公共政策研究科Graduate School of Public Policy and Social Governance
POL500P1-125(政治学 / Politics 500)自治体政策実践論1Local Government Policy Studies 1
中嶌 いづみ、押立 貴志、渡部 朋宏Izumi NAKAJIMA, Takashi OSHITATE, Tomohiro WATANABE
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | 公共政策研究科Graduate School of Public Policy and Social Governance |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2021 |
授業コードClass code | X9061 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 秋学期前半/Fall(1st half) |
曜日・時限Day/Period | 土3/Sat.3,土4/Sat.4 |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 市ヶ谷 |
教室名称Classroom name | |
配当年次Grade | |
単位数Credit(s) | 2 |
備考(履修条件等)Notes | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
カテゴリーCategory |
公共政策学専攻 (修士課程)公共マネジメントコース専門科目 |
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Outline (in English)
This lecture is an omnibus on the three themes , local government’s comprehensive planning theory, resident theory, and accident investigation theory. These are indispensable for local government’s policy selection、policy making and exisitance requirement. Through three themes, students can learn the point of view to analyze the local government policy and the national policy for local governments.
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
・地方自治体が、政府として成立し、政策を進めていくうえで欠かせない、総合計画論、住民論、事故調査論の3つのテーマについて、オムニバス形式で授業を行う。3つのテーマを通じて、自治体政策及び自治体に対する国の政策を分析する視点を学ぶ。
・各テーマの概要は以下の通り。
・総合計画論:自治体の9割が策定しているといわれる自治体総合計画について、戦後から現在までを通史的に概観するとともに、現在のあり方について、市民参加や地方政治など多様な角度から考察する
・住民論:東日本大震災及び福島原発事故により避難生活を余儀なくされた住民をテーマとして「住民論」の基礎を学ぶとともに、自治の現場で発生している課題を研究につなげる手法の修得を目的とする。
・事故調査論:国の運輸安全委員会等の事故調査の制度と実務から、刑事手続きの関係を考察し、その問題点を取り上げる。今後増えると考えられる自治体が管理する各種施設内での事故に対する事故調査に、自治体職員として備えるべきことを、法的側面や実務的側面から考察しておくことは重要である。これらを通じて事故調査制度の問題点を理解することにより、制度が果たす効果と負の側面を的確に見つめることの重要性に注目する。
到達目標Goal
・自治体総合計画について歴史的経緯と現状を見る中で、自治体行政の基盤について理解し、学んだ自治体行政についての課題やアプローチ・方法論を必要に応じて各自の学位論文に活かすことができる。
・住民に関する先行研究、関連する各種判例、地方自治制度・住民登録制度の歴史的経過を踏まえ、住民概念の形成過程を理解する。また、より実践に即した研究課題へのアプローチ、方法論を学び、自己の研究テーマを深化させる。
・事故調査の重要な点は科学技術の発展に必要となる事故や失敗の情報共有であるが、一方で情報共有・情報公開に伴う社会的批判や責任追及という実態がある。その意義と目的を考察し、現代社会のあるべき方向性を構想することに到達することが目標である。
この授業を履修することで学部等のディプロマポリシーに示されたどの能力を習得することができるか(該当授業科目と学位授与方針に明示された学習成果との関連)Which item of the diploma policy will be obtained by taking this class?
