スポーツ健康学部Faculty of Sports and Health Studies
CLS300IA(外科系臨床医学 / Clinical surgery 300)スポーツ医学ASports Medicine A
木下 訓光Norimitsu KINOSHITA
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | スポーツ健康学部Faculty of Sports and Health Studies |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2024 |
授業コードClass code | M2370 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 春学期授業/Spring |
曜日・時限Day/Period | 水3/Wed.3 |
科目種別Class Type | 講義 |
キャンパスCampus | 多摩 |
教室名称Classroom name | 健207 |
配当年次Grade | 3~4 |
単位数Credit(s) | 2 |
備考(履修条件等)Notes | |
他学部公開科目Open Program | |
他学部公開(履修条件等)Open Program (Notes) | |
グローバル・オープン科目Global Open Program | |
成績優秀者の他学部科目履修制度対象Interdepartmental class taking system for Academic Achievers | |
成績優秀者の他学部科目履修(履修条件等)Interdepartmental class taking system for Academic Achievers (Notes) | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | ○ |
SDGsCPSDGs CP | |
アーバンデザインCPUrban Design CP | |
ダイバーシティCPDiversity CP | |
未来教室CPLearning for the Future CP | |
カーボンニュートラルCPCarbon Neutral CP | |
千代田コンソ単位互換提供(他大学向け)Chiyoda Campus Consortium | |
カテゴリーCategory |
専門教育科目 ヘルスデザインコース専門科目 |
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Outline (in English)
[Course outline] The lecture intends to provide the basic, practical, and up-to-date knowledge of medical conditions in relation to physical activity, exercise, and sports except for traumatic injuries according to the scientific evidences. The lecture consists of the following three parts; 1) physiology of adaptative responses to exercise and environmental stresses, 2) case presentation and discussion (individual or group based) of the medical conditions, and 3) pathophysiology, mechanisms, and treatment of the medical conditions.
[Learning objectives] The substantial goal of the lecture is as follows: 1) to understand physiology of homeostasis and acute and chronic adaptation to exercise and environmental stresses, 2) to obtain practical skills of logical assessment of the medical conditions and of developing individual strategy for health promotion through exercise, and 3) to be able to provide evidence-based advice to athletes and all other people in sports field.
[Learning activities outside of classroom] Students have to study and prepare for each classroom by using handout materials uploaded to the learning management system beforehand. Total hours for studying outside of classroom is estimated to be 4 hours; 2 hours beforehand and 2 hours afterward.
[Grading criteria/policy] The grading will be determined by the score of the term-end examination (100%, as a rule but please refer to the following). Participation in case discussion will be evaluated on basis of quality of opinions and attitudes of students. A quiz (“mini test”) may be provided in the classroom. The score of the discussion and quiz would be considered to determine the final score of the term-end examination. CAUTION: To take photos of any materials presented in the classroom or to record the lecture is prohibited. Students who violate this rule and take photos or record any materials presented in the classroom without permission are not allowed to take the term-end examination.
授業で使用する言語Default language used in class
日本語・英語併用 / Japanese & English
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
スポーツ障害のうち、外傷を除いた全領域の中から、up-to-dateでpracticalな内容を選りすぐって講義する。
スポーツは身体的・精神的・環境的ストレスへの挑戦であり、ヒトは恒常性(ホメオスタシス)を維持するため運動と環境のストレスに巧妙に適応する。その適応が破綻した状態がスポーツ障害である。スポーツ障害を理解するためには以下の点が重要である。
① ヒトはいかにして運動中に体内の恒常性を維持するか
② 運動によってどのような適応が起きるのか
③ いかにしてその適応や恒常性が破綻するのか
④ 適応や恒常性が破綻するといかなる事態に遭遇するか
⑤ その事態にいかに対処するか
本授業では、全身の臓器を系統的に扱いつつ、上記について、運動だけでなく環境ストレスへの適応とその破綻も含めて講義を行う。
到達目標Goal
目標1 巷にはスポーツ医学に関連した誤情報が多い。エビデンスを正しく理解し、フェイクに立ち向かいスポーツをする人々にとってよき助言者になれる。
目標2 単なる知識ではなく、real worldのアスリートの障害を適切に予防し、対処することができるようになる。
目標3 スポーツを通じて健康を維持・増進し豊かな人生を送るために必要な医学的基礎を習得する。
この授業を履修することで学部等のディプロマポリシーに示されたどの能力を習得することができるか(該当授業科目と学位授与方針に明示された学習成果との関連)Which item of the diploma policy will be obtained by taking this class?
