人文科学研究科Graduate School of Humanities

春学期は18世紀後半の江戸で人気を博した絵入り小説である黄表紙を読み解く。作品としては草双紙の発展に即して、浮世絵師による画風の変遷も反映した式亭三馬画・作『稗史億説年代記［くさぞうしこじつけねんだいき］』（享和2・1802年刊）をとりあげ、本文だけでなく挿絵の趣向も分析しながら読解する。
最初に時代状況や当時の戯作や出版界の情勢、また作者について、また注釈の基本を講義する。以後、受講生が分担して担当し、順にそれぞれの担当箇所の翻刻を確認しながら注釈を付け、意味をとりながら作品を読み進める。簡略な既存の注釈を頼りに、三馬の仕掛けた謎をどこまで読み解けるかに挑戦しよう！

（１）作品の翻刻を点検し、既存の注釈を批判的に検討しながら読む力をつける。
（２）近世における基本的な知識、情報を調査するための文献に習熟する。

日本語 / Japanese

作品の背景や注釈の方についての概説のあと、受講生で担当箇所を決めて、毎週、読解を発表してもらいます。本文の解釈とともに、挿絵の画風の分析も行いましょう。

あり / Yes

なし / No

春学期

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：概説

時代状況と出版界、黄表紙とは

第2回：講義１

作者・画工について

第3回：講義２

注釈の基本・序文を読む

第4回：学生の発表

上巻１

第5回：学生の発表

上巻２

第6回：学生の発表

上巻３

第7回：学生の発表

中巻１

第8回：学生の発表

中巻２

第9回：学生の発表

中巻３

第10回：学生の発表

下巻１

第11回：学生の発表

下巻２

第12回：学生の発表

下巻３

第13回：学生の発表

補足

第14回：まとめ

作品を評価する

本授業の準備学習・復習時間は、各2時間を標準とします。
毎週、次回の場面を確認してきましょう。
発表担当者は既存の翻刻を点検・修正し、語釈・解釈の発表を用意してください。

国立国会図書館・早稲田大学図書館・東京大学霞亭文庫／西尾市岩瀬文庫のデジタルデータを比較検討し、善本を選ぶ。注釈は『江戸の戯作絵本四末期黄表紙集』（社会思想社現代教養文庫　1983＊PDFで配付）を参照する。

黄表紙については鈴木俊幸『江戸の本づくし　黄表紙で詠む江戸の出版事情』（平凡社、2011、平凡社新書566）参照。

毎回の出席は当然の前提とした上で、報告70％、授業中の質疑などの参加態度30％によって総合的に評価する。

翻刻の確認を通じて、おもに仮名のくずし字が読解できるようになるようにします。
各分野の参考文献を紹介することで、江戸の事物を調べるための基本的な知識が得られるようにします。

＜専門領域＞日本近世文芸・日本近世文化
＜研究テーマ＞大田南畝・江戸狂歌・戯作
＜著書＞
【単著】
『へんちくりん江戸挿絵本』インターナショナル新書（集英社インターナショナル、2019）
『大田南畝 江戸に狂歌の花咲かす』（岩波書店　2014）
『天明狂歌研究』（汲古書院　2009）
【共著】
『最後の文人　石川淳の世界』集英社新書（集英社　2021）
『東アジア文化講座3東アジアに共有される文学圏』（文学通信　2021）
『北斎　視覚のマジック　小布施・北斎館名品集』（平凡社　2019）
『〈奇〉と〈妙〉の江戸文学史』（文学通信　2019）
『別冊太陽　歌麿決定版』（平凡社　2016）
『日本人は日本をどうみてきたか―江戸から見る自意識の変遷』（田中優子編、笠間書院　2015）
『化物で楽しむ江戸狂歌』（笠間書院　2014）
『別冊太陽　北斎決定版』（平凡社　2010）