法務研究科Law School

　現代社会では、時代の変遷に応じて国民の福祉を向上させ、複雑な国民の利害を調整するため、様々な法規範の定立（立法）が行われている。そして、そのように定立された法規範は国民によって遵守されなければならないが、一方で、社会経済情勢の変化に応じて必要な改廃は迅速的確に行われなければならない。このような、法規範の定立や改廃の、意義、内容、手続きなどを理解し、さらに進化させようという試みが立法学である。
　本講義では、このような立法学およびその周辺事情を概観する。

１）学生が、以下のことを理解できるようにする。
　①　法とは何か、法令の体系、法令の効力
　②　立法政策や立法内容の在り方、立法過程の現状
　③　法律・条文の基本形式や構造、附則、一部改正などの立法技術の要点
　④　地方自治立法、行政立法の仕組み、法令用語、法令解釈の要点
２）学生が、実際の条例立案に取り組み、立法作業を体得する。

ディプロマポリシーのうち、「ＤＰ５」に関連

日本語 / Japanese

　１）本年は、現時点で対面授業を前提としているが、昨年のオンライン授業の経験も踏まえ、次の様な進め方を想定している。
　　①　各回のレジュメは、原則として授業日の概ね 1 週間前の月曜日までに、学習支援システムの教材欄に掲示するので、各受講生は、それを予習する。
　　②　各回のリアクションペーパーも、①と同時に掲示するので、リアクションペーパーで指示する設問への回答及び各人のレジュメに対する質問について、授業日の前の週の水曜日中に提出する。
　　③　受講生からのリアクションペーパーに対する教官の回答は、できる限り事前に学習支援システムに掲示する。仮に間に合わなかった場合には当該授業の冒頭で提示する。
　　④　各回の授業では、レジュメの講義、リアクションペーパーに対するコメント、これらに対する追加質疑、演習などを行う。
　２）４月１２日（月）の第１回授業の受講を予定している学生は、４月５日（月）までに学習支援システムにアップされるレジュメを参考に、リアクションペーパーを作成し、４月７日（水）２４：００までに、学習支援システムを用いて教官まで回答するようにお願いする。
　　なお、授業選択期間中である初回の授業については、この回答がなくても受講できることとする。この場合、事後的にリアクションペーパーの提出をお願いすることとなる。
　３）５月３１日(月)の第７回授業は、教官の都合により、休講となる。補講は、講義開始後に受講生と調整の上、５月２８日（金）又は２９日（土）に行う予定である。
　　なお、オンライン授業などとなった場合には、変更が見込まれる。その場合には、その都度、学習支援システムにより提示するので、ご留意いただきたい。

あり / Yes

なし / No

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：１）立法学へのいざない
２）法令の効力①

　１）「法」とは何かや法令の秩序を考察しながら「立法学」の概要を把握する。あわせて、日本の法令の種類や法体系を概観する。
　２）法令は、どのように効力を発揮するのか。法令の効力について、把握する。

第2回：１）法令の効力②
２）立法政策

　１）法令の効力（続き）
　２）法的な制度は、どのような動機で、どのような社会事実を踏まえて、形成されていくか。「立法事実」の理解を通じて立法政策の在り方を考察する。

第3回：１）立法内容
２）演習①（50分）

　１）法律の内容として、どのような要件が必要で、どのような事柄が規定されるのであろうか。「法律事項」などの立法の要件と法律の具体的な規定内容を考察する。
　２）演習では、具体的な事例で、条例立案の取り組みを経験する。まず、各人による立案演習シート（1）の作成、提出

第4回：１）法律案の企画立案
２）演習②（50分）

　１）法律案はどのようにして作成されていくのであろうか。法律案の企画立案の手続きや過程を内閣立法と議員立法について概観し、法律の立案過程を理解する。
　２）グループによる立案演習シート（1）の検討

第5回：１）法律の基本形式・構造
２）演習③（50分）

　１）そもそも法律はどのような形式で書かれているのであろうか。立法技術の基本として、公布文から署名に至るまでの法律の基本的な構造、配字などを理解する。
　２）各人による立案演習シート（2）の作成、提出