ディプロマポリシーのうち、公共政策学専攻公共マネジメントコースにおいては、「DP1」「DP4」に関連している。ディプロマポリシーのうち、公共政策学専攻政策研究コースにおいては「DP1」「DP2」「DP3」「DP4」に関連、特に「DP4」は特に強く関連している。
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
・原則として対面で授業を実施(新型コロナウイルス感染状況を踏まえ,十分な安全性が確保されないと判断された場合には,オンラインに切り替える)
・3人の講師によるオムニバス形式での講義を行う。原則として、毎回、講師がパワーポイントなどの資料を準備して講義を行い、レジュメを配布する。
・講義によるほか、総合計画論、住民論、事故調査論のそれぞれのテーマに関し、アクティブラーニングを基本として進める。学生による発表と討論等の諸形式を織り交ぜながら実施する。
・発表や討論について、講師がコメントすることはもちろん、講師への質問や講師との意見交換を行うことで学生へのフィードバックを行う。レポート提出を指示した際には、それについての評価・コメントを次回講義等でフィードバックする。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
秋学期前半
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
第1回:イントロダクション・自治体総合計画の歴史的経緯 (中嶌)
自治体総合計画とは何かを概説し、戦後から現在までの歴史的経緯を考察する。自治体総合計画をめぐる課題を抽出する。
第2回:自治体政治、市民参加と自治体総合計画(中嶌)
自治体政治、市民参加と自治体総合計画の関係について、事例に基づいて分析する。
第3回:自治体総合計画を分析する視点(中嶌)
自治体総合計画についての先行研究を概説し、自治体総合計画を分析する視点を検討する。
第4回:法・条例と自治体総合計画(中嶌)
地方自治法・その他の国法と自治体総合計画の関係、自治体における条例と総合計画の関係を明らかにするための方法を検討し、調査データ等に基づいて考察する。
*自らの住居地や関心のある自治体の総合計画について、報告を希望する場合は、それについてディスカッションを行う。
第5回:東日本大震災と福島原発事故避難の実態(1)(渡部)
初回はイントロダクションとともに、福島原発事故によりほぼ全域が避難指示区域に指定された自治体のうち、最も早く避難指示が解除された双葉郡楢葉町を事例に、基礎的自治体が直面している様々な行政課題について考察する。
第6回:東日本大震災と福島原発事故避難の実態(2)(渡部)
福島原発事故において避難指示区域外の自治体で避難を選択した住民(自主避難者)の状況と避難者に対する損害賠償の実態から、基礎自治体が直面している行政課題について理解を深める。
第7回:住民概念の考察(1)(渡部)
住民概念の法的位置づけや先行研究を概説したうえで、福島原発事故において特例的に認められた原発避難者特例法について考察する。
第8回:住民概念の考察(2)(渡部)
住民及び住民に深く関連する住所、選挙権、被選挙権等の判例研究を行い、住民の基礎概念について理解を深める。
第9回:地方自治制度における住民概念(渡部)
明治期以降の地方自治制度において住民概念がいかにして構築されてきたのかについて考察する。
第10回:住民登録制度の歴史的考察(渡部)
住民登録制度の歴史的経過を踏まえ、今後のあるべき住民登録制度について考察する。また、これまでの授業で取り上げた「住民」についての論点を踏まえ、ディスカッションにより全体のまとめを行う。
第11回:事故調査の制度と実務
(押立)
科学技術の発展はより安全・安心な社会を形成することになるが、そのためには事故調査結果の活用が必要である。一方、事故では、過失犯罪捜査という責任追及も行われ、事故調査と刑事手続きは分離できない要素も持ち合わせている。責任追及や社会的批判に萎縮するあまり事故調査への協力が抑制的になれば、安心な社会形成を阻むことに繋がりかねない。事故調査論では、オリエンテーション及び身近な事故事例VTRを紹介し、国の運輸安全委員会、消費者事故調査委員会の制度や、自治体が管理する学校、病院、各種施設に対する事故調査の概要を説明する。
第12回:事故調査制度の制度比較(刑事手続きとの関係性)
(押立)
行政機関の行う事故調査と、警察の過失犯罪捜査は、同時並行に行われる。証拠物件の扱い、相互協力の限界など、法的側面からの問題を取上げる。また、事故調査の各種制度を比較検討し、その目的や、制度相互調和を研究する。ディスカッションを通じて、制度研究における解決方策の導出、研究手法など多面的に、行政学研究、公共政策学研究からの視点で深度化する。
第13回:自治体における事故調査
(押立)
自治体における行政調査、事故調査についての対応を研究する。自治体職員が行う事故調査は今後増えると考えられ、事故調査への準備、立ち入り、連絡調整、報告書の取扱い、刑事手続きへの配慮など実務上の問題を取り上げる。特に憲法が規定する人権保障や適正刑事手続きの保障と、事故調査、行政調査との関係性を研究する。
第14回:事故調査制度と制度調和(事故調査をより効果的なものとする研究)
(押立)
