文学部Faculty of Letters

日本近世文学のみならず、本邦の古典を代表する詩人たる芭蕉。その手になる『おくのほそ道』の読解を手がかりに、日本文学の潮流の一つである紀行文学や地誌への理解を深めるとともに、江戸時代の新興文芸である俳諧の特質と、そこに底流する和歌・謡曲をはじめとする日本文化のエッセンス、特に名所や歌枕の概念を学ぶ。また、その主な経路となった東北地方の歴史的な位置づけについて知ることを通して、東国文化の特質や「日本」とはいかなる文化なのかを考える。

１、紀行文学や地誌の歴史や、他の散文・韻文文芸との関係を理解する。
２、俳諧という文芸の特質や、その代表者の一人である芭蕉の生涯とその芸術について理解する。
３、『おくのほそ道』の文学作品としての特色を説明できるようになる。
４、我々も現在その一部に属している東（あずま）という土地の歴史性に興味をもち、そのことについて自分なりの意見を述べることができるようになる。

ディプロマポリシーのうち、「DP1」「DP2」に関連

日本語 / Japanese

主に質疑応答を含めた講義形式（適宜資料を配付する）で進めるが、必要に応じて討論や作業（授業内課題など）も行う。

あり / Yes

なし / No

春学期

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：ガイダンスと概説

授業の概要の説明
芭蕉の図像としてのイメージに触れる。

第2回：俳諧の歴史と展開

俳諧文芸の史的展開と、そこに芭蕉がいかに位置付けられるかを知る。

第3回：俳人芭蕉の生涯①

芭蕉の前半生について解説し、その作品（談林時代）を鑑賞する。

第4回：俳人芭蕉の生涯②

芭蕉の後半生について解説し、その作品（漢詩文調～蕉風開眼以後）を鑑賞して、俳風の変遷を学ぶ。

第5回：『おくのほそ道』の諸本とその形態

『おくのほそ道』の諸本とその関係を確認し、紀行文としての特色を知る。

第6回：読解①（発端・出立）

旅の目的となっている歌枕とは何かを知る。

第7回：読解②（第一夜）

江戸時代の「日本」認識と「東国」・「奥羽」の歴史とイメージを知る。

第8回：読解③（室の八島）

歌枕「室の八島」の変遷とその背景に見える当地の歴史を学ぶ。

第9回：読解④（日光１）

能・謡曲からの影響と、「東国」の聖地としての日光の歴史を学ぶ。

第10回：読解⑤（日光２）

同行者である曽良の経歴と謎の多い半生について知り、日光との関わりを探る。

第11回：読解⑥（白河の関）

歌枕「白河の関」の和歌における本意を学び、本文に見える芭蕉の作意を知る。

第12回：読解⑦（壺の碑）

東北各藩の歌枕に対する眼差しと、「壺の碑」の来訪で芭蕉が得た芸術理論について知る。

第13回：読解⑨（平泉１）

平泉の古戦場としての歴史を知り、芭蕉の歴史観を考察する。

第14回：読解⑩（平泉２）・全体のまとめ

後半部を中心に、不易流行論との関係を主題に読み解く。

事前に『おくのほそ道』全文を読み通しておくこと。また、毎授業前に該当箇所の本文・語釈・現代語訳などを確認しておく。授業後には、配布資料や板書事項を中心に復習しておく。本授業の準備学習・復習時間は、各2時間を標準とします。

穎原退蔵・尾形仂訳注『新版おくのほそ道』〈角川ソフィア文庫〉（角川書店、2003年３月）￥760

※同出版社・同レーベルの「ビギナーズ・クラッシクス」版は避けて下さい（内容に差異があります）。

阿部喜三男・久富哲雄著『増訂版　詳考奥の細道』（日栄社、1979年11月）
堀切実編『『おくのほそ道』解釈事典』（東京堂出版、2003年７月）
上野洋三・櫻井武次郎校注『芭蕉自筆　奥の細道』〈岩波文庫〉（2017年7月）

※そのほか多数。

期末試験60％・小テスト30％・平常点10％

学生のコメントに対するフィードバックが充分に行えなかった反省を踏まえ、できる限りきめ細かい対応を目指したいと思います。