イノベーション・マネジメント研究科Business School of Innovation Management
MAN510F2(経営学 / Management 500)デジタル広告論Theory of Digital Advertising
高田 勝裕Katsuhiro TAKATA
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | イノベーション・マネジメント研究科Business School of Innovation Management |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2023 |
授業コードClass code | W0303 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 秋学期後半/Fall(2nd half) |
曜日・時限Day/Period | 木6/Thu.6,木7/Thu.7 |
科目種別Class Type | 専門講義 |
キャンパスCampus | 市ヶ谷 |
教室名称Classroom name | 各学部・研究科等の時間割等で確認 |
配当年次Grade | 1・2 |
単位数Credit(s) | 2 |
備考(履修条件等)Notes | 専門科目 |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | ○ |
カテゴリーCategory | 専門科目 |
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Outline (in English)
Today's digital marketing activities are undergoing a sea change to a data-driven approach with personalization as the core technology. Sir Martin Sorrell, the former CEO of WPP, the world's largest advertising agency, declared that "data" is the key to marketing, and acquired a number of companies involved in digital marketing to consolidate and utilize data assets. At the same time, IBM, Accenture, Deloitte, and other IT consulting companies that excelled in the use of data assets proposed marketing services that integrated management and sales activities to advertisers, and began to compete with general advertising agencies in advertising sales. The face of the advertising industry has changed dramatically.
The background to these changes is that (1) both online and offline activities of consumers can be measured in the form of data, (2) all marketing activities can be acquired and managed in the form of data, and (3) the various processes of marketing activities have been programmatically automated. Furthermore, among the tech giants represented by GAFA+M (Google, Amazon, Facebook, Apple, and Microsoft), Google, Facebook, and Amazon, which possess vast amounts of data related to digital marketing activities, have developed their own data assets about individuals on their platforms. With its exclusive access to the data assets related to each individual on its platform, Google, Facebook, and Amazon use advanced technology to provide advertisers with significant advertising results. In addition, each of them has succeeded in gaining more exclusive revenue by completing the digital marketing activities of advertisers within their platforms.
Therefore, the purpose of this lecture is to define advertising in digital marketing as "digital advertising," to give a bird's-eye view of "digital advertising" as a whole, and to systematically understand and master its basic concepts and technologies, focusing on personalization and targeting technologies, which are the main means that form the basis of today's advanced technologies.
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
現在のディジタルマーケティング活動は、パーソナライゼーションをコアテクノロジーとするデータドリブンアプローチへと大変革を遂げている。世界最大の広告代理店であるWPPの元CEOであるマーティン・ソレル卿は、マーケティングの鍵を握るのは「データ」であると宣言し、データアセットの集約と活用のためにディジタルマーケティングにかかわる数多くの会社を買収した。一方で、データアセットの活用に秀でたITコンサルティング会社であるIBM、アクセンチュア、デロイトなどは経営活動と販売活動を一気通貫するマーケティングサービスを広告主に提案して、総合広告代理店と広告販売で競合するようになり、広告業界を構成する顔ぶれが大きく変貌した。
それらが成立した背景として、(1)生活者のオンライン・オフライン活動が共にデータとして計測可能となること、(2)マーケティング活動がすべてデータで取得・管理できるようになること、そして(3)マーケティング活動の諸プロセスがプログラマティックに自動化されたことがあげられる。さらにGAFA+M(Google Amazon Facebook Apple Microsoft)に代表されるテックジャイアントと呼ばれる企業群の中でも、ディジタルマーケティングビジネスを展開してそれらに関する膨大なデータを所有するGoogle、Facebook、Amazonは自社プラットフォーム上の個々人に関するデータアセットを独占利用できる立場により、高度なテクノロジーを駆使して広告主に大きな広告成果を提供している。さらに、それぞれ広告主企業のディジタルマーケティング活動の場を自社プラットフォーム内に完結させることで、より独占的な収益を獲得することに成功している。
そこで本講義の目的は、ディジタルマーケティングにおける広告を「デジタル広告」と定義して、「デジタル広告」の全体を俯瞰し、さらに現在の高度なテクノロジーの基礎を成す主要な手段であるパーソナライズ技術やターゲティング技術を中心に、その基礎概念・技術を体系的に理解・習得することを目的とする。
到達目標Goal
本講義の目標は、パーソナライズやデータドリブンアプローチなど先端テクノロジを活用する「デジタル広告」を理解することにより、それらが持つ特性やベネフィットを自身の事業やビジネスモデルに適応・応用展開することである。
さらに、それらのテクノロジ等によって成立する「デジタル広告」が、特定の企業群をテックジャイアントだけに膨大な利益をもたらしたのか、その過程を振り返って学生自身の知識として具備することにより、自身の未来環境におけるビジネスの成功確率の向上に寄与することを目指す。
また、現在では「デジタル広告」によって収益を得ることが一般的に利用されるようになっている。さらに、AI(人工知能)などと融合する高度なサービスが比較的安価に消費者へ提供されるようになっており、本講義ではこれらの収益モデルなども合わせて解説するため、自身のサービス開発に取り組む学生にとっては、そのビジネス化において非常に役立つものと確信する。
本講義では「デジタル広告」におけるテックジャイアントが駆使する手法の初歩的なものを自身の環境で動作させて体験する。これら応用方法の体験により、学生自身の将来において、コンピュータの利活用による競争上の優位性を得ることにつながることを望む。
この授業を履修することで学部等のディプロマポリシーに示されたどの能力を習得することができるか(該当授業科目と学位授与方針に明示された学習成果との関連)Which item of the diploma policy will be obtained by taking this class?
