法務研究科Law School

　司法試験や民事訴訟の実務では，判例を調査し，事実関係，争点，結論，理由，判断の射程を正しく把握する能力が不可欠である。そこで，本授業では，重要判例の分析を通じて，判例の読み方を習得するとともに，法的思考力を深化させることを目的とする。さらに，レポート課題の提出を通じて，法律家としての基礎的な論証能力の獲得を目指す。

　１年次の民事訴訟法Ⅰ・Ⅱ，２年次の民事訴訟法演習Ⅰ・Ⅱを通じて身に付けた基礎的学力を前提に，具体的な判例を通じて，事案の背景・概要を把握し，どのような問題が発生し，これを解決するために，どのような理由をもとに，どのような結論が導かれたか，その射程はどの範囲かを理解する。これに加えて，発展的な問題を議論することで，現代社会に生じる新たな法律問題に対処し得る柔軟な法的思考力を養う。
　更に，レポート課題の提出を通じて，法律家としての基礎的な論証能力を育むだけでなく，その内容を互いに議論することで，民事訴訟法に関する知識及び思考力の完成を目指す。

ディプロマポリシーのうち、「ＤＰ１」と「ＤＰ２」に関連

日本語 / Japanese

　教材の事前に指定された範囲の，判例と開設を精読しておく。判例ばかりではなく，解説を理解しておくことが必要になる。
　授業では，学生にたいする質問をし，その解答を踏まえて議論をし，これを通じて理解を深める。
　課題提出物や定期試験答案は添削して返却する。

なし / No

なし / No

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：民事訴訟の対象

法律上の争訟，訴訟と非訟

第2回：裁判所

管轄，移送，国際裁判管轄

第3回：当事者の確定と当事者能力

氏名冒用訴訟，死者を当事者とする訴訟，民法上の組合

第4回：当事者適格

法定訴訟担当，任意的訴訟担当

第5回：法人の内部紛争

職務代行者と法人の代表者

第6回：訴訟能力・法人の代表，訴訟代理

意思能力，代表権と表見法理

第7回：訴えの利益

給付の訴えの利益，確認の利益，形成の訴えの利益

第8回：処分権主義

訴訟物論争，境界確定訴訟，債務不存在確認訴訟

第9回：重複起訴

重複訴訟の禁止，債務不存在確認請求と手形訴訟，相殺の抗弁

第10回：期日・期間・送達等

郵便に付する送達，補充送達の効力

第11回：訴訟行為

訴訟行為と私法法規，訴訟上の和解，意思表示の瑕疵

第12回：弁論主義

弁論主義，主要事実と間接事実

第13回：当事者の主張の要否と釈明

当事者からの主張の要否，権利抗弁，釈明権，釈明義務，法的観点指摘義務

第14回：自白の拘束力

自白の拘束力，間接事実の自白，権利自白，自白の撤回

　各回ごとに指定された判例を読み，基本書等で予習をする。
　課題が与えられたときは，その課題に対するレポートを作成する。本授業の準備学習・復習時間は各2時間を標準とします。

高橋宏志=高田裕成=畑瑞穂編『民事訴訟法判例百選　第5版』（有斐閣）

伊藤眞『民事訴訟法〔第7版〕』（有斐閣，2020年）
小林秀之編『判例講義　民事訴訟法』（弘文堂，2019年）
高橋宏志『重点講義民事訴訟法（上）（下）（第２版補訂版）』（有斐閣）

演習での発言　　　　　　２０％
演習で行う起案の評価　　２０％
期末試験での評価　　　　６０％

より双方向の講義を目指す。