風切り音）について学ぶ。Lighthillの空力音響理論、発生音の特性などについて、簡単な計算を通じて見積もりを行う。また、空力騒音の静音化手法についても触れる。

第13回：快適な音環境を目指して

騒音は聴覚の主観量であり、心理的に適切な評価および対策が有効である。規格化されている騒音の音質評価量であるラウドネスおよびこれをベースにした各種の音質評価指標について触れ、音質向上設計の実例を紹介しながら、これからの騒音対策について展望する。

第14回：総合演習

第9回から第13回の内容について、演習問題により理解を深める。総合透過損失の計算、吸音型消音器の設計、空力騒音の卓越周波数の計算などを行う。また、定期試験に向けた総合的な復習を実施する。

【本授業の準備・復習等の授業時間外学習は、4時間を標準とする】音の計算には対数を多用しますので、対数計算を復習のこと。

鈴木昭次ほか著：「機械音響工学」、コロナ社

特にありません

評価方法：　各演習の回答内容（50％）、期末試験（50％）で評価する。
評価基準：　本科目において設定した達成目標を60％以上達成している学生を合格とする。

演習を踏まえ、より実践的な理解を目指します。

プロジェクターを使用します。

国内外での企業実務経験、海外大学での研究経験を持つ教員が、その経験を活かし、研究や実務面での応用を踏まえた上で講義を行う。