人文科学研究科Graduate School of Humanities
LITA500B7国際日本学特殊講義LⅠLecture: International Japanese Studies L I
倉本 さおり
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | 人文科学研究科Graduate School of Humanities |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2021 |
授業コードClass code | X1183 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 春学期授業/Spring |
曜日・時限Day/Period | 水2/Wed.2 |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 市ヶ谷 |
教室名称Classroom name | |
配当年次Grade | |
単位数Credit(s) | 2 |
備考(履修条件等)Notes | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
カテゴリーCategory | 国際日本学インスティテュート(博士後期課程) |
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Outline (in English)
Modern pop culture spreads through multiple media such as the Internet, social media, television, magazines and games, and has various influences on social norms and our self-formation. In this class, you will critically appreciate and discuss pop culture content such as manga, animation, light novels, movies, TV dramas, 2.5dimentional musicals, and idols. By identifying and analyzing problems from various angles, you will learn perspectives and methods for actively grasping dynamic reality and social situations without stopping thinking.
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
現代のポップカルチャーはインターネットやSNSをはじめ、テレビ、雑誌、ゲームといった複数の媒体を通じて連動するように浸透し、社会的規範やわたしたちの自己形成にさまざまな影響を与えています。この授業ではマンガやアニメ、ライトノベル、映画、ドラマ、2.5次元舞台、アイドルなどのポップカルチャーを中心に、具体的な作品やコンテンツを取りあげ批評的に鑑賞するスタイルを採用します。さまざまな角度から積極的に楽しみつつ、ときに批判を交えた分析を行うことで、思考停止に陥らず、流動的な現実や個々の社会そのものの在り方を主体的に捉えるための視点や方法を学んでいきます。
到達目標Goal
・授業中に学んだ視座を応用して自ら問題を発見し、多様なメディアで形作られる情報を用いて、多角的にポップカルチャーについて考えることができるようになる
・先行研究を体系的に理解した上で批判的に評価し、論点を整理しながら独創的な研究課題を見出すことができるようになる
・異文化間の差異や共通性を踏まえながら、研究上の問題を発見することができるようになる
・先行研究を踏まえ、一次資料を発掘して検証しながら、客観的な説得力をそなえた論文を書いたり、口頭発表したりすることができるようになる
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
履修生の人数と各自の希望を考慮したうえで、対面授業とオンライン授業を併用した講義を行う予定です。
講義では画像や映像サンプルをふんだんに用いながら表象分析の具体的な方法をいくつか紹介し、歴史的・文化的な背景を踏まえて現代日本のポップカルチャーをめぐる諸問題について学んでいきます。
授業中の質問やコメント、取り上げたいトピックの提案、フィールドワークの希望も歓迎。履修者の意見を取り入れつつ選んだコンテンツを実際に鑑賞し、ディスカッションを行い、論点を整理していくことで、プレゼン能力も同時に養っていきます。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
あり / Yes
授業計画Schedule
春学期
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
第1回:オリエンテーション
授業の進め方について説明したのち、各自「サブカル歴」をまじえつつ自己紹介をしてもらいます。これまで自分がどんな文化の中で育ってきたのか、どんなジャンルやコンテンツに興味があるのか改めて意識することで、サブカルチャーないしポップカルチャーというものの存在がどのような手続きを経て人びとの自己形成に関わっていくのか主体的に確認していきます。
第2回:メディアとポップカルチャーの現況
『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』といった最新のメガコンテンツをイントロダクションに、「サブカルチャー」と呼ばれてきたものの変遷、そして複数のメディアと連動して成長していく現代ポップカルチャーの特徴について概説します。
