スポーツ健康学研究科Graduate School of Sports and Health Studies
OTR600I1(その他 / Others 600)スポーツ健康学演習ⅠSeminar in Sports and Health Studies Ⅰ
木下 訓光Norimitsu KINOSHITA
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | スポーツ健康学研究科Graduate School of Sports and Health Studies |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2021 |
授業コードClass code | S9015 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 春学期授業/Spring |
曜日・時限Day/Period | 集中・その他/intensive・other courses |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 多摩 |
教室名称Classroom name | |
配当年次Grade | 1 |
単位数Credit(s) | 2 |
備考(履修条件等)Notes | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
カテゴリー | 研究指導 |
すべて開くShow all
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Outline (in English)
A student has to study how to design a scientific research in accordance with:
1) finding a specific clinical question
2) reviewing relevant researches in scientific literatures
3) to formulate an initial research question
4) to distillate the research question
5) forming a research hypothesis
6) to finalize the aim of the research
7) to determine methods to realize the aim
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
以下の手続きに沿って研究のデザインと倫理的・科学的妥当性について学ぶ。
① Clinical questionの発見
② 関連先行研究の総括
③ Research questionの設定
④ Research questionのdistillation
⑤ 仮説立論
⑥ 研究目的の決定
⑦ 研究方法の設定
到達目標Goal
① 科学的に妥当な研究を論理的にデザインして計画することができる。
② 研究論文導入部(「背景」や「緒言」に相当する)の草稿を完成させる。
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
学部ゼミに毎週出席をする。
ゼミの冒頭で【授業の概要と目的(何を学ぶか)】に沿って進捗をゼミ生および教員に報告し、都度指導を受ける。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
あり / Yes
授業計画Schedule
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
1:Clinical questionの発見
Clinical questionを決めて報告・議論し、指導を受ける。個人の好奇心を満たすだけのようなもの、学位取得のためだけに設定されるようなものになっていないか検証。
2:関連先行研究の総括(1)
Clinical questionに沿った先行研究論文の選定・報告し議論する。主としてPubmedとCiNiiを用いて先行研究を確認する。ただしスポーツ関連の研究については、国内論文のみでは、研究の十分な科学的根拠・妥当性を担保することは不可能であるため、国内論文のみを選定することは認めない。初期段階においては50編程度の論文を選ぶこと。またその8割は英語論文であることを必須とする。すべてについてabstractに目を通すこと。言うまでもない事であるが、「教科書」の類、インターネット上の記事などは「先行研究」とはみなさない。一般書(文庫、新書などの類)は論文とみなしえないのでこれも含んではならない。また初学者が陥る過ちの代表として、学会抄録を「先行研究」として挙げることがあるが、これは誤った姿勢であり、これを認めない。
3:関連先行研究の総括(2)
先行研究論文を読破しながら、自らのClinical questionが想定する研究のdelimitationを明確にし、これに沿った形で初期段階で選定した先行研究論文の取捨選択を行う。Impact factor, Cite score, predatory journalの実態などに習熟し、Scopusを活用する。この時点で特に優れた先行研究論文を複数選択し、精読・研究すること。科学的妥当性の低い先行研究は排除できるようにする。実際の修士論文で参考文献のリストに挙げる研究論文はすべて読破することが当然の義務であることを理解して準備すること(読みもしないで参照することは研究倫理にもとる行為である)。
4:関連先行研究の総括(3)
選定した先行研究論文における問題点を抽出・報告して議論し指導を受ける。この時点では、先行研究のmethodology、特にデータ解析方法、統計解析について検証し、誤った分析方法を用いている、あるいは不適切な統計解析を行っているような科学的妥当性の低い論文を批判的に分析する。このような方法論的問題を含有する先行研究論文は意外に多く、journalの査読者や編集者の力量不足にかかわると思われる。したがってなぜそのような論文が出版されているかについて考察することは、自らの論文を査読者目線で検証し、厳正な査読を想定してなお評価されうるものに仕上げていく上で必要な訓練であると心得て学習する。
5:関連先行研究の総括(4)
