市ヶ谷リベラルアーツセンター（ILAC）ILAC Course

社会批評の形成・流通・普及の過程を、日本における人文書の興亡とジャーナリズムの展開のなかで考える。敗戦後の1945年から1980年代まで、もっとも精彩を放ちながら戦後日本をリードした思想家と人文書、および出版人に焦点を合わせ、その思想が社会に与えたインパクトと意味を析出する。現役の出版人による戦後出版通史、人文学史。

いまや古典となりつつある基本的な戦後批評の文献を概観しながら、社会と思想とメディアの機能について「批評的」「根源的」に考える力を培う。また、批評の興亡を通時的に見極めることで、現代の思想状況に対しても主体的に、根拠を示しながら判断・評価することができるようにする。こうした読書と研究の実践によって、批評意識をもった社会人へと成長する。

各学部のディプロマ・ポリシーのうち、以下に関連している。法学部・法律学科：DP3・DP4、法学部・政治学科：DP1、法学部・国際政治学科：DP1、文学部：DP1、経営学部：DP1、国際文化学部：DP3、人間環境学部：DP2、キャリアデザイン学部：DP1

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配布テキストの精読と、パワーポイントによる解説を中心に講義する。講義の詳細レジュメとパワーポイントの内容は、授業の前に「Hoppii（学習支援システム）」の「教材」に掲げる。各回の授業で出された「課題」のなかから優秀なもの、視点の面白いものを次回以降に発表する。受講学生の数が一定以下ならば、こうした双方向性をもつ授業を各回ごとに行うことができる。

なし / No

なし / No

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

1：オリエンテーション／人文学の再定義

授業の進め方を提示しながら、人文書を読むことの意義を再確認する。

2：社会科学から人文学へ

社会科学と人文学は本質的にどこが違っているのか？　戦後思想を考察するための基礎的な定義を試みる。

3：8月15日からの出発――丸山眞男①

『世界』の創刊（1946年）と丸山眞男「超国家主義の論理と心理」を中心に、戦後ジャーナリズムの始まりを見る。

4：8月15日からの出発――丸山眞男②

「超国家主義の論理と心理」を精読し、「抑圧移譲」など丸山政治学の基礎的発想の意味を再検討する。

5：マルクス、リベラル、保守

講和条約から60年安保闘争へと至る時代に現れて戦後思想の基盤を形作った、「左・右」さまざまな思潮を概観する。

6：60年安保とマスコミ知識人――清水幾太郎①

戦後最大の大衆運動、60年安保闘争の渦中に進出したマスコミ知識人たちの活動を、清水幾太郎らによる啓蒙に探る。

7：60年安保闘争とマスコミ知識人――清水幾太郎②

清水幾太郎『現代思想』（1966年）を参照しながら、清水の「転向」と60年安保以降の思想の転換点を探る。

8：戦後の終焉と日本民俗の再発見――柳田國男

戦後の終焉と高度経済成長の開始とともに見直された日本の民俗文化を、柳田國男『遠野物語』を中心に解説する。

9：在野思想家の顚覆戦略――吉本隆明

東京オリンピックを経た高度経済成長時代を挟み、既成知識人を圧倒した在野思想家吉本隆明の戦略を探る。

10：文化人類学と新しい知――山口昌男

歴史主義的思考に異を唱えた山口昌男の「中心と周縁」論と、構造人類学がもたらした新しい知の誕生の成否を探る。

11：言語学から構造主義へ――翻訳書の時代

レヴィ＝ストロースの人類学と、それに影響を与えたソシュール『一般言語学講義』における構造主義の衝撃を読む。

12：伝統からの応答①国文学――西郷信綱

伝統的な人文学はいかに革新を果たしたのか？　国文学者西郷信綱の著作をもとに、古典を読むことの意味を再発見する。

13：伝統からの応答②歴史学――網野善彦

伝統的な人文学はいかに革新を果たしたのか？　日本史学者網野善彦の著作のなかに、新しい人文学誕生の可能性を見る。

14：まとめ

13回分の講義を総復習して、春学期のまとめとする。

授業のレジュメを熟読し、各回の「課題」に答える。本授業の準備学習・復習時間は、各2時間を標準とする。

取り扱う思想家および文献が多岐にわたるため、テキスト（教科書）は指定しない。必要なものは適宜抜粋してコピーを配布する。

丸山眞男『丸山眞男セレクション』（平凡社ライブラリー）、清水幾太郎『現代思想』（岩波書店）、柳田國男『遠野物語』（ちくま文庫）、吉本隆明『共同幻想論』（角川ソフィア文庫）、山口昌男『山口昌男コレクション』（ちくま学芸文庫）、ソシュール／小林英夫訳『一般言語学講義』（岩波書店）、西郷信綱『古事記の世界』（岩波新書）、網野善彦『増補 無縁・公界・楽』（平凡社ライブラリー）など。

成績評価は各回の授業の「課題」へのレスポンス（30点）および期末レポート試験（70点）で行う。講義内容の把握の度合いと思考力の深度、および文章表現の的確さについて判定する。

戦後すぐ（70年以上前）の文章を読むことから始めるので、最初の数回は文体に慣れるのに少し苦労するかもしれない。