文学部Faculty of Letters

　主に植民地時代から19世紀末までのアメリカ合衆国の歴史と文化を概観し、現代のアメリカ合衆国社会に見られるさまざまの社会規範の淵源を探ります。宗教やジェンダーの問題も出てくるでしょう。しかし、2020年以来アメリカ社会を揺るがし、世界の耳目を集めてきたBLM(Black Lives Matter)の運動の背景を理解することにこの学期の授業は多くの時間を費やします。人種をめぐる緊張が世界大に広まっていることを意識し、アメリカ合衆国の歴史と世界の他国の歴史を比較の視野に収めながら、多元社会を生きる意味を学びます。

　学生はこの授業を受講することで、北米英領植民地が開かれて以来、出自を異にする多民族がアメリカ合衆国という国民国家に包摂されるまでの歴史を学びます。その際、時間の長さから見れば他国に比べ比較的短い歴史しか持たない合衆国が、建国以来わずか100年間余りで世界髄一の工業生産力を誇る大国に成長し、民主主義の光と影を併せ持つ政治体制を築き上げるにいたった経緯をたどります。一方で、誰をも平等に扱うという抽象的な国是のもと、伝統や因習を削ぎ落され、「アメリカ国民」への変容を余儀なくされた人々の苦しみも学びます。映画や絵画などの図像史料に触れながら、ヴィジュアルなアメリカ理解を培うことが学生には期待されます。また、課題図書の読書レポートを準備する過程で、論文を記すための文章の構成や言葉遣いを学びます。

ディプロマポリシーのうち、「DP1」「DP4」に関連

日本語 / Japanese

　講義形式で授業は行います。学生とのインターアクティブな会話を重視し、各授業内に質疑の時間を必ず設けます。提出してもらった読書レポートにはコメントを付けて返却します。

あり / Yes

なし / No

秋学期

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：導入：アメリカ合衆国の近代史を学ぶ意義

歴史と記憶

第2回：ピューリタニズムの神話：多元社会の始まり

メイフラワー号誓約（1620）

第3回：政教分離：寛容と非寛容

合衆国憲法修正第一条（1791）

第4回：国際関係の中の独立宣言：独立と相互承認

アメリカ合衆国独立宣言（1776）

第5回：アメリカ女性運動の黎明：ジェンダーと政治

「所感の宣言」（1848）

第6回：ピューリタニズムの遺産：超えるべき歴史の伝統

ナサニエル・ホーソン著『緋文字』（1850）

第7回：西欧近代世界における奴隷

映画『アーミスタッド』（1997）

第8回：アメリカ合衆国の成立と黒人奴隷制度

トマス・ジェファソン著『ヴァージニア覚え書』（1785）

第9回：奴隷制度即時撤廃運動と環大西洋世界

フレデリック・ダグラス著『自伝』（1835）

第10回：たった一人の反乱

ヘンリー・D・ソロー『市民の反抗』（1849）

第11回：南北戦争のその記憶：事実と史実

アブラハム・リンカン「ゲチスバーグ演説」（1863）

第12回：アメリカン・ランドスケイプの成立

ハドソン・リヴァー派からカントリー派へ

第13回：“少年”の良心とその葛藤

マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』（1890）

第14回：連邦再建とジム・クロウ：周縁化される人種問題

映画『国民の創生』（1915）

　授業での議論の要となる短い史料を毎週事前に配布するので、必ず読んでくること。英文も混じります。講義ノートを読み返し、問題点、不明点があれば、翌週の授業で質問をすること。映画は授業では抜粋しか見られないので、可能な限り全編を鑑賞する時間を設けること。

ナサニエル・ホーソン著/八木敏雄訳『緋文字』（岩波文庫、1992）
ヘンリー・D・ソロー著/飯田実訳『市民の反抗』（岩波文庫、1997）
マーク・トウェイン著/西田実訳『ハックリベリー・フィンの冒険　上・下』（岩波文庫、1977）

和田光弘『大学で学ぶアメリカ史』（ミネルヴァ書房、2014）

・学期末論述テストー60％
・学期中に提出する読書レポートー30％
・白地図提出ー10％

本年度新規科目につきアンケートを実施していません

授業時に随時、指示を出します。

　アメリカ合衆国に関する事前の知識は何も必要ありません。オフィスアワーは設けませんが、質問は随時受け付けます。授業時間外に質問をしたい学生は必ずメールで事前の予約をすること。