市ヶ谷リベラルアーツセンター(ILAC)ILAC Course
LIT200LA(文学 / Literature 200)日本文学と文化LGJapanese Literature and Culture LG
新海誠の文学世界
榎本 正樹Masaki ENOMOTO
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | 市ヶ谷リベラルアーツセンター(ILAC)ILAC Course |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2024 |
授業コードClass code | Q1323 |
旧授業コードPrevious Class code | P1245 |
旧科目名Previous Class title | 文学Ⅰ |
開講時期Term | 春学期授業/Spring |
曜日・時限Day/Period | 火4/Tue.4 |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 市ヶ谷 |
教室名称Classroom name | 市G‐G503 |
配当年次Grade | 法文営国環キ1~4年 |
単位数Credit(s) | 2 |
備考(履修条件等)Notes | |
他学部公開科目Open Program | |
他学部公開(履修条件等)Open Program (Notes) | |
グローバル・オープン科目Global Open Program | |
成績優秀者の他学部科目履修制度対象Interdepartmental class taking system for Academic Achievers | ○ |
成績優秀者の他学部科目履修(履修条件等)Interdepartmental class taking system for Academic Achievers (Notes) | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
SDGsCPSDGs CP | |
アーバンデザインCPUrban Design CP | |
ダイバーシティCPDiversity CP | |
未来教室CPLearning for the Future CP | |
カーボンニュートラルCPCarbon Neutral CP | |
千代田コンソ単位互換提供(他大学向け)Chiyoda Campus Consortium | |
選択・必修Optional/Compulsory | |
カテゴリー(2017年度以降)Category (2018~) |
2017年度以降入学者 ILAC科目 200番台 リベラルアーツ科目 1群(人文分野) |
カテゴリー(2016年度以前)Category (2017) |
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Outline (in English)
【Course outline】
Shinkai Makoto is Japanese animation director. His animation film is highly acclaimed not only in Japan but also overseas. In 2019, "Weathering With You" was released. Latest work "Suzume no Tojimari" was released in 2022. I decode Shinkai’s all animation works from various viewpoints.
【Learning Objectives】
The goal of this course is for students to acquire the skills to analytically decipher Makoto Shinkai animations as a visual works, scene by scene, and to be able to discuss in their own words the unique expression methods and narrative structure of animation.
【Learning activities outside of classroom】
When watching animations or reading novels, develop the habit of objectively writing and talking about the details of the story in your own words, rather than just passively watching the film or reading the novel. Your study time will be more than four hours for a class.
【Grading Criteria /Policy】
Grade will be based on reports 100%.
There will be no examinations.
The theme of the report is "Select one or more of Shinkai’s works discussed in class and wrapping up the report". Based on the content of the class, develop your own argument in your own words about the work you have chosen, based on the theme you have set for yourself.
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
新海誠監督のアニメーション映画『君の名は。』(2016年)は、近年の日本映画空前の大ヒット作品として、多くの観客の支持と共感を得ました。国内観客動員数1,900万人を突破、興行収入250億円を超える大ヒットとなり、邦画興行収入歴代3位、アジア圏では7冠達成を記録し、日本のみならず世界各国の記録を塗り替えました。2019年には『天気の子』が、2022年には最新作『すずめの戸締まり』が封切られ、アニメーションという枠組みを越え、多くの観客に迎え入れられました。『すずめの戸締まり』が、ベルリン国際映画祭やゴールデン・グローブ賞など、海外の主要な映画祭にノミネートされた事実からも明らかなように、新海作品の評価は国際的なレベルに到っています。
「新海誠」というアニメーション監督の名前を、『君の名は。』で初めて知った人が多いかもしれませんが、新海監督のキャリアは2000年代初頭にまで遡ることができます。新海作品の根底にあるのは「言葉」に重きを置いた世界造形、言い換えれば「文学」への強い視線です。人と人の間の繊細なコミュニケーションを、精緻な言葉と独自の映像美学によって表現する創作態度は、「アニメーションという表現様式を用いた文学」と形容可能なものです。アニメーションというジャンルの枠を越えて、同時代の重要な表現者の一人として新海誠という存在をとらえ直す必要があります。
新海誠は「アニメーション監督」であるとともに「小説家」でもあります。新海は自身の手で代表作のノベライズ(小説化)を手がけていますが、それらは単に映像作品を言葉の表現に置き換えたものではなく、小説作品として自立しています。同一の作者の手による映画と小説を比較検討することで、映像と小説の表現レベルの違いを検証することが可能になるのです。
本講義では、新海誠の初期作品から最新作まで入手可能な映像作品を参観しつつ、「新海誠の文学世界」を紐解いていきます。国民的アニメーション作家としての地位を築きつつある、同時代の先端的な表現者である新海誠の主要作品を「網羅的」に観賞し、かつ「分析的」に解読する経験を通して、作品批評の技術を獲得します。
到達目標Goal
映像作品であるアニメーションをシーンやカットごとに解読する技術を身につけ、アニメ固有の表現方法やギミックや物語構造などについて、自分の力で読み解き、論述できる段階を目指します。関連資料を参照し、他者の意見や論考に目を通し、(時間的に可能であれば)作品のモデルとなった場所に実際に訪れてみることで、作品の背景にある文化的、社会的、民俗的、歴史的、地理的背景について深く学び、作品を客観的に論じる力を得ます。
この授業を履修することで学部等のディプロマポリシーに示されたどの能力を習得することができるか(該当授業科目と学位授与方針に明示された学習成果との関連)Which item of the diploma policy will be obtained by taking this class?