第6回：１）条文の基本形式・構造（文体・用字を含む）
２）演習④（50分）

　１）条・項の基本的な形式、条文の構造、文体、用字などの立法技術を理解する。
　２）グループによる立案演習シート（2）の検討

第7回：１）附則
２）地方自治立法
３）演習⑤（50分）

　１）立法技術の一環として、附則の規定内容を理解する。
　２）地方公共団体の条例や規則を概観する。
　３）各人による条例案の作成①

第8回：１）法令の制定過程
２）演習⑥（50分）

　１）法律案及び条例案の国会・地方議会提出から、審議、可決・成立、公布、施行までの一連の制定過程を把握する。
　２）各人による条例案の作成②、提出

第9回：１）法律の一部改正・全部改正・廃止
２）演習⑦（50分）

　１）立法技術の一環として、一部改正・全部改正・廃止などの形式を把握する。
　２）グループによる条例案の検討

第10回：１）法令用語①
２）演習⑧（60分）

　１）立法技術の一環として、法令用語を概観する。
　２）グループごとに教官との意見交換（各グループ15分。教官との意見交換以外の時間は、グループによる条例案・説明資料・発表原稿の検討①）

第11回：１）法令用語②
２）演習⑨（50分）

　１）法令用語（続き）
　２）グループによる条例案・説明資料・発表原稿の検討②、提出

第12回：１）法令用語③
２）演習⑩（50分）

　１）法令用語（続き）
　２）各グループにおいて、他グループから提出された条例案などに対する質問の検討、提出

第13回：演習⑪

　各グループから条例案を発表する（他グループからの質問に対する回答を含む。）。
　その後、全員で吟味する。

第14回：１）行政立法
２）法令の解釈
３）全体の総括

　１）法律以外の国の法令の立法内容や立法過程を概観する。
　２）法令の読み方・解釈について理解する。
　３）講義を総括し、これからの立法のあり方について考察する。

　各受講生は、事前にレジュメを予習したうえで、リアクションペーパーを提出する。なお、レジュメは、本文と参考資料からなっているが、基本的には、本文を予習することとする 。参考資料は、必要に応じて参照すればよい。
　条例立案の演習のうち、各人によるシートや条例案の作成及びグループによる条例案・説明資料・発表原稿の作成については、適宜、提出を求めるので、授業時間中に終わらなかった場合には、宿題となる。
　本授業の準備学習や復習などの時間は2時間を標準とする。

　特にテキストは指定しない。必要に応じてレジュメや資料を準備する。

（基本書）
　「立法学講義＜補遺＞」大森政輔／鎌田　薫　編（商事法務・2011）
　「立法学―理論と実務」大島稔彦　著（第一法規・2013）

（実務基本書）
　「新訂　ワークブック法制執務」法制執務研究会　編（ぎょうせ
　　い・2007）
　「法令用字用語必携」法令用字用語研究会　編（ぎょうせい・2011）

（教官著書）
　「改訂　法令解釈の基礎」長谷川彰一　著（ぎょうせい・2008）
　「自治立法」松永邦男／長谷川彰一／江村興治　著（ぎょうせい・
　　2002）

１）成績評価の方法
　〇　授業期間中における評価（リアクションペーパー、授業における質疑応答・発言、立案演習で提出された資料及びその発表）
　〇　期末における評価（課題に対するレポート）
２）　成績評価の基準
　①　リアクションペーパー ２８％
　②　授業における質疑応答・発言 １４％
　　　（オンライン授業となった場合には、授業内掲示板への投稿などにより評価する。）
　③　立案演習で提出された資料及びその発表 ３８％
　　　（各人が作成した立案演習シート（１）・（２）・条例案を個別評価し、グループで作成された条例案・説明資料・発表原稿・他グループへの質問及び発表をグループ評価する。）
　④　課題に対するレポート ２０％

　これまでの講義を踏まえ、知識の量よりも知識に対する理解度や知識を用いた実践的な力を重視するとともに、昨年のオンライン授業の経験も踏まえて、講義のスケジュールや各回の進め方を一部変更する。

　授業内でインターネットを使用するので、貸与ＰＣその他のインターネットに接続できるデバイスを準備すること。