デザイン工学部Faculty of Enginneering and Design

地球の水で構成される領域を水圏という．水圏の大部分は海洋であるが，人間との関わりが密な陸水域（河川，湖沼，貯水池）を対象として，流れ・水質・底質・生態系の変化の仕組みを学び，水環境を形成する水圏の科学を学ぶ．

水質構成のメカニズムを学んだ後に，湖沼・ダム貯水池，河川といった圏域ごとに，流れ・水質・生態系・人間活動との関連性を多面的な視点から考究し，必須の基礎知識・技術，技術者としての環境倫理感などを修得することを目標とする．

• （Ａ）歴史・文化・自然の理解・尊重:
• （Ｂ）技術者倫理:10％
• （Ｃ）工学基礎学力:
• （Ｄ）専門基礎学力:20％
• （Ｅ）専門知識の活用・応用能力:50％
• （Ｆ）総合デザイン能力:20％
• （Ｇ）コミュニケーション能力:
• （Ｈ）継続的学習能力:
• （Ｉ）業務遂行能力:

デザイン工学部都市環境デザイン工学科ディプロマポリシーのうち、「DP4」に関連

日本語 / Japanese

水辺空間の再生など身近な生活環境における技術の役割を学習するにとどまらず，地球温暖化とその影響・対策などグローバルな問題も含め，大気の水・物質循環，気候変動，異常気象などについて近年の研究成果も踏まえて講義する．内容の理解を深めて水質解析方法を修得するためにテーマ毎に演習問題を課し，学生間，学生－教員間での意見交換を通して演習問題を解く．2021年度についてはリアルタイムの遠隔授業を実施する予定である．

なし / No

なし / No

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

1：水圏環境の変遷と講義概要

学習教育目標の確認．授業の進め方．テキスト紹介．産業革命によって二酸化炭素排出量が急増し温暖化が加速していること，窒素の固定技術によって窒素循環が劇的に変化したことが，水圏への環境負荷の増加要因になっていることを解説する．水圏環境に関わる主な出来事の国内外史，足尾銅山鉱毒事件，公害，環境法体系の整備，化学汚染と有機汚濁，富栄養化と有機汚濁における水質障害の事例

2：水質指標

水質指標の分類（水の物性，濁り，有機物，栄養塩），水の物性に関する水質指標：水温，電気伝導度，塩分，pH，濁りに関する指標：透明度，透視度，濁度，色相・色度，有機物に関する指標：溶存酸素濃度，酸化還元電位，BOD,COD

3：水質環境基準と水質素過程

水質環境基準（河川，湖沼・貯水池，海域），光・熱環境，制御関数と制限因子，吸脱着・溶出，水－大気境界面における気体交換，易・難溶解性気体，凝集・沈殿（沈降），好気性・嫌気性分解と溶存酸素に関する制御関数，食物連鎖と生物濃縮

4：光合成と有機物生産

光合成を律する諸要因と有機物増殖速度のモデル化，クロロフィルa濃度の周日変化に関する演習，補償深度に関する演習

5：河川の自浄作用

Streeter-Phelpsの式，物理的・化学的・生物的自浄作用，好気的微生物と再曝気と真の自浄作用，河川の自浄作用に関する演習：開水路等流諸元と再曝気係数・溶存酸素垂下曲線の解

6：湖沼・貯水池の水質水理

湖沼・貯水池の水理学的特性（河川との比較），水温成層の構造と形成要因，水温成層の季節変化，成層特性による水域の分類，貯水池の流れ・乱れの駆動力

7：湖沼・貯水池における富栄養化

冷水害，濁水害，富栄養化と水質障害，自然と人為起因の富栄養化の違い，富栄養湖と貧栄養湖の比較，流域対策と池内対策，富栄養化の律速（制御）要因，琵琶湖条例

8：富栄養化の判定

富栄養化の判定指標（Vollenweiderのモデル），富栄養化度の判定に関する演習

9：成層湖におけるカビ臭発生・貧酸素深層水の湧昇の判定

吹送流によるカビ臭の発生機構，成層・風速条件と深層水の湧昇，これらの演習

10：河川の物理環境

河川法，河川における物理的・化学的・生物学的環境因子，河川の環境機能，河川環境の空間・時間スケール，河川の物理環境：流況，セグメント，瀬と淵

11：土砂収支・河川地形，植生水理

土砂収支と河川地形・生物環境，総合的土砂管理，河川の樹林化・陸地化

12：河川の生態系，流域文化

自然の攪乱・更新，縦断・横断方向の連続性，河川地形の多様性，植生の縦横断方向分布，付着藻類，魚類，底生動物と水質，河川文化

13：気候変動と水圏環境，授業の総括

地球環境変化が水圏の流れや水質に及ぼす影響，持続可能社会を形成するために必要な水圏管理と環境倫理，水圏環境学の総括

14：授業の総括

授業の総括と総合的な学力確認

授業内容の予習・復習が演習課題を解き明かすために必要となり，授業内容が如何にして水圏環境の管理技術と連動しているかを演習によって理解する．演習には水理学や数値解析の概念が含まれており，水理学1及演習や水理学2など関連科目を復習すること．授業で紹介する時節ごとの水圏環境問題についても独自に関連資料などを調査し水圏環境学への興味を向上させること．授業の進行状況に応じて宿題を課す．
本授業1回あたりの準備学習・復習時間は、各2時間を標準とします.

水圏の環境，有田正光他：東京電機大学出版局，1998年

授業中に資料を配付する他，課題に応じて参考書を紹介する．

水質の形成機構を理解していること，社会の営為活動が湖沼・ダム貯水池・河川など陸水域における水質・生態系に及ぼす影響を理解していること，水圏管理に必要な技術を修得していること，技術者として備えるべき環境技術倫理・多面的視点を備えていること，などの項目に関して成績を総合的に評価する．
①欠席4回以上は単位取得を認めない（評価D）．
②平常点30点（演習レポートなど）と期末試験70点により評価する（遠隔授業の場合には期末試験の代わりに各自が作成した学習メモなどを通して学力確認をする場合がある）．100点満点に換算した上60点以上を合格とする．

授業中に提示するスライドの内容を簡潔にまとめた資料のみを配付し，学生のノート筆記を促進する．スライドについては授業終了後に学習支援システムHOPPIIへアップし，復習や定期試験に向けた学習を支援する．遠隔授業の場合には通信不良に備えてスライド動画を学習支援システムにアップロードし，オンデマンドとライブ講義を併用することが望ましい．

講義にはPPTやDVDを適宜使用する．2回に1回程度，理解を促進するために演習を交えた授業をするため，関数電卓や貸与PCを持参すること．