イノベーション・マネジメント研究科のディプロマポリシーのうち、「DP1」「DP2」「DP3」に関連
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
講義は2コマ単位で、スケジュールにのっとり進める。
各講義で前半では座学を中心とした講義をおこなう。講義の前半では「デジタル広告」に関するホットトピックを毎回数点選んで解説する。後半では前半の講義に関する技術やパーソナライズを実際にコンピュータをもちいて試す。学生の希望に応じて、著名な実務者をゲスト講師として迎えて、実ビジネスでの活用や進行中の課題などについて議論する機会も用意することも考える予定である。
後半の講義ではティーチングアシスタントがすべての学生の補助にあたり、実際に「デジタル広告」の主要技術をデータを用いて処理し、さらに得られたアウトプットを吟味する。
なお、学生に対しては「デジタル広告」の経験や背景、技術的知識を問わない。
各回においてレポート課題を与えるので、その前提で出席すること。
すべての講義は大学設備またはオンラインなどを状況に応じて適宜選択する。実習は学生自身のノートパソコン上の環境上またはクラウドなども積極的に活用する予定である。環境の構築は最初の講義でおこないティーチングアシスタントが実習環境の導入を支援する。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
授業形態/methods of teaching:対面/face to face
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
1[対面/face to face]:デジタル広告序説
我が国において、1996年に初めてヤフージャパンのトップページにバナー広告が掲載されてから「デジタル広告」は20年以上の歴史を持つことになった。このバナー広告は、単なる掲載されるものから、閲覧者の興味関心に対して訴求をおこなうターゲティング広告に進化し、また毎日数千億回を超える広告表示が生活者に対して供給されるレベルまで成長した。これに至る背景を説明する。また各学生が応用を考えているビジネスについて確認して、本講義のゴールについて確認する。
2[対面/face to face]:演習(1)
「デジタル広告」の基礎は膨大なデータにもとづくパーソナライズである。本方法を確認するための環境を各学生のパソコンまたは大学設備に構築する。クラウド上の環境も利用できる場合は利用する。
3[対面/face to face]:データホリスティックとマーケティングミックスモデリング(MMM)
「デジタル広告」が急成長した主要の概念となる「データホリスティック」がある。「データホリスティック」は「全体性」の側面から事象や現象をデータによって総体的に取り扱う考え方である。近年では、この概念を土台とした、売上などのマーケティング目標に影響していると考えられる多数の要因を時系列に蓄積し、統計的手法モデルを導き出すことで、要因の相互関係や影響度合いを明示し、広告予算を効果的に分配する(アロケーション)手法が主流となった。これはマーケティングミックスモデリング(MMM)と呼ばれ、デジタル広告時代における最も重要な広告予算最適化手法となった。本講義で説明する。
4[対面/face to face]:演習(2)
パーソナライズにおいて最も有名かつ利用されているターゲティング技術を実際に動かすための基礎を演習する。具体的には生活者の趣味趣向を計数したり、または測定するために利用する統計量について演習する。
5[対面/face to face]:広告分析アプローチ
「デジタル広告」の成果を確認するために広告結果から得られたデータの分析が必要となる。本講義ではこの手段の基礎を学ぶ。具体的には統計的なアプローチ、またはデータマイニング的なアプローチからデータを取り扱う手段を説明し実践する。それぞれについて学生が自身で使えるようになる。
6[対面/face to face]:演習(3)
「デジタル広告」においてターゲティング技術の基礎となる技術を実際に各自の環境で動作させる基礎演習をおこなう。本講義によりコンピュータが生活者の趣味趣向を計数化することを体験する。
7[対面/face to face]:広告と生活者のプライバシ
現在、個々人の趣味や趣向に即した広告配信を実現させる企業が現れてきた一方で、そのデータアセットの中身は、生活者の生活を写す大量のデータであり、個々人のプライバシ侵害など、思わぬ問題点が明らかになりつつある。中でも、2016年に「ケンブリッジ・アナリティカ」は、生活者に同意を得ないままSNS上のデータを取得・活用して効果的な政治広告を展開して大きな疑惑とプライバシ保護に関する議論を呼んだ。そこで欧州では2018年にデータ保護法(GDPR)が、米国加州で2019年にカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)が制定、2020年にはカリフォルニア州プライバシー権法(CPRA)が承認され、生活者のプライバシに配慮したデータ利用が厳しく求められるようになっている。本講義ではこれら業界の状況を説明し、さらに近年進行中の事案を議論する。
8[対面/face to face]:演習(4)