講義、質疑を踏まえて、グループディスカッションを行う。事故調査論の講義のまとめとして、事故調査結果の活用による、科学では解決できない被害者感情や、責任追及の過失犯罪捜査という負の社会資産を認識する。共生社会の実現や、安心・安全社会形成に向け、将来に向けた事故調査制度と、刑事手続きのあり方を研究する。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
準備学習・復習時間は特に必要ないが、時間内は集中し、積極的に質問や意見提出を行い、ディスカッションに参加する。報告、ディスカッションを行う場合は、調査・取りまとめで2~4時間程度。
・各人が各回のテーマに関連する情報を集め問題意識を高めておくことが望ましい。
テキスト(教科書)Textbooks
特に指定しない。各回、レジュメや資料を配布する。
参考書References
(中嶌分)
神原勝・大矢野修編(2015)『総合計画の理論と実務』公人の友社
東京市政調査会編(2009)『地方自治史を掘る』東京市政調査会
松下圭一(1999)『自治体は変わるか』岩波新書
(渡部分)
戸田典樹編著(2016)『福島原発事故 漂流する自主避難者たち 実態調査からみた課題と社会的支援のあり方』 明石書店
今井照・自治体政策研究会・編著(2016)『福島インサイドストーリー 役場職員が見た原発避難と震災復興』 公人の友社
戸田典樹編著(2018)『福島原発事故 取り残される避難者 直面する生活問題の現状とこれからの支援課題』 明石書店
渡部朋宏著(2020)『住民論 統治の対象としての住民から自治の主体としての住民へ』 公人の友社
(押立分)
必要に応じて適宜紹介する。
成績評価の方法と基準Grading criteria
講義への出席、意見発表や議論の積極性(80%)
レポート提出または発表(20%)
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
学生の論文作成テーマとかかわることから履修する場合もそうでない場合も、講義テーマと学生の関心が重なり、様々な質問・意見から相互に学びあうことができる。講義中の質疑による理解の深まりに期待したい。
学生が準備すべき機器他Equipment student needs to prepare
特になし
その他の重要事項Others
・住民論の講師は現職の自治体職員であり、問題意識を明確にして授業に臨んでいただければ、実践的・実務的な情報を得て、議論を交わすことができる。
・事故調査論の講師は、事故調の事故調査官経験者、国の首席鉄道安全監査官及び交通安全対策室長の経験者である。実務者、制度研究者として、法的側面、実務的側面の両面から説明を行う。事故調査論は、制度の比較研究であるため、可能な限り、受講者の制度比較研究手法等についての問いにも応えていく。
・総合計画論の講師は、市民参加や総計審の委員などの経験者でもある。
・多様な講師による講義であることを活かし、可能な限り、受講者の学位論文の核となるリサーチクエスチョン等についての問いにも応えていく。
中嶌
<専門領域> 地方自治
<研究テーマ> 自治体総合計画、自治基本条例、市民参加
<主要研究業績>
「自治体総合計画の意義と課題」(2018,博士論文)
「望ましい自治体監査機能のあり方についての研究」『かながわ政策研究・大学連携ジャ-ナル』No.2(2011.11、共著)
「参加と協働をどう考えるか」東京都市町村職員研修所論集『翔』11号(2007)
「地域共同管理の組織と参加」『総合都市研究』36号(1989,共著)
渡部
<専門領域> 地方自治、公共政策、住民論
<研究テーマ> 住民概念、原発事故避難、原発事故損害賠償、基礎的自治体連携
<主要研究業績>
①「福島原発事故避難の実態と「住民」概念の転換-統治のための住民から住民による自治へ-」『自治体学』vol.31-1(2017.11) 自治体学会【自治体学研究奨励賞受賞】
②「震災復興の現状と課題」『地方自治職員研修』通巻708号(2018.3)
③「人口減少社会における「住民」概念の考察~福島原発事故避難自治体の実態から~」『自治実務セミナー』2018年12月号
④「「住民」概念の研究~統治される対象としての住民から自治の主体としての住民へ~」『公共政策志林』第7号(2019.3)
⑤『住民論-統治の対象としての住民から自治の主体としての住民へ』公人の友社(2020)
押立
<専門領域> 事故調査論、行政調査論、安全リスク論、適正刑事手続論
<研究テーマ>
事故調査制度、行政調査制度、リスク事故を報告する心理、安全社会システム、人権保障と適正刑事手続。
<主要研究業績>
①『事故調査制度に関する研究-刑事手続きとの関係からの考察-』(2019,博士論文)、②「鉄道信号の安全性・信頼性の歴史の変遷」(2017.日本信頼性学会)、③「刑事裁判の証拠として使用される事故調査報告書のあり方について」(2016.日本学術会議安全工学シンポジュウム予稿集)、④「事故調査への協力を萎縮させる刑事休職制度の改善考察」(2018.日本学術会議)、⑤「鉄道における保安システムの階層的構成と安全水準の構成方策について」(2020.日本学術会議)、⑥「鉄道事故の対応と関係者」(2017.信号工業協会誌)、⑦「鉄道安全対策とリスク分析-レジリエンス力の手がかりまで-」(2017.日本技術士会IT21講演会予稿集)