法務研究科Law School
LAW500A2(法学 / law 500)ドイツ法German Law
日野田 浩行Hiroyuki HINODA
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | 法務研究科Law School |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2021 |
授業コードClass code | V3131 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 春学期授業/Spring |
曜日・時限Day/Period | 火5/Tue.5 |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 市ヶ谷 |
教室名称Classroom name | |
配当年次Grade | 1~ |
単位数Credit(s) | 2 |
備考(履修条件等)Notes | 選択 |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
カテゴリーCategory |
基礎法学・隣接科目群 基礎 |
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Outline (in English)
This course will examine basic characteristics of German law in comparison with that of Japanese law.
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
下記の「到達目標」に即して、本授業は、全体を大きく次の4つの部分に分けて講義を進めて行きます。
Ⅰ 統治の基本構造(3回) 憲法の統治機構論に該当する部分ですが、行政法の一般原則である「法律による行政」の原理についても検討します。なお、ドイツやドイツ法の歴史については、自学自習の対象とします。テキスト該当部分(Ⅰ~Ⅲ章)を読んでおいて下さい。
Ⅱ 基本権の保障(5回) 憲法の人権論に該当する部分のうち、自由権の保障を中心に検討します。
Ⅲ 私法と社会法の基本秩序(4回) 私的自治の諸相とその限界の基礎、およびドイツ労働法の特徴をなす共同決定を中心に検討します。
Ⅳ 憲法と刑事法の交錯(1回) 刑法の領域におけるテーマの中から、憲法との関係で注目される判例をピック・アップして検討します。
なお、授業内でインターネットを使用することがあります。
到達目標Goal
(1) わが国の法曹をめざす法科大学院の学生諸君が、ドイツ法を学ぶことの意義はどこにあるでしょうか。
まず第一に、日本法の枠組みと論理自体ドイツ法に影響されているところが大きいことをふまえて、日本法の基本原理や理論的枠組み、あるいは個別の解釈論等につき、より深い知見を得られること。第二に、他方で、ドイツ法の制度には日本のそれと異なるものもたくさんあるので、そうした比較法的視座を得ることにより、日本法の特徴をより鋭く捉えることができるようになること。そして、第三に、日本の法律学が直面している課題につき、比較法的見地からの分析を加えることにより、法曹に必要なスキルのうち、特に「創造的・批判的検討能力」を高めること。訴訟代理人が、上告趣意書で原審の解釈等を批判する際などに外国の制度や解釈を援用することはけっこうありますが、たとえば「憲法上の権利」侵害が問題となる事案において、憲法裁判所制を採用するドイツの判例理論が採用している三段階審査の手法が憲法の学界のみならず、法科大学院生の間でもにわかに注目を集めてきていることを考えても、ドイツ法の全体像についての基礎的知識を獲得することの意味は、決して小さくはないと思います。
(2) 以上述べたドイツ法学習の意義を前提として、本授業の到達目標を次のように定めます。すなわち、基礎的な法分野についてのより深い理解や創造的検討能力の涵養に資するドイツ公法・私法の基礎につき、ドイツ連邦共和国基本法が要求する基本的秩序の観点から整理して概説することができるようになること、です。
ただ気をつけなければいけないのは、一国の基本的法秩序は確かに憲法において定められている部分が大きいのですが、法制度というものは、社会の自生的法の形成を通じても確立していくということです。その点については、私的自治の諸相とその限界という形で授業の中にとり入れていくつもりです。
以上をふまえていえば、本授業のテーマは、ドイツ公法・私法の基礎を、私的自治( Privatautonomie )の原理にも配慮しながら、ドイツ基本法の定める基本的秩序の観点から検討していくことです。
この授業を履修することで学部等のディプロマポリシーに示されたどの能力を習得することができるか(該当授業科目と学位授与方針に明示された学習成果との関連)Which item of the diploma policy will be obtained by taking this class?