ディプロマポリシーのうち、「DP1」「DP2」に関連
授業で使用する言語Default language used in class
日本語・英語併用 / Japanese & English
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
授業は以下の3部構成で行う。
① 扱う疾病・障害に関連した臓器や機能の正常について:解剖、組織、生理学、運動生理学の基本的事項を復習
② 実際のスポーツ障害の症例提示とその検討・討論(グループディスカッションやプレゼンテーションなど)
③ 病的破綻(障害)の各論について解説
重要な留意事項
① 原則として各回ごとに完結するテーマを設定して、スライドによる講義形式で行う。いくつかのテーマは関連し、前段までの講義を踏まえながら学習するため、各回の講義の内容を段階的かつ連続的に習得していかなければならない。
② 実際にスポーツ現場や健康管理関連事業の中で直面する可能性のある状況を念頭に講義する。
③ 可能な限り各回の授業の前週末までにスライドのハンドアウトを授業支援システムにアップロードする。
④ 各回の授業ではkeyword, take-home message, summaryを適宜提示する。
⑤ 講義中の質疑応答を奨励する。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
授業形態/methods of teaching:対面/face to face
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
1[対面/face to face]:COVID-19がスポーツにもたらしたもの
―Long COVIDとアスリート―
COVID-19が単なる呼吸器感染症ではなく、全身疾患であること、また呼吸器系・神経系の異常が継続する(Long COVID)ことがわかっているが、Long COVIDはアスリートにおいて見過ごされていることも多く、スポーツ医学における新たな課題となっている。
① 新型コロナウイルス感染症
② 症例提示・検討
③ COVID-19の合併症およびLong COVIDとアスリートについて学習する。
2[対面/face to face]:スポーツ心臓病学(1)突然死とメディカルチェック
スポーツ選手の突然死はスポーツドクター、トレーナー、指導者、学校関係者すべてにとっての最重要な課題である。スポーツに携わるものすべてが、絶対にアスリートを競技中に死なせないという使命感を持つべきである。
① 心臓循環生理
② 症例提示・検討
③ スポーツ選手の突然死の機序・実態・予防法について医学的なエビデンスに基づき学習する。合わせてメディカルチェックについても学習する。
※同一教員による「スポーツリスクマネジメント」の授業でも扱うテーマであるが、本授業では、豊富な症例を提示し、症例検討から多くを学ぶ形式で、より臨床的な内容を講義する予定である。
3[対面/face to face]:スポーツ心臓病学(2)スポーツ心臓
どのような時にスポーツ心臓という診断が下されるのか。スポーツ心臓と言われたらどうしたらよいのか、その時学校やスポーツ指導現場では何が重要か。
① 心臓循環生理
② 症例提示・検討
③ スポーツ心臓の定義、発生機序、心疾患との鑑別、などについて学習する。
4[対面/face to face]:呼吸器疾患・大気汚染とスポーツ
運動強度が上がるとなぜ「苦しくなる」のか?病的呼吸困難との違いは?人が運動する時に最も意識させられるのが「呼吸」である。スポーツにおける呼吸の病理について学習する。
① 呼吸(換気・ガス交換)とその制御の生理学
② 症例提示・検討
③ 喘息とスポーツ、運動誘発性喘息、運動誘発性喉頭閉塞症、運動(水泳)誘発性肺水腫(浸漬性肺水腫)、過換気症候群などについて学習する。大気汚染とスポーツ活動、呼吸器感染症としてのインフルエンザなどについても学習する予定である。
5[対面/face to face]:熱中症と脱水
発症の病態生理を理解すれば、酷暑のスポーツ活動でも熱中症は予防できる。
① 体温・体液調節のホメオスタシス
② 症例提示・検討
③ 熱中症の診断、治療、予防に加え、重篤な合併症である横紋筋融解症についても学習する。
※同一教員による「スポーツリスクマネジメント」の授業でも扱うテーマであるが、本授業では、より臨床的な内容を講義する。
6[対面/face to face]:高所・寒冷環境とスポーツ
ヒトはなぜエベレストに無酸素で登頂できたのか?高地トレーニングは本当に効果があるのか?実はスポーツ現場でも多い低体温症のサバイバル法は?