各学部のディプロマ・ポリシーのうち、以下に関連している。法学部・法律学科:DP3・DP4、法学部・政治学科:DP1、法学部・国際政治学科:DP1、文学部:DP1、経営学部:DP3、国際文化学部:DP2、人間環境学部:DP2、キャリアデザイン学部:DP1
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
授業はプレゼンテーション(資料提示)と講義を併せた形で行います。新海誠監督作品を初期から最新作まで観賞しながら(時間的な制約から一部となります)、解説と分析を加えていきます。アニメーションで重要なのは、シーンを構成する一つひとつの短いカットです。カットは継起的な物語を構成する最小の「部品」ですが、同時にクリエーターの「世界そのものへの純粋な視線」が投影されています。
もう一点、重要なのは、新海作品において言葉(ナレーション、モノローグ【独白】、ダイアローグ【対話】)の果たす意味です。本授業では特に言葉の要素に注目し、物語の中で作用しあう言葉が、どのようにコミュニケーションの主題を開示していくのか細かく見ていきます。
さらに新海監督自身の言葉、関連資料の紹介や他の論者の考察など、作品をめぐる多様な言説を紹介する機会も設けます。
授業内容に関する質問は、学習支援システムの授業内掲示板またはDMで受け付けます。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
なし / No
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
授業形態/methods of teaching:対面/face to face
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
1[対面/face to face]:イントロダクション
新海誠、その人と作品について
2[対面/face to face]:『遠い世界』『彼女と彼女の猫
最初期作品を再検討する
3[対面/face to face]:『ほしのこえ』
物理的な「距離」と精神的な「距離」
4[対面/face to face]:『雲のむこう、約束の場所』
装置としてのSF
5[対面/face to face]:『秒速5センチメートル』
「風景」と「速度」をめぐる物語
6[対面/face to face]:『星を追う子ども』前半
「物語」への接近
7[対面/face to face]:『星を追う子ども』後半
「異界」への移動と帰還
8[対面/face to face]:『言の葉の庭』
映像美学を支える文学性
9[対面/face to face]:『君の名は。』前半
「入れ替わり」と「すれ違い」の趣向
10[対面/face to face]:『君の名は。』後半
「共苦」する魂のゆくえ
11[対面/face to face]:『天気の子』前半
「規範」を逸脱するということ
12[対面/face to face]:『天気の子』後半
人身御供譚としての読み解き
13[対面/face to face]:『ずずめの戸締まり』前半
「移動」と「出会い」の物語
14[対面/face to face]:『ずずめの戸締まり』後半
震災アニメとしての意味と意義
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
アニメーションを観たり小説を読む際に、受動的に観賞するのではなく、自分の頭で積極的に考え、客観的に書いたり話したりする習慣をつけましょう。授業で取りあげる映像作品や小説を観たり読んだりする中で得た「気づき」をメモにとったり、疑問点や重要なポイントと思われる箇所についてまとめる作業を随時行ってください。
機会があれば、作品のモデルとなった場所を訪問してみる「聖地巡礼」に挑戦してみてください。なぜその場所が選ばれたのか、その場所がシーンの中でどのような意味を与えられているのか、体験的に学習してください。
本授業の準備・復習時間は、各2時間を標準とします。
テキスト(教科書)Textbooks
榎本正樹『新海誠の世界 時空を超えて響きあう魂のゆくえ』(KADOKAWA、2021年)
*電子書籍もあります。
参考書References
授業で扱う新海誠のノベライズ作品は参考書とします。必要に応じて、個人で入手してください。『小説 秒速5センチメートル』『小説 言の葉の庭』『小説 君の名は。』『小説 天気の子』『小説 すずめの戸締まり』とも(以下リンク参照)、角川文庫で入手可能です(電子書籍版もあります)。
http://www.kadokawa.co.jp/product/321510000146/
http://www.kadokawa.co.jp/product/321510000145/
http://www.kadokawa.co.jp/product/321603000121/
https://www.kadokawa.co.jp/product/321903000333/
https://www.kadokawa.co.jp/product/322203001170/
*その他の参考書・参考文献や参考サイトは別途指示します。
成績評価の方法と基準Grading criteria
レポートで評価します(100%)。
試験や小テストはありません。
レポートのテーマは、「授業で取りあげた新海監督作品の中から、一作品または複数の作品を選び、作品論を展開する」というものです。授業内容を踏まえ、自分が選んだ作品について、自分で設定したテーマに基づき、自分の言葉で論を展開してください。
分析の鋭さ、考察の深さ、文章の正確さ、構成の巧みさなどを中心に採点します。詳細は、初回のガイダンス授業時に説明します。
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
これまで新海作品に触れる機会がなかった学生にも、理解しやすい授業を心がけます。
可能な限り映像作品を観る機会を増やします。
その他の重要事項Others
アニメーションや現代日本文学、同時代の表現に関心をもつ学生の履修を歓迎します。
榎本のプロフィールや研究・評論活動は、サイト(http://enmt.jp)で確認できます。X(@enmt)での情報発信も行っていますので、履修時の参考にしてください。