人文科学研究科Graduate School of Humanities
PHL500B7(哲学 / Philosophy 500)西欧の思想ⅡWestern Thought II
伊藤 克己
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | 人文科学研究科Graduate School of Humanities |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2021 |
授業コードClass code | X1112 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 春学期集中 |
曜日・時限Day/Period | 集中・その他/intensive・other courses |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 市ヶ谷 |
教室名称Classroom name | |
配当年次Grade | |
単位数Credit(s) | 2 |
備考(履修条件等)Notes | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
カテゴリーCategory | 国際日本学インスティテュート(修士課程)-関連科目 |
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Outline (in English)
Theme: On Prote Ousia(first reality) in Aristotle
Among the Ousia(reality) that occupy an extremely important position in the Aristotelian philosophy, the “Prote Ousia(first reality)”,which is limited to “first”, is the core of that philosophy. However, the example of “Category”, which uses this term most frequently in terms of quantity, is not representative of all examples. Nevertheless, mainly for historical reasons, this so-called “individual” example has been regarded as a representative view. In this intensive lecture, the main texts of the relevant parts of “Category”, “Metaphysics”Ζ, and “Metaphysics”Λ, are comprehensively examined and considered, and search for the true meaning which Aristotle put them in “Prote Ousia”. And by exploring these issues, we aim to learn one way of philosophical thinking.
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
テーマ:
アリストテレースにおけるプローテー・ウーシアー(第一の実有)について
アリストテレース哲学において、極めて重要な位置を占めるウーシアー(実有)のうちでも、取り分けて「第一の」と限定される「プローテー・ウーシアー(第一の実有)」はその哲学の核心にあります。ところが分量的に最も頻繁にこの用語を使用している、『カテーゴリアイ(カテゴリー論)』の用例は,すべての用例を代表するものとはなっていません。にもかかわらず,主に歴史的な経緯から,このいわゆる「個体」を示す用例が,代表的見解とされてきました。本集中講義では,『カテーゴリアイ』,『形而上学』Ζ巻,『形而上学』Λ巻,の当該箇所の主要テキストを,総合的に検討して考察し,アリストテレースが「プローテー・ウーシアー」に込めた真意を探求することを通して,哲学的思考のひとつのありかたについて学ぶことを目的といたします。
到達目標Goal
集中講義で講義する毎回のテーマごとに,そのテーマについて考え,小レポートを作成することを積み重ねることによって,難解とされているアリストテレースの哲学の探求を通して,履修生諸君の哲学的思索力を鍛錬し,強化することを到達目標といたします。
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
対面授業の講義形式でおこないます。テーマごとに課題の小レポートを提出していただき,フィードバックさせていただきます。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
なし / No
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
春学期集中
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
第1回:講義全体の構成について。本講義にかかわる古代ギリシア語のキーワードについて
本集中講義全体の構成について。アリストテレースにおける用語法の問題について。古代ギリシア語の「ウーシアー」の訳語が,従来,「実体」と訳されてきた経緯についてと,その訳語を「実有」と訳すことについての解説。古代ギリシア語の「ピロソピアー」が、日本語の訳語として「哲学」として定着してきた経緯について。古代ギリシア語の「カテーゴリアー」と,現代日本語に代表される,「カテゴリー」ということばとの関係について。
第2回:『カテーゴリアイ』のテクストの性格と列挙された「カテーゴリアー」について
『カテーゴリアイ』のテクストとしての独自の性格の考察。『カテーゴリアイ』以外の諸著作における文脈で複数の「カテーゴリアー」の「枚挙」が行われている箇所を取り上げ,それらの箇所と『カテーゴリアイ』第4章における「枚挙」に関する叙述を,特に「個体」(『カテーゴリアイ』における「第一の実有」)と「種」(『カテーゴリアイ』における「第二の実有」)の区別がなされているかどうか,に着目しつつの比較検討。
第3回:アリストテレースにおける「存在の類」と「あるもの」についての分類について