総括した先行研究における問題点を抽出・報告して議論し指導を受ける。前回同様、特に先行研究のデータ解析方法、統計解析について検証し、誤った分析方法を用いている、不適切な統計解析を行っているような科学的妥当性の低い論文を発見する。このような論文は多いが、誤った統計解析や解析結果の適切な解釈が出来ない場合は、完成した修士論文自体が客観性や妥当性を欠くという致命的結果につながる。前回はこのような論文が出版される背景について学ぶことを主眼としたが、今回は実際に各論文における仮説に対応したdelimitation、母集団、サンプル、仮説検定方法の妥当性、null hypothesisの適切な設定、結果の解釈の適不適を理解できるようにする。
6:Research questionの設定
これまでの先行研究の「研究・総括」によって初期のclinical questionは十分distilationされたはずである。その上でより高度でdelimitationが明確であり、simpleかつ具体的なResearch questionを設定するための議論を行う。
7:Research questionのdistillation
Research questionの倫理的・科学的妥当性検証と最適化(questionの探求によって得られる成果が一般化可能なものか否か)を行い、最終的に決定する。端的に言えば「その研究を行って一体何の役に立つのか」という質問に明確に回答できなければならない。行う意義を見出すことが難しい研究は例え学位取得のためであってもこれを認めない。
8:仮説立論
仮説をたてるための議論を行い、適切で強力な仮説を設定する。すでに十分かつ批判的な先行研究の総括が出来ており、洗練されたresearch questionが出来上がっていれば、仮説の立論には苦労しないものであるが、多くの院生は、仮説を支えるための医学、生理学、生化学、解剖学、さらには物理学、化学などの理解が不十分であることが多いため、時に中学・高校水準の学習に立ち返って学ぶことも必要である。この時点で仮説の十分な科学的根拠について明確に説明できるよう基礎についても学ぶ。
9:研究目的の決定
仮説検証に沿って適切な研究目的を設定する。倫理的・科学的妥当性について検証する。
10:研究方法の設定
仮説検証に必要な方法を適切に設定する。往々にして院生は先行研究の方法を「真似る」だけであるが、これは極めて問題のある姿勢である。すでに先行研究のmethodologyについて批判的総括を済ませているわけであるから、それを踏まえて自らの研究のreseach question およびdelimitationに沿った適切な方法を設定しなければならない。さらには方法の倫理的・科学的妥当性についても検証する。
11:研究論文導入部の論述(1)
研究論文導入部について議論、指導を受ける。少なくともこれまでの作業を通じて、研究目的と仮説に至るまでを理路整然と説明できるようになっているはずである。したがってこの回では草稿作成の前に導入部をプレゼンテーションし、指導教員よりその科学的妥当性と根拠について口頭試問を受ける。さらにこれをパラグラフライティングの手法に則って明確に叙述できるように学ぶ。
12:研究論文導入部の論述(2)
前回の指導を踏まえて研究論文導入部の草稿執筆を提出して議論、指導を受ける。十分なパラグラフライティングが出来ているかを確認する。なお日本語を母語としているにもかかわらず、しばしば適切な論理的表現をするために必要な日本語力が十分でないこともある。母語を日本語とせず、論理的な日本語の文章を執筆する上でhandicapがある場合は、学内におけるサポートシステムなどをフルに活用すること。また日本語以外の執筆では、英語を用いることを認めるが、十分な英語力をもって学術的記載ができることがその条件である。
13:研究論文導入部の論述(3)
研究論文導入部の草稿執筆を継続し進捗分を提出して議論、指導を受ける。この回では草稿の論理性、客観性、科学的妥当性について口頭試問を行う。第8回で指摘したような科学的基礎の不十分な文章になっていないか、徹底的に検証を行う。
14:研究論文導入部の論述(4)
研究論文導入部の草稿を完成させ完成稿を提出し指導を受ける。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
データベースを用いて先行研究の探索、文献精読、報告のための資料作り。
テキスト(教科書)Textbooks
特になし。
指導教員からの直接の学びこそが最善・最良の「教科書」と心得て、指導を得る機会を自ら失することの無いよう研鑽すること。
参考書References
必要な資料があれば都度指定する。
成績評価の方法と基準Grading criteria
① Clinical questionを発見できたか(10%)
② 関連先行研究を適切にかつ網羅的に総括できたか(10%)
③ 適切なResearch questionを設定できたか(10%)
④ 適切な仮説を設定できたか(10%)
⑤ 適切な研究目的を決定できたか(10%)
⑥ 適切な研究方法を設定できたか(10%)
⑦ 研究目的および研究方法は倫理的・科学的妥当性があるか(10%)
⑧ 研究論文導入部の草稿を完成させることができたか(10%)
⑨ 指導教員・ゼミ生を前に毎回適切に進捗を報告できたか(10%)
⑩ 指導教員・ゼミ生を前に毎回適切に議論できたか(10%)
【授業計画】における各回の準備、進捗の遅延が重畳する場合は厳格に評価し、場合によっては大きな減点対象とする(最終評価を2段階下げる。例:最終評価がA-ならBになる、最終評価がCならDになるなど)。
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
特に改善を検討すべき意見なし。
学生が準備すべき機器他Equipment student needs to prepare
① リモート授業になる可能性があるため、高速インターネット回線に接続できる環境
② ビデオ会議システムを円滑に行うためのコンピューター(スマートフォンは不可)
③ 統計解析を行うためのソフトウェアを利用できる環境確保(SPSSまたはSAS)
その他の重要事項Others
準備、進捗は厳格に予定通り行うこと。
研究活動の実現を最優先にして計画をたて、進捗させること。
【実務の経験】臨床経験および医学研究歴を有する医師(日本スポーツ協会認定スポーツドクター、日本医師会健康認定スポーツ医)が指導を行う。
【どのように実務経験が授業に反映されるか】上記経験に基づき、本研究科で行われる「人を対象とする医学系研究」の最適な指導ができる。
授業の展開によって、若干の変更があり得る。