経済学部Faculty of Economics

「重商主義批判の流れと経済学の形成」
戦費調達の必要に迫られ、17世紀末イングランドでは公信用の制度的革新が生じました。しかし、フランスでは、17世紀来のコルベール的工業重視政策と戦費増大で国家債務が膨らみ、絶対王政は自己破産の危機に瀕します。これに対処すべく、18世紀初頭には、フランス王立銀行が設立され、銀行券が発行されましたが、このいわゆる「ローのシステム」は1720年に破綻します。同時期にブリテンもまた「南海泡沫事件」で投資ブームとその破綻を経験します。このような歴史的状況の中で、まずはフランスで、そしてブリテンで、様々な処方箋が提出され、スミスによるそれらの批判的検討は『国富論』に結実します。

学生が、この講義を通して、17世紀末「イングランド財政・金融革命」による公信用制度の普及と膨張する国家財政を背景に、18世紀に続々登場する重商主義政策批判の言説を介して、法学を補完する「立法者の科学」として経済学が誕生する過程を理解し、国際社会で主体的に生きるための歴史的思考力を培うことを目指します。

ディプロマポリシーのうち、「DP2」に関連

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授業形態はZoomによるオンライン講義を基本とし、必要に応じて対面での講義を行うハイブリッド形式になります。
毎回の授業で1200～1400字の講義の内容をまとめたリアクション・ペーパーを提出してもらい、これに対する受講者全体へのフィードバックは次回の授業開始時に教員からのコメントとして提示します、またリアクション・ペーパーの内容から見て授業内容の理解が不十分と思われる学生に対しては、個別に「学習支援システム」を通じて添削指導を行います。

なし / No

なし / No

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：重商主義批判の流れ

フランスとスコットランドにおける脱オランダ・モデルの探究。以降14回までの本学期の講義内容は、高校世界史A／Bにおける「産業社会と国民国家の形成：フランス革命と18世紀後半から19世紀までのヨーロッパ・アメリカの経済的・政治的変革」を教授する際に役立つ専門的知識を提供します。

第2回：ジョン・ロー

国家債務処理システムのプランとその破綻

第3回：ボワギルベール(1)

欲求と富

第4回：ボワギルベール(2)

自然的自由の体制の希求

第5回：Ｊ・Ｆ・ムロン(1)

商業のための立法原理の探究：貿易と産業の連関

第6回：Ｊ・Ｆ・ムロン(2)

貨幣と信用

第7回：Ｒ・カンティロン(1)

商業の一般法則の分析

第8回：Ｒ・カンティロン(2)

市場価格と貨幣流通

第9回：Ｆ・ケネー(1)

「経済表」：国富の循環の分析

第10回：Ｆ・ケネー(2)

フィジオクラシーと合法的専制主義

第11回：Ａ・スミス(1)

スミスによる基本概念の整理：資本・分業・交換

第12回：Ａ・スミス(2)

「重商主義体系」批判

第13回：Ａ・スミス(3)

経済発達の自然的過程と制度の影響

第14回：Ａ・スミス(4)

公債批判と国家財政論

学生は、毎回の講義の後に、A4サイズのリアクション・ペーパー(オンライン授業の場合はMSワード・ファイル）に1200～1400字で講義の内容をまとめたレポートを作成し、次回の授業の際にそれを提出します。これに必要な学習時間は1～2時間です。講義の内容のどの点についてまとめるかは、授業中にお知らせします。毎回教員が目を通し、合格すればレポート評価分の点数として10点加算され、合格水準に満たないものは必要箇所を修正して再提出して頂きます。

とくにテキストは指定せず、私の講義ノートにそって授業を進めます。毎回、授業でレジュメと資料を学習支援システムを通じて配布します。

イシュトヴァン・ホント『貿易の嫉妬』（昭和堂、2009年）
ラース・マグヌソン著、熊谷次郎・大倉正雄訳『重商主義：近世ヨーロッパと経済的言語の形成』（知泉書館、2009年）
米田昇平『欲求と秩序：18世紀フランス経済学の展開』（昭和堂、2005年）
ジャン=フランソワ・ムロン著、米田昇平・後藤浩子訳『商業についての政治的試論』（京都大学学術出版会、2015年）

毎回の講義内容をまとめたレポート（40％）と秋学期末の定期試験の成績（60％）で評価します。授業でとりあげる各思想家が置かれていた歴史的状況と彼らの思想史的な重要性についての理解度を基準として評価します。

歴史状況の具体的な認識を促進するため、写真や地図、動画などを教材として有効に利用します。