理工学研究科Graduate School of Science and Engineering
BLS500Y2(生物科学 / Biological science 500)生体超分子構造学特論Supramolecular Structures
村上 聡Satoshi MURAKAMI
授業コードなどClass code etc
学部・研究科Faculty/Graduate school | 理工学研究科Graduate School of Science and Engineering |
添付ファイル名Attached documents | |
年度Year | 2023 |
授業コードClass code | YD009 |
旧授業コードPrevious Class code | |
旧科目名Previous Class title | |
開講時期Term | 春学期集中/Intensive(Spring) |
曜日・時限Day/Period | 集中・その他/intensive・other courses |
科目種別Class Type | |
キャンパスCampus | 小金井 |
教室名称Classroom name | 各学部・研究科等の時間割等で確認 |
配当年次Grade | |
単位数Credit(s) | 2 |
備考(履修条件等)Notes | |
実務経験のある教員による授業科目Class taught by instructors with practical experience | |
カテゴリーCategory | 生命機能学専攻 |
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Outline (in English)
Life is considered to be an integration of chemical reactions carried out by biological supramolecules, like proteins, nucleic acids and their complexes. In order to understand life essentially, it is quite important to analyze and comprehend the molecular functions of these biological supramolecules based on their structure at an atomic level. It is indispensable to master the ability to describe and consider how these biological reactions can be taken place inside these biological supramolecules. This course introduces the method of structural analysis of biological supramolecules and their structure and function relationship of them.At the end of the course, students are expected to be able to understand how structural information was analyzed, how to evaluate and utilize this information for applied studies like drug development. Before/after each class meeting, students will be expected to spend four hours to understand the course content. The final grade will be calculated according to the following process Tern-end essay (50%) and in-class contribution (including practical course (4th, 5th, 8th, 9th, 13th, 14th classes )) (50%).
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の概要と目的(何を学ぶか)Outline and objectives
生命とは無数の生体超分子が織りなす化学反応の総体である、と考えるならば、それを本質的に理解するためには反応の現場である生体超分子の立体構造を原子レベルで解析し、反応機構を物理や化学のコトバで記述し、考察する能力の習得が不可欠である。本講義では、生体超分子の構造解析の手法についてやさしく概説するとともに、生体超分子の立体構造、及びそれが可能にする生体機能との合理的な連関について触れ、生体超分子の立体構造情報の、求め方、見方、吟味の仕方、使い方などを理解し習得する。
到達目標Goal
生命科学の研究において必要となるセンスのひとつは、全ての生命現象は物理法則に従う化学的な現象であるという考え方を持つことである。それにより、現象の本質的な理解や、制御などの応用展開が望める。生命現象の反応の場である生体超分子について、どのような手法で構造を観察することが出来、構造情報から何が解り、どのように研究の役立つのか?という構造生物学的なセンスの涵養がこの授業の到達目的である。勿論、受講者達を構造学者にすることが到達目標ではない。受講者自らが、それぞれの研究分野に於いて、適宜構造生物学的なセンスを発揮することができるようになれるようにするのがこの授業の究極的な目標である。それは、構造解析の基本を知り、構造論文を正しく読み、構造データベースを駆使し、構造情報を適切に利用することが出来る能力の習得をとおして達成される。
この授業を履修することで学部等のディプロマポリシーに示されたどの能力を習得することができるか(該当授業科目と学位授与方針に明示された学習成果との関連)Which item of the diploma policy will be obtained by taking this class?
ディプロマポリシーのうち、「DP1」「DP2」「DP3」に関連
授業で使用する言語Default language used in class
日本語 / Japanese
授業の進め方と方法Method(s)(学期の途中で変更になる場合には、別途提示します。 /If the Method(s) is changed, we will announce the details of any changes. )
この授業は、生物物理化学の分野と分類されるだろう。それはパッとイメージするならば、数式が多出する「シンドイ」「ムズカシイ」「ダルイ」授業とイメージされるかもしれない。しかし、本講では、数式をほとんど使う事なく、感覚的にこの構造生物学の物理化学的な部分を習得させるよう工夫している。分子模型を使った生体超分子の構造構築原理の理解や、結晶の代わりに回折格子を使い、X線の代わりに、可視光を使う光学回折実験を行うことで逆空間の概念や、フーリエ変換の理解など、実際に手を動かしてもらいながら理解してもらう。本講義は、理論的なことをただ座学で学ぶだけでなく、実習的な企画も多く取り入れることで感覚的に、「頭と手のシナジー」でより深く学んでもらう。
新型コロナウイルス感染症の拡大状況次第では2020年のように今年度も完全オンライン形式となる可能性もあるが、実習・演習編については、教育効果の観点からなるべく対面形式で行いたいと考えている。なお、その際は大教室で密を避けたかたちでの実施を予定している。
アクティブラーニング(グループディスカッション、ディベート等)の実施Active learning in class (Group discussion, Debate.etc.)