ディプロマポリシーのうち、「DP5」に関連
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
授業は、ドイツ連邦共和国基本法が定める統治機構の基本構造を概観する第1・2回授業を除き、各回毎のテーマとの関係で重要な連邦憲法裁判所の判例をとりあげ、具体的な事例との関係での制度の運用や解釈論を意識しながら、講義形式に質疑応答を織り交ぜながら進めてゆきます。テキスト該当部分や検討する判例の評釈等については、下記の「準備学習等」の指示のほか、事前に配布するAssignment sheet の指示に従って、しっかりと準備しておいて下さい。
また、各授業参加者には、指示する授業テーマに関して報告をお願いします。また、それとは別にレポートを作成していただきます(後記「成績評価の方法と基準」参照)。
授業内で行ってもらう研究報告については、他の授業参加を交えた議論もふまえ、教員がコメントを行い、また作成しもらうレポートにも評点のほかコメントを付けて返却することによりフィードバックを行います。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
第1回:Ⅰ 統治の基本構造
<1>:政治部門の統治機構概論
EUとの関係や連邦制を含むドイツ連邦共和国の政治部門の統治機構につき、基本法が定めるところを概観する。
第2回:Ⅰ 統治の基本構造
<2>:司法権と憲法裁判所概論
ドイツにおける司法権の概念や裁判所制度について概説したうえで、連邦憲法裁判所による違憲審査や違憲政党禁止の制度につき、基本的な説明を行う。
第3回:Ⅰ 統治の基本構造
<3>:行政法の一般理論
行政法の一般理論のうち、「法律による行政」の原理につき概説したうえで、「法律の留保」原則との関係で連邦憲法裁判所が展開した「本質性理論」について検討する。
第4回:Ⅱ 基本権の保障
<1>:一般理論
基本権保障の総論部分のうち、とりわけ第三者効力に関するリュート判決(連邦憲法裁判所1958年1月15日判決)、および国家の基本権保護義務論や実効的権利保障論に関わる判例を検討する。
第5回:Ⅱ 基本権の保障
<2>:信仰の自由
信仰の自由の保障につき、十字架決定(連邦憲法裁判所1995年5月16日決定)およびスカーフ判決(連邦憲法裁判所2003年9月24日判決)を中心に検討する。
第6回:Ⅱ 基本権の保障
<3>:表現の自由
表現の自由の保障につき、報道の自由と人格権に関するレーバッハ判決(連邦憲法裁判所1973年6月5日判決)を中心に検討する。
第7回:Ⅱ 基本権の保障
<4>:集会の自由
集会の自由の保障につき、ブロックドルフ決定(連邦憲法裁判所1985年5月14日決定)を中心に検討する。(同判例は、第14回授業で扱う事例を検討する際にも前提として重要である。)
第8回:Ⅱ 基本権の保障
<5>:職業選択の自由
職業選択の自由の保障につき、薬局判決(連邦憲法裁判所1958年7月11日判決)を中心に検討する。
第9回:中間研究報告
第1回~第8回の授業内容につき、各自テーマを決めて研究報告を行い、その内容につき議論を行う
第10回:Ⅲ 私法と社会法の基本秩序
<1>:私的自治とその制約
契約の自由の位置づけや意義、およびドイツ民法におけるその制度化につき概観したうえで、連帯保証決定(連邦憲法裁判所1993年10月19日決定)について検討する。
第11回:Ⅲ 私法と社会法の基本秩序
<2>:財産権保障とその制限
基本法における財産権保障やドイツ民法における物権法の特徴を概観したうえで、クラインガルテン決定(邦憲法裁判所1979年6月12日決定)、ハンブルク堤防整備法判決(邦憲法裁判所1968年12月18日判決)および砂利採取事件決定(邦憲法裁判所1981年7月15日決定)について検討する。
第12回:Ⅲ 私法と社会法の基本秩序
<3>:家族法
