市ヶ谷リベラルアーツセンター（ILAC）ILAC Course

19世紀のパリでは、成熟を始めた資本主義のもとで、ヨーロッパ随一の大都市文化が花開こうとしていた。20世紀最高の思想家ヴァルター・ベンヤミンは、変貌するパリの根源的意味を問おうと、「パリ――十九世紀の首都」を書いた。この優れたエッセーを精読しながら、19世紀パリに展開したさまざまなイメージを復元し、芸術・思想の世界と技術・商品の世界がせめぎ合う、この変化の時代を思想史的に読み解いていく。

20世紀最高のテキストを読み、社会と思想とメディアの機能、および文化と歴史の関連について、「批判的」「批評的」な思考を培うこと。とりわけ、論理とイメージが交錯する「エッセーの思想」の精髄に触れられるよう、パワーポイントの資料を見ながら忍耐強くテキストと向き合うこと。

各学部のディプロマ・ポリシーのうち、以下に関連している。法学部・法律学科：DP3・DP4、法学部・政治学科：DP1、法学部・国際政治学科：DP1、文学部：DP1、経営学部：DP1、国際文化学部：DP3、人間環境学部：DP2、キャリアデザイン学部：DP1

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配布テキストの精読と、パワーポイントによる解説を中心に講義する。講義の詳細レジュメとパワーポイントの内容は、授業の前に「Hoppii（学習支援システム）」の「教材」に掲げる。各回の授業で出された「課題」のなかから優秀なもの、視点の面白いものを次回以降に発表する。受講学生の数が一定以下ならば、こうした双方向性をもつ授業を各回ごとに行うことができる。

なし / No

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※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

1：オリエンテーション／20世紀思想とユダヤ人

授業の進め方を提示しながら、あわせて概論として20世紀思想におけるユダヤ人問題を取り上げる

2：ベンヤミンのパリ

19世紀という変貌する時代における大都市パリの姿を提示し、加えてベンヤミンの伝記とその思想を概説する。

3：パリのパサージュ

パサージュのなかで絢爛たる消費文化が開花し、そこで芸術は商品に奉仕する（Ⅰ「フーリエあるいはパサージュ」①）。

4：鉄の構成

鉄とガラスを用いた建築がパサージュや駅、博覧会場として史上初めて登場する（Ⅰ「フーリエあるいはパサージュ」②）。

5：ユートピアのかたち

社会主義者フーリエはパサージュに触発され、具体的ユートピア像を構想する（Ⅰ「フーリエあるいはパサージュ」③）。

6：パノラマから写真へ

パノラマ画の大流行の後を受けて写真が発明され、芸術観を一変させる「（Ⅱ「ダゲールあるいはパノラマ」）。

7：商品という幻像

商品の幻像を展示する万国博覧会と、商品を描くグランヴィルのイメージ世界（Ⅲ「グランヴィルあるいは万国博覧会」）。

8：室内の痕跡

商品に抗うようにブルジョワジーの室内に蒐集品があふれ、そこから探偵小説が誕生する（Ⅳ「ルイ＝フィリップあるいは室内」）。

9：アレゴリカーの描くパリ①

遊歩者はパサージュを創作の場所に変える。詩人ボードレールもその一人だった（Ⅴ「ボードレールあるいはパリの街路」①）。

10：アレゴリカーの描くパリ②

ボードレールはアレゴリーを用いて、パリという都市を初めて作品化する（Ⅴ「ボードレールあるいはパリの街路」②）。

11：アレゴリカーの描くパリ③

新しさの永遠回帰が近代の本質となる。ボードレール『悪の華』の画期性（Ⅴ「ボードレールあるいはパリの街路」③）。

12：パリ大改造

県知事オスマンのパリ改造計画が都市の姿を一新し、資本主義の世界が貫徹する（Ⅵ「オスマンあるいはバリケード」①）。

13：オスマン対コミューン

広い街路にバリケードが造られ、パリ・コミューンの夢が一瞬だけ実現するが……（Ⅵ「オスマンあるいはバリケード」②）。

14：夢と覚醒の精神史／まとめ

芸術・思想の世界と技術・商品の世界がせめぎ合う変化の時代は、私たちに何を語りかけているか？

授業のレジュメを熟読し、各回の「課題」に答える。本授業の準備学習・復習時間は、各2時間を標準とする。

ヴァルター・ベンヤミン「パリ――十九世紀の首都」（浅井健二郎編訳『ベンヤミン・コレクション１』ちくま学芸文庫、1995年、所収）を主に使用する。

引用文献は多岐にわたるため、適宜、コピーを配布する。

成績評価は各回の授業の「課題」へのレスポンス（30点）および期末レポート試験（70点）で行う。講義内容の把握の度合いと思考力の深度、および文章表現の的確さについて判定する。

講読するテクストは短いものだが、多彩な内容が取り上げられているので、難易度は低くない。

なし。