第3回:ポップカルチャーの諸相①
2013年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した雲田はるこ『昭和元禄落語心中』を教材に、マンガ・アニメ化作品それぞれで描かれる落語シーンの演出の違いに着目しつつ、各ジャンルの表現形態の特徴についてディスカッションしながら立体的に検分していきます。
第4回:ポップカルチャーの諸相②
『昭和元禄落語心中』に登場する落語が落語家によって実際に上演されている様子を「語り」ないし「語り手」という枠組みに注目しながら鑑賞します。その後、前回の授業を踏まえ、「枠組み」や「場」の形成というものが大衆文化の中で果たす意味について考えます。
第5回:物語、キャラクター、世界観①
東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生―動物化するポストモダン2』(2008年)を読み、「データベース」理論の内実について考え、日本のゼロ年代において大衆文化のキャラクターや世界観、物語がどのように捉えられていたのかについて考えます。
第6回:物語、キャラクター、世界観②
データベース理論について考え、現代の文芸批評の理論から捉え直します。ジュリア・クリステヴァのインターテクスチュアリティのほか、フーコー、デリダ以降の批評理論から考えたときに、どう位置づけられるのかを批判的かつ建設的に考えていきます。
第7回:ミニレポート発表会
これまでの授業を踏まえ、自分が興味のあるコンテンツから研究対象としてひとつ選び、簡単なレポート発表を行ってもらいます。その後クラス内でディスカッションを重ねることで期末レポートに各自フィードバックします。
第8回:テクストとコンテクスト①
日本のアニメ映画『天気の子』(新海誠監督)と韓国の映画『パラサイト』(ポン・ジュノ監督)における〈水〉ないし〈豪雨〉の表象の差異に着目し、同じ言葉やモチーフが異なる文脈に置かれることでまったく別の表象を伴ってたちのぼる事例について検討します。
第9回:テクストとコンテクスト②
『天気の子』『パラサイト』を実際に鑑賞した上で、前回の授業を踏まえてディスカッションを行い、社会背景とポップカルチャーにおける表象の相関について考察を深めていきます。
第10回:解釈とアダプテーション①
田辺聖子の短篇小説「ジョゼと虎と魚たち」(1985年)を読んだうえで、犬童一心監督の実写映画『ジョゼと虎と魚たち』(2003年)を鑑賞し、原作となったテクストがどのような解釈を経て映像化作品へと翻案されたのか分析していきます。
第11回:解釈とアダプテーション②
前回の授業を踏まえ、タムラコータロー監督のアニメ―ション映画『ジョゼと虎と魚たち』(2020年)を鑑賞し、どのようなプロセスを経て翻案に至ったのか、時代背景や社会環境の変化も併せてディスカッションしながら考察していきます。
第12回:メディア文化と再帰性①
読者アンケートが連載作品の掲載順や内容にまで影響を及ぼす可能性のある「週刊少年ジャンプ」というメディアの特徴を取り上げ、メディアとコンテンツとコミュニティの流動的な関係性に焦点を当てていきます。
第13回:メディア文化と再帰性②
「異世界転生もの」や「悪役令嬢もの」等、前回の授業テーマに基づき選んだ小説投稿サイト出身の作品(いわゆる「なろう系」小説)を分析してディスカッションし、メディアがコンテンツを配信するだけでなく、コミュニティを形成することによってコンテンツを特徴づけていく状況について考えます。
第14回:まとめとレポート指導
期末レポートや研究発表に向け、授業中に提示された視点と論点を整理しつつ、各自の研究テーマを設定、互いにアドバイスします。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
授業内で扱うコンテンツは各テーマに文献調査や作品鑑賞をはじめ、ポップカルチャーをめぐるニュース、話題になっているコンテンツで気になったものは積極的にメモしておき、授業内での議論に役立ててください。
本授業の準備学習・復習時間は各2時間を標準とします。
テキスト(教科書)Textbooks
必要に応じて資料を配布します。
参考書References
※無理にそろえる必要はありません
・橋本陽介『ナラトロジー入門――プロップからジュネットまでの物語論』(水声社)
・東浩紀『動物化するポストモダン――オタクから見た日本社会』(講談社現代新書)
・倉橋耕平『歴史修正主義とサブカルチャー 90年代保守言説のメディア文化』(青弓社)
・堀あきこ、守如子=編『BLの教科書』(有斐閣)
・永田大輔、松永伸太朗 =編『アニメの社会学―アニメファンとアニメ制作者たちの文化産業論』(ナカニシヤ出版)
・山田奨治『マンガ・アニメで論文・レポートを書く――「好き」を学問にする方法』(ミネルヴァ書房)
他、授業ごとに参考書や参考作品を提示します。
成績評価の方法と基準Grading criteria
授業への参加態度30%、授業内で執筆・提出する課題30%、期末レポート40%
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
本年度新規科目につきアンケートを実施していません。
学生が準備すべき機器他Equipment student needs to prepare
パソコンやタブレット等、オンライン授業に対応した機器(※難しい場合は応相談)
担当教員の専門分野等
国内外の小説やマンガを中心に、雑誌や新聞、ラジオ等で書評やポップカルチャー批評を担当。共同通信文芸時評「デザインする文学」、文藝「はばたけ! くらもと偏愛編集室」、週刊新潮「ベストセラー街道をゆく!」連載中。他、小説トリッパー、小説すばる、ダ・ヴィンチなど。『文學界』新人小説月評(2018)、毎日新聞文芸時評「私のおすすめ」(2019)。TBSラジオ「文化系トークラジオLife」サブパーソナリティ。