ターゲティング技術を実際に各自の環境で動作させる応用演習をおこなう。本講義では具体的なデータを用意して、学生自身の環境でコンピュータが生活者の趣味趣向をもとに判定する状況を体験する。
9[対面/face to face]:業界分析1「なぜITコンサルティング会社と総合広告代理店は競争するのか」
「デジタル広告」業界では、IBM、アクセンチュア、デロイトなどのITコンサルティングファームが多くの広告関連企業を買収して、WPP、ピュブリシス、オムニコム、電通等の従前の総合広告代理店と「デジタル広告」の覇権をかけた勝負に出ている。なぜこのようになったかのか、至る背景をふまえて、業界を俯瞰しつつ、今後のビジネスに与える影響を議論する。
10[対面/face to face]:演習(5)
各学生のコンピュータ上に構築した環境上で、クラウド上のビジュアライゼーション環境を作成して、実際の意思決定に用いられる実環境を体験する。具体的には、コンピュータの計算結果をインタラクティブに可視化するまでの環境構築をおこなう。
11[対面/face to face]:業界分析2「プラットフォームにより占有されるデジタル広告市場」
「デジタル広告」に必要となるデータアセットはプラットフォームにより占有され、その結果として世界のデジタル広告市場は、テックジャイアントの数社が独占する状況に陥った。本講義では、グローバルで起こっているデジタル広告の寡占状況を解説し、さらに学生諸君と共に今後のビジネスへの影響と対策を議論する。
12[対面/face to face]:演習(6)
各学生のコンピュータ上に構築した環境上で、クラウド上のビジュアライゼーション環境を作成して、「デジタル広告」に関する意思決定を体感する。具体的には、実データを利用してコンピュータの計算を反映させたビジュアライゼーション環境から意思決定をおこなうための要素やその可視化要素を実際に構築する。
13[対面/face to face]:イノベーションの創出
ゲスト講師として著名実務者を迎え,業界で現在進行しているイノベーションについて聴講する。さらに、そのイノベーションにより変化する未来のビジネス展望について学生と議論をおこなう。
14[対面/face to face]:演習(7)
全演習について総括をおこなう。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
1.短期間で多くの内容を説明する場合は、事前に目を通しておく内容を告知するので、それらをを必ず理解した上で講義に参加すること。
2.各学生の課題意識に応用できる演習を予定しているため、各学生においては、事前に課題意識を整理のうえで講義に参加することが望ましい。
3.学生に対して講義の内容を要旨としてまとめるレポート(A4で1枚以内)の提出を適宜求める。優秀なレポートは授業で表彰する。本授業の準備学習・復習時間は、各2時間を標準とする。なお、別講義などの課題や実習で時間が取りづらい場合もあると思われるため、そのような場合は講師側へ事前に当該事項を相談する対応をおこなっている。
テキスト(教科書)Textbooks
適宜授業で関連記事を紹介し解説する予定である。
参考書References
本講義で扱う領域は変化が激しく、有益な情報はウェブサイトや生の展示会を中心に提供されている。
そこで「デジタル広告」先進国である米国の情報を中心に有益な情報を掲載するサイトとして以下をあげる。
1. Website:"AdExchanger.com", https://adexchanger.com/
2. Website:"Digiday", https://digiday.com/
成績評価の方法と基準Grading criteria
以下の点から評価する。
1.レポート 40%
2.出席と積極的な発言 30%
3.最終レポート 30%
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
本講義では数学的な知識を求めず、論理的思考のみで理解できるよう表現を工夫している。ティーチングアシスタントも参加して学生の支援をおこなう。さらに講義の内容に応じてゲスト講師を招聘する場合は、国内外の第一線で活躍する著名実務者を迎えることで、実務の現場を各学生が体感できるように工夫している。実講義については、オンラインと対面とも、両方の学生が受講しやすいように配慮した講義資料の作成や設計をおこなっている。演習について、オンライン形式だと1人の学生との対話時間が長くなる傾向があり、サポートを受けたい学生全員の要望を聞きづらいことが生じたため、サポートルーム設置(ブレイクアウトルームを用いる方法)をはじめることとした。
学生が準備すべき機器他Equipment student needs to prepare
ノートパソコン、スマートフォン
その他の重要事項Others
講師は「デジタル広告」業界の萌芽期に始まり、プラットフォームに占有される現代にかけて、「デジタル広告」ビジネスの第一線で活躍する起業家/実務者であり、デジタルマーケティングに関する諸問題を学生と一緒に議論したいと考えている。本講義に関しては、オフィスアワーとして特定の時間を定めないが、電子メールアドレスgogokarubi@gmail.comでいつでも質問を受け付けている。