① 寒冷環境、低圧環境(高地)における適応の生理学
② 症例提示・検討
③ 登山の医学、高山病、ウィンタースポーツの医学、寒冷障害(低体温症、凍傷など)について学習する。また、いわゆる高地トレーニングについて、その理論的根拠、効果に関するエビデンスなどについても学習する予定である。
7[対面/face to face]:貧血のスポーツ医学
「スポーツ貧血」と言うなかれ。アスリートの貧血の原因はスポーツではない。
① 造血のメカニズム
② 症例提示・検討
③ スポーツ選手の貧血をどのように考え、予防するかについて学習する。
8[対面/face to face]:内分泌疾患とスポーツ
―ホルモンのスポーツ医学―
“Hit the wall”は低血糖?でも健康な人が運動しても低血糖にはならないはずでは?不整脈や貧血の原因がホルモンの異常?その疲労は下垂体機能異常が原因かも?内分泌疾患の治療薬の多くはアンチドーピングの禁止薬物だが、診断されたらどうする?
① 内分泌機能(ホルモン分泌)の生理学
② 症例提示・検討
③ 糖尿病(特にⅠ型)、甲状腺疾患、下垂体・副腎皮質系異常を有するアスリートについて学習する。また日本ではまだ馴染のない「Male athlete triad(男性選手の三主徴)」についても触れる予定である。
9[対面/face to face]:感染症と免疫、アレルギーのスポーツ医学
感染症は選手やチームのパフォーマンスを突如として落とす身近なリスクである。感染から体を守る仕組みが免疫だが、正常に機能しなければ疾患の原因にもなる。
① 感染と免疫、アレルギー反応の医学・生理学
② 症例提示
③ 感染症については伝染性単核球症などの全身感染症や皮膚感染症について、免疫異常については筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群、アレルギーについては(食物依存性)運動誘発アナフィラキシー、運動誘発性蕁麻疹(コリン性蕁麻疹)などについて学習する。
10[対面/face to face]:水辺と海のスポーツ医学
―アプネア、潜水、溺水―
息止めの世界最高記録は11分54秒であり、素潜りの潜水深度記録は214mである(2023年時点)。その時ヒトの体には何が起きているのか?
① アプネア競技と潜水の生理学
② 症例提示・検討
③ 低酸素血症、減圧症、圧外傷、溺水の機序と対処法について学習する。可能な範囲でマリンスポーツに関連した障害についても扱う予定である。
11[対面/face to face]:女性のスポーツ医学
2023年にREDs(Relative energy deficiency in sport)が再定義された。男性REDsのエビデンスも増えている。アスリートの無月経には本当にピルの処方が必要なのか?Low energy availabilityは悪くない?講義を通じて古い知識や先入観を払拭する。
① 女性の生殖・性腺機能、energy availability
② 症例提示・検討
③ スポーツ障害としてのProblematic low energy availability、女性選手の三徴、REDsについて学習する。運動に伴う一過性で正常な適応反応としての(むしろパフォーマンス促進に必要な過程としての)Adaptable low energy availabilityについても触れる。また経口避妊薬(ピル)、妊娠とスポーツについても学習する。
12[対面/face to face]:消化器系の異常とスポーツ
運動してわき腹が痛くなる(side stitch)のはなぜか?試合が近くなると下痢をしてしまう、どうしたらよいか?
