法学部Faculty of Law

　本講義では，犯罪をコントロールする方法を研究する刑事学のうち，犯罪の現状，すなわち，犯罪の原因や発生状況を分析することを目的とする。このような犯罪学は，刑法学における犯罪の成立要件の解釈や刑事政策学における犯罪予防の方策の研究に対して，基礎となる犯罪の現状認識を提供し，合理的かつ有効な研究を可能とするものである。
　

　前半の授業により，我が国における犯罪の現状について，データを基礎に（但し，データの限界を踏まえて），その現状を理解することができる。
　後半の授業により，なぜ犯罪が生じるのかについて，生物学，心理学，社会学等を利用した分析手法を学び，それに基づく仮説を検証することができる。
　両者を総合して，犯罪対策，刑事政策のベースとなる正確なデータと理論的な仮説を調査し，自ら批判的に分析することができる。

ディプロマポリシーのうち、「DP3」に強く関連。「DP2」に関連。

日本語 / Japanese

　講義形式で行う。状況によってはハイフレックス制になる可能性もあるが、少なくとも4月については動画配信により講義を行う。詳細は初回の講義動画で伝える。
　授業支援システムにアップするレジュメに沿って行うが，犯罪白書のデータを適宜参照しながら行うので，授業中に参照できるようにすること。
　なお、適宜オンラインでの質疑応答の機会を設けるとともに、中間レポートに対しては講評の機会を設ける予定である。

なし / No

なし / No

※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。

第1回：ガイダンス

授業の進め方，教材等の説明，犯罪学の意義。

第2回：犯罪統計の読み方

犯罪統計の種類と意義，分析の注意点など，犯罪統計の基本用語。

第3回：我が国の犯罪の全体像

我が国の治安に対するイメージ，認知件数・検挙件数の推移。

第4回：犯罪者の処遇に関する近年の動向

刑事手続きの各段階における処遇の現状。

第5回：個別の犯罪の検討(1)

殺人の件数の推移，被害者との関係，処遇の動向，強盗の件数の推移，手口，処遇の動向。

第6回：個別の犯罪の検討(2)

窃盗及び覚せい剤事犯，女性犯罪，高齢者犯罪。

第7回：個別の犯罪の検討(3)

再犯者による犯罪の推移。

第8回：個別の犯罪の検討(4)

少年の犯罪・非行に対する手続の概観，少年犯罪・非行の件数の推移。

第9回：犯罪の分析の刑事政策へのつながり

犯罪のイメージと実態，犯罪者処遇への示唆，刑事手続・処遇以前の対応の重要性。

第10回：犯罪原因論の歴史の概観

古典派犯罪学，犯罪生物学，犯罪心理学，犯罪社会学。

第11回：犯罪原因論の分析手法(1)

古典派犯罪学の意義，初期の犯罪生物学の評価，新しい犯罪生物学。

第12回：犯罪原因論の分析手法(2)

深層心理と犯罪，性格と犯罪，知能と犯罪，近時の心理学的アプローチ。

第13回：犯罪原因論の分析手法(3)

初期の社会学的アプローチ，社会過程アプローチ，緊張理論，葛藤理論。

第14回：犯罪原因への新しいアプローチ

ラベリング論，コントロール理論，環境犯罪学，ニュークリミノロジー。

　復習を中心に行う。具体的には，レジュメや教科書等の内容について，犯罪白書等のデータを基に自ら検証したり，参考文献を自分で読んでみたりすることで，理解を確認することを毎週1時間程度行うことを目安とする。これに加えて，期末対策を兼ねて，各テーマの関連性を理解するため，期末前に15時間程度全体の復習を行うことが有益であろう。
　また，犯罪等に関する報道等に注意し，授業やデータに照らして考えてみることも望ましい。

法務省『令和2年版　犯罪白書』（冊子版の他，法務省のホームページ（http://www.moj.go.jp/housouken/houso_hakusho2.html）でも閲覧可能）。

　やや古いが犯罪学全体についての定評ある教科書として，
瀬川晃『犯罪学』（1998，成文堂）。
　犯罪統計の分析に関する詳細かつわかりやすい解説として，
浜井浩一編著『犯罪統計入門』（第2版，2013，日本評論社），
同編著『刑事司法統計入門』（2010，日本評論社）。

中間レポート及び期末レポート（40%、60%）。

本年度授業担当者変更によりフィードバックできません。

講義動画を視聴するため、PC等の機器が必要となる。