公共政策研究科Graduate School of Public Policy and Social Governance

　近年、あらためて日本政治史において対日占領期の持つ意味を問う研究が上梓されている。本授業は、連合国―といっても主力は米国であったが―による対日占領と、米国による琉球／沖縄占領とを比較しながら、第二次大戦後の日本占領について再検討・再評価を試みるものである。いわゆる日本本土占領および琉球／沖縄占領にかかわる一次資料・研究論文・文献の精読を踏まえたうえで、受講生と議論を行いたい。

　受講生は、占領史に関する先行研究を踏まえたうえで、日本政治史における対日、対琉球／沖縄占領の光と影の所産を的確に把握・評価できるようになることが求められる。

ディプロマポリシーのうち、公共政策学専攻公共マネジメントコースにおいては「DP1」「DP3」に関連している。ディプロマポリシーのうち、公共政策学専攻政策研究コースにおいては「DP1」「DP2」「DP3」「DP4」に関連、特に「DP4」は特に強く関連している。

日本語 / Japanese

　テキストとしては、福永文夫『日本占領史 1945-1952　東京・ワシントン・沖縄』（中央公論新社、2014年）および櫻澤 誠『沖縄現代史　米国統治、本土復帰から「オール沖縄」まで』（中央公論新社、2015年）を精読し、議論する。
　なお、２回目以降となるが、授業のはじめに課題（試験やレポート等）に対して講評し、受講生に対してフィードバックを行う。

あり / Yes

なし / No

春学期

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：対日占領性政策の立案

SWINCC150シリーズ、JCS1380シリーズ、ポツダム宣言、ブラックリスト作戦の形成

第2回：対日占領のはじまり

その究極目的

第3回：統治体制の変革

象徴天皇制と主権在民への道

第4回：双面神の憲法構想

「平和憲法」と沖縄要塞化の相関

第5回：対日早期講和の提唱と安保問題

いわゆる芦田メモと沖縄の将来に関する昭和天皇メッセージ

第6回 ：戦後政党政治の起動

占領初期における本土と沖縄の政党活動

第7回 ：対日政策の転換

PPS28シリーズ～NSC13シリーズの形成

第8回：講和論争

日米で二分される国論

第9回：講和準備研究作業

NSC60/1への道、A・B・C・D作業

第10回：講和交渉

日米の外交指導

第11回：対日講和条約の成立

第3条（潜在主権方式）の形成を中心に

第12回：日米安保条約の成立

「安保条約の論理」を中心に

第13回：サンフランシスコ体制

その光と影を考察する

第14回：日本、琉球／沖縄占領とは何だったのか

日本政治史における占領の意味を考察する

　この授業を履修する大学院生は、自ら関連する文献や資料を読んだり、レポート課題に取り組んだりすることにより、各々が適当と判断する時間の、授業時間外学修が必要となる。参考までに、大学設置基準によれば、この授業の準備学習・復習時間は各2時間が標準となる。

福永文夫『日本占領史 1945-1952　東京・ワシントン・沖縄』中央公論新社、2014年。
櫻澤 誠『沖縄現代史　米国統治、本土復帰から「オール沖縄」まで』中央公論新社、2015年。

思想の科学研究会編『共同研究／日本占領』徳間書店、1972年。
竹前栄治『GHQ』岩波書店、1983年。
五百旗頭真『米国の日本占領政策　戦後日本の設計図』上・下、中央公論社、1985年。
坂本義和・R. E. ウォード編『日本占領の研究』東京大学出版会、1987年。
袖井林二郎『吉田茂＝マッカーサー往復書簡集　1945-1951』法政大学出版局、2000年。
賀茂道子『ウォー・ギルト・プログラム　GHQ情報教育政策の実像』法政大学出版局、2018年。

　平常点のみ（100％）。やや詳しくは、授業への積極的な貢献度（出席等）、報告（レジュメ）の内容やプレゼンテーションぶり、議論のようすなどをみて総合的に判断する。

　特になし。

　学習支援システムやオンラインによる授業に参加できるような機器およびネット環境

　重要なお知らせ（2021年2月20日）
　新型コロナ禍により、授業の開始日や方法等につき重要な連絡がなされる可能性がありますので、受講生は本Webシラバスおよび学習支援システムを小マメにチェックするようにしてください。

＜専門領域＞　日米関係史、日本政治外交史
＜研究テーマ＞　日米地位協定の成立過程
　　　　　　　　沖縄と日米安保体制の歴史
　　　　　　　　日本と核兵器との関係史
＜主要研究業績および刊行物＞
・『日米行政協定の政治史―日米地位協定研究序説―』法政大学出版局、1999年。
・『沖縄基地問題の歴史―非武の島、戦の島―』みすず書房、2008年（第30回沖縄協会・沖縄研究奨励賞[社会科学部門]受賞）。
・『日米地位協定―その歴史と現在―』みすず書房、2017年。
・波多野澄雄・河野康子監修（明田川補）『沖縄返還関係資料』（第1回配本分、全7巻）現代史料出版、2017年。
・「核兵器と『国民の特殊な感情』」1～6（雑誌『みすず』に2013年6月号より2015年8月まで不定期連載）。
・ジョン・ハーシー『ヒロシマ　増補版』法政大学出版局、2003年（共訳）。
・ジョン・Ｗ．ダワー著『昭和　戦争と平和の日本』みすず書房、2010年（監訳）。
・ジョン・Ｗ．ダワー／ガバン・マコーマック著『転換期の日本へ　「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か』ＮＨＫ出版、2014年（共訳）。
・『占領期年表 1945-1952年　沖縄・憲法・日米安保』創元社、2015年（監修）。
　近年、広島・長崎・ビキニを経験した日本の核兵器に対する〝国民感情〟と政府の安全保障政策との連関について研究をまとまるべく、資料収集や分析視覚の検討を行っている。
　また、1950年代半ばの沖縄で米軍により強行された土地強制収用にさいして、住民代表である立法院（県議会のような組織）がなしえたことと、なしえなかったことの実証にも取り組んできた。
　現在は、波多野澄雄・筑波大学名誉教授ならびに河野康子・法政大学名誉教授による監修で刊行が進められている沖縄施政権返還交渉関係資料集成の編集補佐がおもな仕事となっている。