① 消化器系の医学・解剖学・生理学
② 症例提示・検討
③ 肝炎、Exercise-related transient abdominal pain (ETAP)、過敏性腸症候群、運動誘発性腸症候群などについて学習する。
13[対面/face to face]:腎臓とスポーツ
若年アスリートのメディカルチェックで最も多く経験する異常が、血尿・蛋白尿である。
① 酸塩基平衡と電解質バランス、腎機能の生理学
② 症例提示・検討
③ 顕微鏡的血尿、運動後タンパク尿、トレーニングによる肉眼的血尿、IgA腎症、腎疾患(透析)とアスリート・スポーツなどについて学習する。
14[対面/face to face]:精神神経疾患とスポーツ
オーバートレーニングは簡単に診断できる病態ではなく、"over diagnosis"(過剰診断)であることも多い。アスリートの摂食障害は一般の人の摂食障害と何が違うのか?怪我を繰り返すのには心理的原因がある?
① アスリートのストレス反応と回復・適応について
② 症例提示・検討
③ スポーツ選手の摂食障害、いわゆる「オーバートレーニング」、injury prone athleteなどについて学習する。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
① 授業支援システムにアップロードしたハンドアウトを用いて予習をすること。ハンドアウトは授業で講義する内容のうちポイントとなる部分を除いて作成するので、予習および講義のなかでこれを補完し学習に役立てること。
② 各回の講義の中でも、keyword, take-home message, summaryなど、重要な概念や用語を適宜まとめて提示するので、それらを手掛かりにして復習をすること。
③ 各回のテーマに沿った課題を授業内で適宜提示するので、必ず取り組み、理解を深めるための自習に活用すること。
④ 下記【参考書】欄に掲載されたもの以外に、各回のテーマに沿って講義内容の習得または習得した知識の発展に役立つと考えられる書籍、文献、資料を適宜紹介するので、予習、復習などに積極的に活用すること。本授業の準備学習・復習時間は各 2 時間 を標準とする。
テキスト(教科書)Textbooks
特に定めないので、下記参考書を参照のこと。
参考書References
【最も強く推奨する参考書】
・"Medical Conditions in the Physically Active 4th Edition" by Katie Walsh Flanagan, Micki Cuppett. (Human Kinetics, 2024)※2024年4月資料室収蔵予定、旧3版は図書館、資料室ともに収蔵なし。
【その他の参考書】
・日本スポーツ協会指導者育成専門委員会スポーツドクター部会 『スポーツ医学研修ハンドブック 基本科目・ 応用科目』(文光堂、2011)※図書館および資料室収蔵
成績評価の方法と基準Grading criteria
期末試験(原則100%、ただし下記※参照):講義各回に提示する重要点を中心に作成した複数の設問を、各テーマについて満遍なく網羅した試験問題によって評価をする。
※授業内で提示された症例について検討する時間を設けることがある。個人またはグループで症例を検討しディスカッションすることがある。授業に先立ちまたは授業内に小課題を課すことがある。症例検討への参加、発言の質や小課題の成果の集積は期末試験の点数と合わせて最終成績を決定するための点数算出に用いる場合がある。
【禁止事項】
授業中に提示するスライドや動画などを許可なく撮影・録画・録音することを禁止する。また授業を録音・録画することを禁止する。これに違背して許可なく撮影・録音・録画を行った学生の定期試験受験を認めない。授業スライドに関連する資料を入手したい場合は必ず教員に相談すること。
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
担当教員の交代に伴い、今年度の担当教員に関する前年度よりのフィードバックはない。
学生が準備すべき機器他Equipment student needs to prepare
可能な限り各回の授業の前週末までに授業支援システムにPDFハンドアウトをアップロードする。各授業回の資料をダウンロードできるのは、原則として授業日当日の深夜までと設定するので注意すること。
その他の重要事項Others
① 授業の展開によって、若干の変更があり得る。
② 『スポーツリスクマネジメント』の履修を済ませていること、または同時に履修していることが望ましい。
【実務の経験】
臨床経験および医学研究歴を有する医師(日本スポーツ協会認定スポーツドクター、日本医師会健康認定スポーツ医)であり、日本スポーツ協会認定スポーツドクターの養成、各種チームドクター、日本臨床スポーツ医学会代議員としてガイドライン策定などにも携わる教員が授業を行う。
【どのように実務経験が授業に反映されるか】
上記診療経験に基づき、スポーツ現場で発生する様々な障害、外傷について、患者症例を供覧しながら理解し、学生がその発症機序を医学的に理解して対処できるように講義する。