市ヶ谷リベラルアーツセンター（ILAC）ILAC Course

普段何気なく読んでいる小説が、きわめて政治的で社会的なものであるということを考えたことがあるでしょうか。文学作品は、人畜無害な単なるフィクションではありません。ときに世の中の差別や偏見を生み出し助長するものであり、特定の個人や集団を傷つけるものでもあります。あるいはまた、社会秩序を乱すとして批判される過激な暴力や性表現も無視できないでしょう。もちろんその一方で、社会の差別や偏見と戦ってきた歴史も、文学にはあります。文学作品における、こういった政治的かつ社会的な側面を、本講義では取り上げます。素材は性表現と差別表現がメインです。
メディア環境が激変している昨今の事情に対応させて、取り上げる表現は文学のみならず、映画やマンガなど多岐にわたる予定です。現在進行形の話題も積極的に扱います。

これまでなんとなくイメージしてきた表現の自由や表現の暴力性といった概念を、法規制や表現史を通して具体的に捉えられる教養の獲得を到達目標とします。文学に関心がある学生のみならず、法律等社会の制度設計に関心のある学生も歓迎します。

各学部のディプロマ・ポリシーのうち、以下に関連している。法学部・法律学科：DP3・DP4、法学部・政治学科：DP1、法学部・国際政治学科：DP1、文学部：DP1、経営学部：DP1、国際文化学部：DP2、人間環境学部：DP2、キャリアデザイン学部：DP1

日本語 / Japanese

毎週配信するオンデマンドのラジオ講義と資料配布によって進めていきます。
課題の提出は、学習支援システム（HOPPII）の「課題」から行います（詳細は最初の講義で解説します）。

なし / No

なし / No

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：ガイダンス

講義の概要説明および導入。

第2回：文学が置かれた社会状況

表現規制の最近の動向を解説。

第3回：性表現・暴力表現と規制①

性・暴力表現とその規制の歴史を振り返る。

第4回：性表現・暴力表現と規制②

「わいせつ罪」を中心に、現代社会における性・暴力表現を考える。

第5回：性表現・暴力表現と規制③

「青少年保護」を中心に、現代社会における性・暴力表現を考える。

第6回：性表現・暴力表現と規制④

「児童ポルノ」を中心に、現代社会における性・暴力表現を考える。

第7回：性表現・暴力表現と規制⑤

ネット社会における性・暴力表現について解説する。

第8回：差別表現と規制①

差別表現とその規制の概要を解説する。

第9回：差別表現と規制②

差別の仕組みを知るために、具体的な作品を参照する。

第10回：差別表現と規制③

戦後の日本における差別の歴史を振り返る。

第11回：差別表現と規制④

差別には複数のパターンがあるので、それらを分節化して解説する。

第12回：差別表現と規制⑤

差別表現とその規制の現在。特にネット社会における差別表現（Metoo運動など）を考える。

第13回：差別表現と規制⑥

最近話題になる嫌韓・嫌中的な「ヘイトスピーチ」について考察する。

第14回：まとめ

これまでの講義の総括。表現の自由とその規制の社会的バランスを考える。
また、補足として、著作権やプライバシーの問題から表現の社会性をにも言及したい。

まず何より活字や映像作品に触れてください。そして、表現規制の話題は常時ニュースになるので、そのつど気にかけて、新聞やウェブでの議論に触れてほしい。たとえば、昨今話題になっている性表現なり差別表現に対する規制強化の動き、あるいはネット上で盛んに行われている著作物の無断コピーや二次創作等について考えてみるのもよいでしょう。
ここ数年は、美術家の性的な表現物がわいせつ罪に問われたり、また差別的なヘイトスピーチがメディアで盛んに取り扱われています。文学作品にとらわれず、こういった表現にかかわる社会的問題に注目してください。
本授業の準備学習・復習時間は、各2時間を標準とします。

随時プリントを配布します。

なし。

最後に提出してもらうレポートが評価の主要な対象となります。各回ごとの課題（400字程度）も評価したい。評価の割合は最後のレポートが70％、課題を30％とします。

基本的に口述と板書が多いので、「授業の概要を示すプリントがあればよい」という意見がありました。重要なポイントとなるところではプリントで示すことも考慮に入れようと思います。
映像を積極的に導入し、時事的な話題も取り入れました。