ドイツ家族法の特徴を概観したうえで、婚姻名の選択に関する連邦憲法裁判所2004年2月18日判決、期限つき苛酷条項違憲決定(連邦憲法裁判所1980年10月21日決定)、非嫡出子判決(連邦憲法裁判所1969年1月29日判決)について検討する。
第13回:Ⅲ 私法と社会法の基本秩序
<4>:労働法の基礎
ドイツ労働法の特徴を概観したうえで、労働者の共同決定権に関する共同決定判決(連邦憲法裁判所1979年3月1日判決)について検討する。
第14回:Ⅳ 憲法と刑事法の交錯
民衆扇動罪規定に関するNPD政治集会決定(連邦憲法裁判所2004年6月23日決定)とヴンジーデル集会決定(連邦憲法裁判所2009年11月4日決定)、および堕胎罪に関する第一次堕胎判決(連邦憲法裁判所1975年2月25日判決)を検討する。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
第1・2回:テキストⅣ章§1・2、Ⅺ章§2、Ⅻ章
第3回:テキストⅤ章§1~3、BVerfGE 33, 303 (BVerfGEとは、Entscheidungen des Bundesverfassungsgerichts(連邦憲法裁判所判例集)の略で、その後の数字は、それぞれ巻と頁を示している。邦語文献として、後掲・『ドイツの憲法判例Ⅰ(第2版)』[以下「憲法判例Ⅰ」という。]判例番号46 )、BVerfGE 49,89 (憲法判例Ⅰ・61 )
第4回:BVerfGE 7, 198 (憲法判例Ⅰ24)、BVerfGE 53, 30 (憲法判例Ⅰ・9 )、
BVerfGE 81,242(後掲・『ドイツの憲法判例Ⅱ(第2版)』[以下「憲法判例Ⅱ」という。]判例番号40 )
第5回:テキストトⅣ章§3(p.61-68)、BVerfGE 93,1 (憲法判例Ⅱ・16 )、BVerfGE 108, 282(後掲・『ドイツの憲法判例Ⅲ』[以下「憲法判例Ⅲ」という。]判例番号21 )、小山剛「第二次スカーフ決定」自治研究96巻1号(2020)
第6回:BVerfGE 35,202 (憲法判例Ⅰ・29 )
第7回:BVerfGE 69, 315(憲法判例Ⅰ・40 )
第8回:BVerfGE 7, 377(憲法判例Ⅰ・44 )
第10回:テキストⅥ章§1~3、BVerfGE 89, 214(憲法判例Ⅱ・6 )
第11回:テキストⅥ章§4、BVerfGE 52,1(事前に資料配付)、BVerfGE 24, 367 (憲法判例Ⅰ・50 )、BVerfGE 58, 300 (憲法判例Ⅰ・51 )
第12回:テキストⅥ章§5・6、BVerfGE 109, 256 (憲法判例Ⅲ・10 )、BVerfGE 55, 134 (憲法判例Ⅰ・34 )、BVerfGE 25, 167(憲法判例Ⅰ・37 )
第13回:テキストⅨ章、BVerfGE 50,290 (憲法判例Ⅰ・49 )
第14回:BVerfGE 111, 147 (憲法判例Ⅲ・41)、BVerfGE 124, 300(事前に資料配付)、BVerfGE 39,1 (憲法判例Ⅰ・8 )
本授業の準備学習・復習時間は各2時間を標準とします。
テキスト(教科書)Textbooks
村上淳一=守矢健一/ハンス・ペーター・マルチュケ『ドイツ法入門[改訂第9版]』(有斐閣・2018年)
参考書References
ドイツ憲法判例研究会編『ドイツの憲法判例Ⅰ(第2版)』、『同Ⅱ(第2版)』、『同Ⅲ』(信山社・2003年,2006年,2008年)
成績評価の方法と基準Grading criteria
授業期間中における評価(平常点)
中間研究報告 50%
期末における評価
レポート 50%
なお、感染症罹患等やむをえないと認められる事情によるもの以外の欠席については、上記基準に従い合計100点となるところ、欠席1回につき、マイナス2点とします。
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
報告やレポートについては、受講者の人数をも考慮して、課題の設定等、適切なものとなるよう工夫していきたいと思います。