アリストテレースにおけるいわゆる「存在の類」とのかかわりに着目。『カテーゴリアイ』第2章における「あるもの」の四分類と,「あるもの」の分類に関連した言及のある他著作の場合との比較検討。特に「個体」が「あるもの」の分類項目として重視されているかどうかに着目しながらの考察。
第4回:「第一の実有」,「第二の実有」の区別と「実有」の分類について
「実有」を「個体」と「種」・「類」に区別し分類する,という視点と, 各著作における「実有」の様々な分類との比較検討。『カテーゴリアイ』第5章におけるような「個体」と「種」・「類」の区別が,他の箇所で「実有」を分類する際にも見出せるかどうか,という点についての考察。
第5回:「個体」としての「第一の実有」について
『カテーゴリアイ』における「第一の実有」の特徴と内実についての検討。古来,様々な形で議論されてきた,「個体」としての「第一の実有」の「個体性」にかかわる諸問題についての論及。『カテーゴリアイ』における「個体」としての「第一の実有」についてのまとめ
第6回:「エイドス」という用語の諸解釈について。『形而上学』Ζ巻,Η巻における「エイドス」の用例について
『形而上学』Ζ巻における「エイドス」としての「第一の実有」の探求の開始。「エイドス」に関する諸解釈を含めて,「エイドス」という,「種」にも「形相」にもおさまりきらない豊かな内容を持つ用語がどのような幅で解釈しうるのか,ということの検討。『形而上学』Ζ巻,Η巻の構造の分析をおこない,挿入箇所と考えられる部分とそうでない部分を区別した上で,そこで使用されている「エイドス」の用例についての検討。
第7回:「第一の実有」としての「エイドス」の言及箇所 について。「たましい」としての「第一の実有」について
「エイドス」の特徴を抽出して考察の基準の確保。「第一の実有」としての「エイドス」の言及箇所の検討。帰結としての具体例としての「たましい」の提示と,「たましい」としての「第一の実有」の内実の探求。
第8回:「エイドス」としての「第一の実有」の意義について
挿入箇所や参照箇所も含めた,「エイドス」をめぐる諸問題の考察。『形而上学』Ζ巻 における「第一の実有」とされる,「エイドス」の内実と意義との解明のまとめ。
第9回:「第一の哲学」の探究対象としての「第一の実有」について
『形而上学』Λ巻を中心とした,「第一の哲学」の探究対象としての「第一の実有」という側面の,テクストに即しての確認。アリストテレースにおける「第一の哲学」の重要性と,「第二の哲学」とのかかわりについての考察。
第10回:「離されうる,動かされえない」「第一の実有」について
「第一の実有」の具体例として示唆された「離されうる,動かされえない「実有」」の内実について最も明確に叙述している文脈としての,『形而上学』Λ巻の第6章と第7章の一群の諸実例についての検討。
第11回:「ヌース」としての「第一の実有」について
『形而上学』Λ巻の課題としての,「実有」の探求。「実有」の中でも最高の「実有」としての「第一の実有」の提示。その際の「第一の実有」とは 「ヌース」であり,「第一の動かされえずに動かすもの」であることの確認。アリストテレースの哲学における「ヌース」の重要性の指摘。
第12回:「動かされえない始源」としての「第一の実有」の意義について
『形而上学』Λ巻は,単に最初期の孤立した思考を示すのではなく,或る意味では『形而上学』全体の精髄を示しているという点の指摘。「第一の哲学」を見据えて,全領域的に「実有」を問題とした際の「第一の実有」が, 「ヌース」としての「実働態」である「動かされえない始源」と密接にかかわっている,という点の確認。
第13回:「第一の実有」の諸実例の相互関連について
本集中講義の第1回から第12回までの考察を踏まえた上で,『カテーゴリアイ』における「個体」とその具体例としての「その或る人」,『形而上学』Ζ巻における「エイドス」とその具体例としての「たましい」, 『形而上学』Λ巻における「離されうる,動かされえない「実有」」とその具体例としての「ヌース」,等の「第一の実有」の諸例の相互関係に関する総合的考察。
第14回:まとめ・「プローテー・ウーシアー(第一の実有)」の意義について
アリストテレースにおける「プローテー・ウーシアー(第一の実有)」という表現が,『カテーゴリアイ』をも含む,それぞれの主題に応じていわばテーマに応じて互いに相補い,役割分担をしながら柔軟に叙述されていることが十分に認められるとともに,「第一の哲学」を見据えて,『形而上学』Ζ巻においては,「感覚的な実有」の根拠としての「内にあるエイドス」「たましい」を提示し,その内実を語り,そして『形而上学』Λ巻においては,全領域的に「実有」を問題とした際の,本来の「第一の実有」が, 「第一の動かされえずに動かすもの」「ヌース」である,と主張し,その内実を論じている,という帰結の提示。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
集中講義当日の講義終了後に,その日の講義のそれぞれのテーマについて考えたことについての各テーマごとの小レポート(400字以内)を作成し,原則としてその次の集中講義の機会の際に提出すること。
テキスト(教科書)Textbooks
担当者の博士論文を基礎とした集中講義のため、必要に応じて授業にて資料をお配りいたしますので,テキスト(教科書)は使用しません。
参考書References
担当者の博士論文を基礎とした集中講義のため、必要に応じて授業にて資料をお配りいたしますので,参考書は使用しません。
成績評価の方法と基準Grading criteria
集中講義の毎回のテーマに対応した小レポートを,全部で10回以上は提出していただきますので,それらを合計して100%として評価いたします。
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
本年度新規集中講義につき,アンケートを実施しておりません。
担当教員の専門分野等
<専門領域><研究テーマ><主要研究業績>
<専門分野>
西洋古代哲学
<研究テーマ>
アリストテレースのプローテー・ウーシアー(第一の実有)論
<主要研究業績>
・「『形而上学』Z巻における「第一の実有」としての「エイドス」の解釈について」,2006年8月. 『西洋古典研究会論集』第15号,pp.33-77.
・「「たましい」が「離されうる」ことについて —アリストテレースにおける第一の哲学と第二の哲学—」, 2019年3月, 『ギリシャ哲学セミナー論集』ⅩⅥ,pp.49-61.
・「プローテー・ウーシアー アリストテレースにおける「第一の実有」について」,2020年2月,博士論文,立正大学大学院.