文学部Faculty of Letters

　アメリカ文学の「アメリカンネス」とは何かを考えながら、アメリカ文学史を概観する。
　春学期Ａは、植民地時代の文学から19世紀中葉の南北戦争前までのアメリカ文学の歴史を、ピューリタニズムという宗教問題、黒人やネイティヴ・アメリカンであらわになる人種問題、産業革命と近代的自我の不安の問題、人間中心主義問題などとアメリカ作家・文学との関連を考えながら、たどる。
　目的は、
(1)アメリカ文学の流れをたどり、その特質を考えることと、
(2)積極的に作品を読み文学テキストに触れること、
により、アメリカ文学の歴史的なパースペクティヴを得ることである。

(1)英語で書かれた代表的なアメリカ文学作品について理解している。
(2)アメリカ文学を構成する主要な作家と脇役の顔ぶれを知る。
(3)アメリカ文学作品の背景的知識を得ている。
(4)文学作品の鑑賞方法を身につける。
(5)アメリカ文学作品で描かれている、国・地域の歴史と文化について理解している。
(6)アメリカ文学について人に語れる。
(7)好きな作家・作品から将来も読書がひろがっていくという感覚をもてる。

ディプロマポリシーのうち、「DP3」「DP4」に関連

日本語 / Japanese

　アメリカ文学とはどんな文学なのか、歴史的に概説する。どんな作家がいてどんな作品があるのか、どのような背景があるのか、どんなふうに読み取れるのか、どんなふうにむつかしいのか、おもしろいのか、などを解説していきたい。背景の知識についても触れる。参加者は自分から積極的に作品を読むことが求められる。
　前期のＡでは17世紀初頭の植民地時代から南北戦争のころまでを扱う予定。
　講義。ほぼ毎回ハンドアウト（プリント）を配布する。可能な限り「講義」の原稿をこしらえてそれも資料とする。学習支援システムの「教材」に資料を入れる。
　昨年度は、コロナ禍とは無関係なプランとして、(1)ボルヘスの文学史を教科書とし(けっきょく電子化して英語原書＋注釈書を配布)、(2)レポートは１作品のみとしたのでしたが、今年は（１）なんでもいいから米文学史の本を各自１冊読むこと、（２）レポートは３作品、３本とすること、に改めます。
　提出されたリアクションペーパーなどにおけるコメント・質問へは、そのうちのいくつかを取り上げ、全体に対してフィードバックをおこない、議論に活かします。
　

あり / Yes

なし / No

春学期

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：移民の国アメリカ

イントロダクション：アメリカという国の性格について。

第2回：植民地時代の文学I

ピューリタニズムとタイポロジカルな想像力。

第3回：植民地時代の文学II

エレジーと名前の重要性。

第4回：ベンジャミン・フランクリンの自伝

アメリカの宗教と理神論(Deism) について。プロテスタンティズムと資本主義の精神。自伝とフィクション。

第5回：チャールズ・ブロックデン・ブラウンとアメリカン・ゴシックの伝統

ノヴェル対ロマンス。ゴシック・ロマンス。

第6回：ジェイムズ・フェニモア・クーパー

"Leather-Stocking Tales"とウェスタン的英雄像。フロンティアと文学的想像力。

第7回：ワシントン・アーヴィング

ゴシックの変容とアメリカ的ユーモア。アメリカの短篇小説。

第8回：エマソンとアメリカ超絶主義

アメリカ的ロマン主義と自己信頼。ソローとホイットマン。

第9回：エドガー・アラン・ポー

ロマン主義とゴシック。ゴシックの多様性。芸術至上主義と象徴主義。

第10回：ホーソーンとロマンス

ホーソーンの小説論。ノヴェル対ロマンス(2)。

第11回：メルヴィルの小説

小説の極限について。長篇・短篇・詩。

第12回：感傷小説の伝統

大衆小説、高級小説。プロット、ストーリー、キャラクター。女性読者・女性作家・男性作家。

第13回：ホイットマンとディキンソン

詩の独自性と現代詩へのつながり。アメリカ詩の伝統。

第14回：南北戦争その他

19世紀の文化と社会

　レポート課題の作品を読んで考えること。積極的に他の作品も読むこと。なんでもいいのでアメリカ文学史の本を必ず一冊読むこと（試験において確認する）。レポート該当作品も含めて代表的作品リストを初回に配布する。

　プリントを配布する。研究書・論文・参考書等は折に触れて提示したりプリントを配ったりリストを配ったりする。学習支援システムの「教材」にきほんは回ごとのフォルダーにしてさまざまな資料ファイルを放り込む。

　現在日本人の書いた最も充実した米文学史の本は、渡辺利雄の『講義　アメリカ文学史 [全４巻]』（研究社、2007, 2010）であろう。文学的洞察としてより（興味）深いのは小説家でもある平石貴樹の『アメリカ文学史』（松柏社, 2010)。英語で書かれたもので、すぐれたものは、やや古いが、英国の学者によるMarcus Cunliffe, Literature of the Unites States (1964; rpt. Pelican Books) だと思う。米国内の多文化主義的な文学史の見直しの流れを受けとめたうえで詳細なのは Emory Elliott の The Columbia Literary History of the United States (Columbia UP, 1988) 1263pp.である。おそらく最も短くて文学趣味的なのはアルゼンチンの作家ボルヘスの文学史講義をもとにした Introduction to American Literature (Schocken, 1974) 95pp.である（柴田元幸の翻訳が出ている）。
　さまざまな主題からの文学史的な本は、授業で折に触れて紹介する。古典的研究書を２冊だけ前もってあげておくなら、正統キリスト教の視点から書かれた、ホーソーン学者 Randall Stewartの、American Literature and Christian Doctrine (1958)（邦訳『アメリカ文学とキリスト教』）、アメリカ小説をハイブリッドなロマンス=ノヴェルとしたRichard Chaseの、The American Novel and Its Tradition (1958)（邦訳『アメリカ小説とその伝統』）。

(1)授業内小テストならびにリアクション・ペーパー（20％）、 (2)３作品を読んでのレポート（40％）、(3)期末試験（40％）、で総合的に評価する。レポートは、きちんと自分で読んでいれば合格点は付く。盗用（無断引用）があれば、失格ないし大幅な減点となる。

むつかしくなりすぎないようにやさしく語ること。やさしくなりすぎないように論理を構築すること。

　後期（秋学期）の「米文学史B」との継続履修が望ましい。