あり / Yes
フィールドワーク(学外での実習等)の実施Fieldwork in class
なし / No
授業計画Schedule
授業形態/methods of teaching:対面/face to face
※各回の授業形態は予定です。教員の指示に従ってください。
1[対面/face to face]:蛋白質の機能を知るうえでなぜ立体構造を観ることが重要?:構造生物学への興味付け(酵素反応編)
・酵素反応の構造学的理解
・プロテアーゼ、ヌクレアーゼの立体構造から分かった反応メカニズムと基質認識メカニズムの理解
2[対面/face to face]:蛋白質の機能を知るうえでなぜ立体構造を観ることが重要?:構造生物学への興味付け(結合解離編)
・酵素以外の蛋白質の作動原理の構造学的理解
・DNA結合蛋白質、トランスポーター、構造蛋白(ケラチンなど)の立体構造から分かった作動メカニズムの理解
3[対面/face to face]:蛋白質構造の構造構築原理の理解
・構造の階層性(一次構造・二次構造・モチーフ・三次構造・四次構造)と立体構造の成り立ちの理解
・蛋白質の構造構築原理の裏にある相互作用の物理化学的理解
・カリウムチャネルの構造から分かったイオン透過メカニズムの理解
4[対面/face to face]:実習・演習編・ペプチド結合
・分子モデルを使って、ペプチド結合、αヘリックス、βシートを作り、生体超分子の構造構築原理やペプチドの立体化学について習得
5[対面/face to face]:実習・演習編・水素結合と二次構造、三次構造
・作られたαヘリックス、βシートを組み合わせて、大きな蛋白質分子を作る(二次構造~三次構造)
・それによる1,2,3 限目の知識のフィクセーション
6[対面/face to face]:構造解析の技法
・X線結晶構造解析、NMR、クライオ電子顕微鏡観察
・その長所と短所
7[対面/face to face]:構造解析法の最右翼であるX 線結晶構造解析の概念
・大量発現系の構築と、蛋白質精製、結晶化の手法
・X線の発生と回折の原理
・強度測定と位相問題
・フーリエ変換と電子密度図所得、モデル構築とその精密化
8[対面/face to face]:実習・演習編:FFTによるフーリエ変換(数式を使わないフーリエ変換)
・FFT 計算によるフーリエ変換と逆フーリエ変換を概念的に理解
・散乱光をフーリエ変換って何?を理解
・散乱も回折も構造を調べるうえでは大して変わらない事を理解
9[対面/face to face]:実習・演習編:光学回折による逆空間の理解とフーリエ変換
・光学回折による格子と逆格子の観察:なぜX線結晶構造解析には結晶が必要なのか?原理を感覚的に理解
・逆空間とは?について感覚的に習得
・光学レンズを用いたフーリエ変換:レンズによる結像を通して、X線結晶構造解析と光学顕微鏡による観察との類似性を理解
・それによる6,7,8 限目の知識のフィクセーション
10[対面/face to face]:構造情報の読み方:構造解析をやる人にならずとも、構造をきちんと見られる人になる
・構造論文を読むときに出てくる統計値の理解を通した論文の信憑性の判断
・PDB データの中身の理解
11[対面/face to face]:構造情報の使い方(研究編):自分の研究テーマを構造学的に考える力、構造学的知見を使える力をつける
・構造情報に基づく研究展開法(構造、あるとき/ないとき)
・他の物理化学的、分子生物学的手法との組み合わせによる詳細な構造機能解析と分子動力学計算は何がしたいのかを理解
12[対面/face to face]:構造情報の使い方(応用編):構造情報を役立てることができる力をつける
・構造を利用した合理的薬剤設計
・構造など物理化学に基づく生物科学の研究法について
13[対面/face to face]:実習・演習編:構造情報のデータベース利用
・PC用グラフィクスプログラムを利用した蛋白質3次元モデルの表示と観察
・電子密度図の表示と、構造情報の吟味
・それによる10,11,12 限目の知識のフィクセーション
また、最新の構造予測についても触れる
14[対面/face to face]:実習・演習編:構造情報のデータベース利用:ゼミ編
・構造学的な見地で自らの研究を考えてみる
・受講生それぞれの研究テーマについてデータベースを使った構造情報の検索について会得する。
・受講生それぞれの研究テーマと構造生物学的な展開の可能性について、ディスカッションする。
・抗議全体を通して得た自らの学びについて再確認する。
授業時間外の学習(準備学習・復習・宿題等)Work to be done outside of class (preparation, etc.)
【本授業の準備・復習時間は、各4時間を標準とします。】生化学、蛋白質科学の基礎、とりわけアミノ酸や核酸などの基礎について確認することが望ましい。
テキスト(教科書)Textbooks
特に設定していない。
参考書References
興味を持った人がさらに学ぶ為に以下を薦める。
・ノーベル賞の生命科学入門・構造生物学の発展(講談社)
・入門構造生物学(共立出版)
成績評価の方法と基準Grading criteria
試験は行わない。実習・演習編での達成(50%)と、レポート提出(50%)により評価する。
学生の意見等からの気づきChanges following student comments
専攻開闢以来永く授業を担当し毎年改良を重ねてきた。レポートによる学生からの感想や、授業評価アンケートを見るとほぼポジティブな意見であり、これまでの授業方法が間違ってはいない事が判った。とりわけ、座学による理論の概説と、それに続く実習・演習編とのシナジーによる知識のフィクセーションは特に評判が良い。しかし、これらに甘んじることなく、アップトゥーデイトな内容を盛り込むなどの努力を毎年行っている。これまで分からなかったことが分かった!これまで興味なかったけど面白いんだということが分かった!という声多数。
学生が準備すべき機器他Equipment student needs to prepare
講義の後半(13回目、14回目)では、インターネット経由でのデータベース(Protein Data Bank)サーチや、蛋白構造表示ソフト(Pymol) を用いた実習を行うため、各自のノーPC、マウス(左右クリック+ホイールが望ましい)を持参すること(講義の最初に指示する)。
その他の重要事項Others
質問はmurakami@bio.titech.ac.jp(東工大・村上聡)まで。
ハンドアウトなど
配布しません。兎に角、前を見て話を聞き流して欲しい。
板書など
動画やアニメーションを多く盛り込んだPCでのプレゼンテーションで授業を行う。気になったところは「写メ」「スクショ」全然OK